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「はじめての出版②〜そして著者になる」

自分の本を出版する。

それはつい最近まで、現実感の無い夢でした。

大学の頃からずっと文章で何かを表現する活動をしてきたわけですが、
本を出すなんてことは限られた人間に許される行為だと思っていました。

そもそも本を出すということは「誰かが誰かにその人の本を出版する価値を見出してもらって」初めて話が始まるわけです。そんな人がいるとも思えませんでした。

ちなみに、自分がもし出すなら小説だと思っていました。
しかし、それは文学の新人賞をとらなければデビューできないもの。
いくつか書き溜めてありますが、日の目を見ることもなさそう。
時代が変わり、ネットやSNS経由で既存の文学賞を経由しないヒット作も
生まれるようになりましたが、その輪の中に入る予定もありませんでした。

そんな僕に運命の出会いが訪れたのは2018年の年末のこと。
ある一人の編集者との出会いでした。

僕がつくった制作者同士がシームレスにつながる異業種交流会「つくる人の会」に、光文社の雑誌デスクの方がいました。
その方に「本を出すって素敵ですよね〜」と何とはない雑談をしたところ、
「もしよければ、新書部門の人間と会ってみませんか?」と勧めてくれたのです。

ある冬の日、
僕は光文社のある護国寺の定食屋にいました。
そこには柔和で優しそうな編集者が待っていました。

当初、僕は全く違った本の企画を考えていました。
用意しておいたファイルを取り出し、簡単に趣旨を説明したのですが、
彼はふんふんと頷きながらあっさり秒速でそれを却下したのです。

あまりの即断即決に苦笑いして企画書のファイルをしまおうとした私に、
その編集者はこう告げたのです。

「勝浦さんと出したい本があるのですが」

どうやら僕の経歴や過去の仕事を既にその編集者は読み込んでくれていたようです。いわば僕は事前に「編集」されていたわけです。

「あの、僕、コピーライターが書く『コピーの書き方』みたいな本を読みたいと思った事ないんです。自分が読みたいと思わないものを書く事ができるでしょうか?」

と、その編集者は私の顔を見てこう言いました。

「いえ、コピーライターがコピーライターになりたい人のための本を書くのではありません。コピーライターが、言葉にできなくて悩んだり、迷ったりしているごく普通の人のための本を書くのです。私は勝浦さんが書いたその本を読んでみたい。一緒につくりませんか?」

抱き合うばかりの勢いで、書き手と編集者の気持ちが重なった瞬間でした。

かくして、その気にさせられた僕は出版への道を歩き出すことになりました。それが、どれだけ苦難に満ちているかも知らず…。

普段やっている広告のプロジェクトであれば、企画書や成果物をパッと見ただけで、

○プロジェクト完遂までの準備期間
○必要なマンパワー、チーム編成
○予算

などがだいたいわかりますが、
「原稿を執筆する」という行為自体は、
基本著者が孤独にすすめるプロジェクトです。

一冊のビジネス書は目安として10万字の原稿が求められるそうですが、
それを書くのにどれくらいの時間と労力が必要なの?
事実関係の調査は?事象のエビデンスは?関係各所への許可どりは?
引用ってどこまでしていいの…?そもそも僕の日本語は正しいの?

などなど、初めてのこと、知らないことを一つづつ自分が理解できる形で進めていくのは、頂上の見えない山を登っているようで、何度も茫洋とした気持ちになり、中断を繰り返してしまいました。

発売日も決まり、これから色々とPR情報のようなものも出て行きますが、
「よく、書き終える事が出来たな」
と、今ですら思います。

明日からは、本を書くという旅の行程で、
どんなことに悩み、どんな希望を見出したのかを記していこうと思います。

<つづく>

「つながるための言葉〜伝わらないは当たり前」1月19日発売
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勝浦雅彦
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