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「はじめての出版⑥〜文字文字しても意味ないね」

このコラムの読者は「本が好きだ!」と胸を張って言える方が多いのではないでしょうか。

ところで、そんな本好きの皆さんがいつも読んでいる書物がいったいどれくらいの「総文字数」なのかご存知でしょうか?

おそらくほとんどの方が「そんな事を意識した事がない」のでは。
だって、

「俺、最近10万字の小説読んでさー」
「え?タクヤが読んでるその本、7万字なの?少なくなーい?」

なんて会話をした事がある人は殆どいないでしょう。
僕もユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」のような分厚い本を前にひるんだり、絲山秋子や沼田真佑の芥川賞受賞作品の単行本を読んで
「あ、意外と字数少ないな、芥川賞って新人の短編が対象だもんなー」
などと感じた事はあれど、総文字数については全く気にした事がありませんでした。

前回の出版コラム⑤で書いたように「小さい締め切りをつくっていく」ことを学習したことで、スケジューリングの不安も落ち着き、牛歩ではありますが執筆が進むようになりました。が、またもや、

「そういや、俺、何文字くらいの本を書けばいいんだっけ?」

という疑問にぶつかりました。担当編集者に聞く前にまず自分で調べてみると、

新書→12〜15万字程度

文庫、単行本→10〜12万字程度

研究書→15万字〜

というのが、一般的な目安のようでした。(諸説あり)

皆さんのお手持ちの本の1Pあたりの字数を調べ、
あとはページ数を掛ければ、自分が読んでいる本の大体の総文字数がわかります。

僕の本は、『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で有名な「光文社新書」を抱える光文社さんから出版されますが、
「新書」ではなく「単行本」として世に出ます。

ん?新書と単行本は何が違うの?
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
新書は学術的、研究書的な意味合いが強いもので、世に著者の意見を表明するもの。
単行本は著者のキャラクターがより濃く出て広く一般に問題提起と再現性のある解決を行うもの。
…と僕は理解しています。

なので話をいただいた当初から、
今から書くものは新書にはならないだろうな、
と考えていました。

売れ方も差異があり、
新書は「光文社新書」「岩波新書」といったシリーズのブランドに対して
ある一定数のファンがいて息の長い販売となりますが、
単行本は「著者が買われる」ので初速である程度部数がいかないと、わりと早く書棚から退場するのだそうです。

そんなわけで「単行本」を想定して書き始めた僕は、インテリ(風)担当編集者に、

「あの…ところで、総文字数をどれくらいで想定して書けばいいでしょうか?」

と尋ねると、

「あまり総文字数は意識しなくて構いません。目安としては10万字あれば十分ですが、それ以上増やすよりは減らしていくことになると思います。原稿お待ちしております」

との返事でした。

今回の発刊する書籍は12の章から成っており、仮に各章1万字で書いたとしたら12万文字になります。400字詰め原稿用紙で300枚。一気に書いたらキツい、というか書けないかもしれませんが、1章が原稿用紙25枚で出来ており、それを12回書けば出来上がる、と思えば出来るかも?と思う方もいるのではないでしょうか(実際はまあ、いろいろ大変なのですが)。

ただ、序章や終章のようなエピローグ、プロローグの章はボリュームが少なくなりますし、具体的中身のナンバーが付いている各章も文字数にはかなりバラツキが出ました。

これはある意味当たり前で、
全部の章が同じくらいの文字数で平坦に論じられるより、オーケストラの楽章のように、それぞれ強弱があった方が文字のコード進行としても感情移入しやすくなるからです。

さて、結局、総文字数は何文字になったのか?

それはぜひ実際の書籍で確かめてくださると幸甚でございます笑。
でも総文字数の事なんて気にならなくなるくらい楽しんだり、熟読していただいたり、心に引っかかりを感じていただいた方が嬉しいです。

どれだけ文字文字文字…の分厚い本でも、読み終えて心に残るのはほんの数行だったりしますしね。

<つづく>

「つながるための言葉〜伝わらないは当たり前」1月19日発売
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勝浦雅彦
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