飛べなくなったノミの話に思うこと#2
こちらの記事は上記の記事の続きとなっております。お手すきの方はリンクから飛んでお読みくださいませ。
前回までのあらすじ
スーパーの採用担当が採用業務の改善に取り組む。未だ業務改善未着手のアナログな入社手続き書類をなんとかするために関係者にヒアリングをすることにしたのでした。
まずは一旦課題の洗い出しをしよう
まず私は課題の洗い出しにかかりました。パート・アルバイト採用だとあまりにもパイが大きすぎるので、中途採用入社の手続きをオンライン化するという方向で一旦考えてみます。※ちなみに2年前までは中途採用も兼務しておりました。
その前に一般的に入社手続きに必要な書類とは何を指すのか、列挙してみましょう。
上記が一部オンライン化は進んでいるものの、ほぼ紙で行われている入社手続き書類一式となります。このアナログな手続きによっておこる課題と解決のためのアイディアを次に列挙したいと思います。
課題と課題解決のためのアイディア
①個人情報流出の危険性
②大量の紙の印刷による経費と時間の無駄遣い
③進捗が可視化されておらず、担当が容易に把握できない。
それではここでこれらを解決する私のアイディアについて5W1Hでまとめてみます。
アイディアに対するフィードバック
上記案について①上長(採用MGR)②中途採用担当者 ③人事チームの皆さま(3名)からそれぞれご意見をいただきました。
①上長からのフィードバック
★whoの部分
「中途採用担当者」の仕事を減らすことを目的としているが、本当にそれだけなのか。例えば内定者目線から見ると何枚も同じ紙に名前と住所を書くことが苦痛となる。それを解消できるツールともなりえるだろう。このツールを作ることで誰のためになるのかを考えることでより良いものができるかもしれない。
★whatの部分
そもそも入社手続き書類以外にも送るものが多すぎる。目に入るものを減らすという根本的な対策が必要。
★実装部分
BOXに関しては「データの催促機能」がすでに備わっているはず。
既存アプリの機能を組み合わせることでうまくいくことがたくさんあるので、調べてみるとよい。
★リスク部分
本当に現物書類を本社で保管する必要があるのか、根本的なところを検討する必要がある。どこまでが紙で、どこからはオンラインでもよいのか。人事チームに確認すること。 印鑑の抜け漏れチェックはTeachable MachineというAIアプリを使えば実装は可能
★if分岐について
社会保険や年間休日数の設定は個別に多様なif分岐が存在するので、注意。
②中途採用担当者のフィードバック
★つい最近も書類の紛失騒動があった。無事に見つかったので良かったが、 今後の為にも是非この問題に取り組んでほしい。
★内定者本人がTo doリストを消し込んでいくのではなくて、入力したら勝手に消込が行われる仕組みのほうが良い。そのデータを可視化してほしい。もし作業が遅れている人がいたらフォローしたい。
★通勤許可証は今は人事総務課長が紙でもろもろの条件を確認しているけどそもそも定期代の計算や距離数などは他のアプリと連携することで勝手に計算してくれる仕組みにしてしまえばいいのでは?
★監査の人が入社手続き書類をチェックするにあたって、紙の方がチェックしやすいと言うかもしれない けど、そもそも上記のような仕組みを作ってしまえば、チェックする作業自体必要なくなるかも。
二人からのフィードバックを受けて
上長と採用担当者からのフィードバックを受けて思ったことは関係者の把握がまだまだ甘かったなということです。入社手続きには店舗の人事総務課長や監査の人も絡んできます。でもオンライン化することでその周りの人たちの仕事も一緒に削減できそうだなという予感を感じました。
③人事チームのフィードバック
人事チームは内定者から提出された書類を受け取って実際にそのデータをシステムに入力していくチームとなります。今回のヒアリングの肝となる部署です。絶対紙の提出じゃないとダメ!と反対されるのではとヒヤヒヤしていたのですが、「おお!紙だらけのうちの会社の人事手続に手を付けようとはやるね!」と2人、3人と集まってきてくれました。
★誓約書など署名・印鑑が必要な書類のオンライン化
やろうと思えばできるのでは?会社としてはその人が内容を承知したという証拠さえ残れば問題が無いから、内容読了後、☑ボックスにチェックを入れてくれる仕様であれば問題ない。署名も今は電子オンライン化可能だと思うので、そう考えるとWEB化できない書類はないのかも。
→なんと!なんだかうまくいきそうな気がしてきました。でもそれよりも重大な課題があるとのこと。
PDF化の呪い
人事チームの人が語る重要な課題とはなんでしょうか。それは・・・
★オンライン化に取り残されてしまう人が出てきてしまうかもしれない。
その人たちのケアをする時間が増えて逆に手間となってしまわないか。
ここで出てきたのが「PDF化が難しい」というキーワードです。え?令和のこの時代に?
「うちの会社って、10年前はスキャナーで取り込んでドキュワークスっていうアプリでPDF化するのが普通だったでしょ。店舗のパソコンってスキャナーが店長のパソコンにしかつながっていないの。だから、PDF化するためには店長のパソコンを借りなきゃいけないわけ。でも「PDF化したいから席どいてください」なんて店長に言えないから、仕方なくいない隙を狙ってこそこそっとやるという。だからうちの会社の人たちはみんなPDF化が嫌いなの。見てごらん、未だに勤務実績修正表とか全部FAXで届くでしょ。」
た、たしかに…!プリンターを覗いてみたらFAXの山です。
でも、社内電話がスマホになった今、スキャナーなんて無くてもどのパソコンでだってデータは取り込めるし、ExcelのPDF変換なんてボタン一つです。
想像もしていなかった返答。PDF化は嫌いだからやりたくないという驚きの理由。この闇は思った以上に深そうだ…。私はこの現象を「PDF化の呪い」と名付けたいと思います。
いつだって「人の心を動かすのが一番難しい」
先日、デジタル人材の採用を担当している子がこんなことを言っていました。「電子POPが実験的に導入されて、店舗のお仕事は格段に減ったんですが、じゃあその空いた時間を有効に使っているかというとそうではないみたいです。みんな今の仕事のままがいいから、他の部署の仕事を手伝おうとか、他のクリエティブな仕事をしようとか、そういう方向になかなかならないみたいで、困ったものですね。」
なんと…。そんなことが店舗で起きていたとは。DX化ってただただ進めればいいってものではないのですね。人の心ってやつは本当に難しいです。
さて、前回の冒頭にお話ししました飛べなくなったノミの話、皆様覚えていらっしゃるでしょうか?実はこの話には続きがありまして、ノミが元通り高く飛べるようになる方法がひとつだけあるのです。
それは「実験を受けていない高く飛べるノミをこの瓶に入れる」です。高くとべるノミを見たノミたちは「あれ?僕たちも実は飛べるんとちゃいます?」と思うのか、元通りぴょんぴょん飛べるようになるのです。
私がやりたい仕事はこれなのかもしれません。PDFなんて簡単にできるのです。いつだって「人の心を動かすのが一番難しい」ですが、私にとっては「一番楽しい」ことでもあります。みんなが気軽に「私でもできるかも!」って思ってもらえるような、そんな仕組みを作りたいと改めて思うのでした。
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