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前テレビ世代とテレビネイティブ世代にやさしくあれ

私の父母はテレビネイティブだ。
テレビの子である。
父は昭和28年、母は昭和31年の生まれだ。
父が生まれた年に、日本のテレビ放送が始まった。

ということは私の祖父母はテレビネイティブではないということになる。
テレビネイティブではない祖父母は、テレビへの没入感というか、肩入れ具合がすごかった。
ドラマで殺人事件がある。
刑事が犯人を探すために東奔西走する。
すると祖父母はいっしょなって犯人を探してあげる。
見つけると、ここにいるぞ、とテレビの中に教えてあげる。
刑事があと一歩のところで犯人を逃したりすると、何をしているんだといっしょに地団駄踏んだりする。
楽しそうだった。

テレビが始まったころ、プロレスの試合中継を見た人が興奮のあまり、心臓麻痺で死んでしまったみたいな伝説を聞くが、うべなるかなと思う。
テレビ内の事象に全力コミットしてしまうのが、プレテレビ世代の特徴だろう。

一方テレビネイティブである父母はどうかというと、なぜか評論家スタイルだ。
これはいいだとか、これは悪いだとか、そういうことをひっきりなしに呟いている。
楽しんではいるのだが、一歩後ろに下がって冷静に楽しんでいるという感じだ。

まあどちらにせよ確実にいえることがある。
私の周りの人はおしなべてテレビを見ながら喋るということだ。
また歌番組があればいっしょに歌う。

自分は小さい頃からそれが気に食わなかった。
不快だった。
私はとびきり神経質なのだ。

しかし、喋る人らは楽しんでいるのだ。
邪魔をしてはかわいそうだ。
私にできることがあるとすれば、修行を積んで明鏡止水の心境を会得し、何事にも動ぜぬ強い心を持つことだけである。

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