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幸せを感じるのに大切な存在感・貢献感

僕はアメリカの製薬会社で働く日本人研究者です。昨年、10年間働いたカリフォルニアにある巨大製薬会社から、ボストンにあるとても小さなスタートアップカンパニーへ転職しました。カナダ人女性のボスがいて、その下に僕の部署と中国人女性の率いる部署の2つがあります。このカナダ人女性も中国人女性も昨年会社に入りました。なので全てが新しい部署です。彼女たちも、僕と同様、巨大製薬会社からこの小さなスタートアップカンパニーへ転職してきました。僕たちの転職理由は、とてもよく似てました。「これまでも楽しく働いてきたが、もっと自分の働きがダイナミックに実感できる仕事に挑戦したい。まったく新しい環境で次のチャレンジをしてみたい」というようなものでした。

面白いもので、小さな会社で部署を立ち上げたら、ある巨大製薬会社からの共同研究の話が来て、コラボレーションプロジェクトを立ち上げることになりました。僕たちの会社で開発したがんの新薬開発に使えるプラットフォームを利用して、相手の巨大企業の資金力・リソース力を生かしてプロジェクトを進めていこうというものです。さっそく立ち上げのミーティングを行うことになりました。最初は10名以下の小さなグループでのミーティングを想定していました。こちらからの参加は、ボスのカナダ人女性とその配下の部署の代表として中国人女性と僕の3人のみです。当初は相手側もそれに対応する部署の代表数名のみが出る予定でした。しかし、ミーティングの準備のやり取りをする中、あれよあれよという間に相手側の参加人数が膨れ上がり、最終的には相手側の参加者は総勢20名以上になっていました。少々驚きましたが、僕たち3人も大企業から転職してきたのでその経緯はなんとなく理解できました。

ミーティングの目的は、新たながん治療薬の開発に応用できるプラットフォームの特徴を中国人女性と僕がそれぞれの専門分野から説明し、カナダ人のボスがそれを補足しながら、相手先に理解してもらい、質問事項に回答するというものです。会議はお昼から夕方4時まで4時間も取ってありましたが、僕たちのプレゼンテーションは1時間足らずで終わる想定のものだったので、「こんなに長い時間を設定する必要があるかなぁ?」と内心思っていました。ところが、蓋を開けてみると、総勢20名以上の参加者からの質問攻めに会い、時間を延長して4時間以上に及ぶミーティングになりました。僕はランチを食べる時間もなく、腹ペコになりながら、説明を続け、さまざまな質問に回答する羽目になりました。

ミーティング後、僕たちはヘトヘトになっていましたが、同時に一体感、達成感も感じ、清々しい気持ちでした。カナダ人のボスが言いました。
「以前の会社ではミーティングに出ても、大勢の参加者の中のひとりに過ぎず、何時間も自分の時間を使いながら、自分がここにいる意味があるんだろうか?と考えてた。ここに来た理由はまさにこれよね!」
確かに、4時間以上、話し続け、さまざまな質問に回答し続け、とても疲れたけど、否が応でも自分が会議に貢献していることは確信できました。


個性を重んじるアメリカでさえ巨大組織では存在感・貢献感を感じにくくなる

面白いなと感じたのは、以前の巨大企業でもかなり上位の職位にいたカナダ人女性のボスでさえ、巨大企業の中では存在感・貢献感を十分に感じられず、それを求めて今の会社に転職したことでした。自分がここに存在している、そして貢献していると実感することが、楽しくやりがいを持って働くために、いかに大切なことかを改めて感じました。個性を重んじて働き方の環境を整えているはずのアメリカ企業でさえ、巨大企業の中に入ると自分の個性が埋没し、存在感・貢献感を失いかけるのです。

幸せを感じるのに大切な存在感・貢献感

このことは、職場だけでなく、学校、家庭、その他人が関わり合うすべての社会活動で言えることだと思います。それぞれの人の個性・特性が尊重され、それぞれの人が自分の存在感・貢献感をしっかり持って、はじめて安心して自分の個性・特性を発揮しながら活躍でき、その時人は幸せを感じられると。

とくに組織、チームの1メンバーという立場では、自分の存在感・貢献感を持ちづらくなりがちでしょう。自分が組織・チームをリードする立場になった際には、すべての仲間が存在感・貢献感を持ちながら、安心してリスクを取ってそれぞれの個性・特性を思う存分発揮しながら活躍できる環境を整えることがいかに重要かを身をもって体感した気がしました。



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