みにくい死の神
むか〜しむかし、君たちの知らない世界のお話し。
ここは、死神達の住む世界。
生と死の間の世界。
ここに、
まだまだ、半人前の死神達がいるよ。
うーぶ『えーん』
死朗『あー、また泣いちゃった!』
死〜助『ほんと、すぐ泣くんだもんな!』
死三郎『今日も、ビリッケツ!一つもとれやしない!』
うーぶ『えーん、いじめないでよ。』
死朗『いいか!おれたち死神はな、みんな生き物の命がとれるんだ!魂100個集めたら、立派な、大鎌もらえるんだ!けど、こいつは、いつも、命をとってこない変わりもんだから、近づくなっ。今日は、おれは馬の命を、とってきた!』
死〜助『おいらは、うさぎ!』
死三郎『おれっち、カエル!』
三人『おまえはー?』
うーぶ『子犬を、』
三人『子犬を???』
うーぶ『子犬の怪我を治したよ。』
三人『ひっ!!汚らわしい汚らわしい!!醜い醜い!!立ち去れ、立ち去れー!わーい!!!』
と、うーぶと言う死神、毎日毎日、いつまでたっても、命を奪えません。それどころか、命を救っている、へんてこ死神なのです。
うーぶ『あー、いつになったら命をとってこれるのだろう』
と、うーぶは、いつものように、生き物達のいる世界へやってきました。
そこでは、人間や、様々な生き物達がおり、それぞれに決まった長さの命のロウソクがあり、命のロウソクが短く消えそうな生き物には、死神がとりついてロウソクの火を消すのでした。
うーぶ『あー、どんどんみんなに先をこされちゃう。』
と、その時、目の前にボロボロの服を着た、薄汚れ、やせ細り弱々しく今にも倒れそうな、女の子が立って、じっとこちらを見ているではありませんか。
うーぶ『あれ?こっち見てる?』
死神は普段は、人間や他の生き物達には見えませんが、死が近づくと、見えてしまうようになるのです。
女の子は、間違いなく、うーぶを見ているのでした。
うーぶ『しめた!ぼくの事が見えると言うことは、死が近いという事!!命をとるチャンスだ!』
と、女の子に取り憑こうと手を伸ばした時、
女の子『残念でしたー!』
うーぶ『えっ!?』
女の子『キミはわたしの命をとれない』
うーぶ『なんで、なんでーーー!?』
女の子『まだ気づいてないのね』
うーぶ『ぼくは、死神だぞ!命をとっちゃうぞ、怖いんだぞ!』
と、女の子の肩に触れました。
すると、女の子は、不思議な光に包まれ、みるみるうちに、ふっくら艷やかに綺麗になり、いつの間にか着ていた服までも綺麗になっており!いきいきとした姿に戻りました。
女の子『わーい!ありがとう!!』
うーぶ『まただ、またやってしまった。ぼくが、触れると、みーんな、怪我も病気も治り、草も木も花だって、たちまちにみんな元気に、なってしまう。やっぱりぼくは、汚らわしくて、醜いんだ。』
女の子『ふふふ、あっ!あそこに枯れたお花がある。』
と、言って、女の子は、花にそっと触れました。
すると、どうでしょう!不思議な光に包まれた花は、みるみるうちに色を取り戻し、綺麗な一輪の花に戻りました。
うーぶ『わっ!ぼくと一緒だ!!』
女の子『あなたは、気付いてないだけ、まだ、何者にもなっていないだけ、ここはあなたのいるほんとの場所ではないの。』
うーぶ『ぼくは、立派な死神になって大きな鎌をもらって、沢山の命をとる。』
女の子『いいえ、あなたは、沢山の命を守るの』
と言うと、女の子の体が光り輝き出しました。
うーぶ『やめろ、眩しい、やめろ』
女の子『さあ、おいで、あなたが、ほんとのあなたに戻る時がきたのよ。』
と、女の子は両手を広げ優しく包むように、うーぶを抱きしめました。
うーぶ『や、やめろ、眩しい!ぼくは、死神、ぼ、ぼく、ぼくは、ぼ、、、わ、わた、、わたし、わたしは、』
そっと、女の子は、うーぶから離れました。
女の子『やっと戻った。』
なんと、いつものどんより暗いうーぶのからだが、キラキラ眩しく光り輝いております!
うーぶ『なんでー、なんでーーー!?わたし、わたし?なんか変、全てが変よ!』
女の子『大丈夫、あなたは、ほんとのあなたに戻っただけ。』
うーぶ『なんなの!?あなたは、いったい何者なの?』
女の子『あら、言ってなかったかしら?ごめん!わたしは、命の神。そして、あなたは、産神(うぶがみ)!』
うーぶ『産神、、、。』
すると、全ての記憶がもどったように、うーぶの体がまた光り輝きました。
うーぶ『あ、わたし、そうだ。命を守るんだ』
命の神『そう!わたしが産んだ命達を、あなたが守るのよ。さあ、命の世界へお帰り。』
うーぶ『はい!』
そう言うと、命の神と、うーぶは、天高く高くへ、飛んで行きました。
そして、
『おぎゃー、おぎゃー』
おやおや、今日もどこかで、新しい命が産まれましたよ。
なんて、可愛い可愛い赤ちゃんだこと!
近くで、そっと、うーぶも、にっこりと見守っておりましたとさ。
お〜しまい。