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同じ毛沢東主義の空の下で

田原 史起の『中国農村の現在 「14億分の10億」のリアル』という本に、こんな事が書いてあった。

大躍進政策の際、江西省は比較的死亡率が低く、安徽省は高かった。
その違いを山林の多寡に求めた研究がある。
その論文の名前を「Under the Same Maoist Sky」という。

黄色っぽい青空、土壁の家。
親や子どもが飢えて死んでいく。
それを無感情で眺めている人。
無念が忍ばれる。

そういう無念の人が今だってそこら中にいる。
同じ空は今の私の頭上にも広がっているのである。

自分の理解では、大躍進政策というのは、中国の五カ年計画である。
毛沢東が主導した。

「とにかく公共事業をやりまくって経済成長させまくったりましょうや!
イギリス、抜いたりましょうや!
みんなで、やりましょうや!!!」

という、どうかしている内容である。
1950年代後半のことだ。

郊外にしょぼい土の釜をいっぱいもりあげて、それで鉄鋼を作らせようとした話は有名だ。

当時の中国には機械がないから、人海戦術でいくしかない。
農業をやっていた人たちが、公共事業に駆り出された。
公共事業が忙しくて農作物がつくれない。
中国全土で食べ物がなくなった。

論文タイトルのMaoistとは、毛沢東主義者という意味だ。
たぶん「毛先生の言うことに間違いなし!」って人々のことだろう。

これは余談だけど、私が当時勤めていた会社で、あたらしい五カ年計画が発表された。
それが「◯◯大躍進」(◯◯には会社名が入る)という不吉な名前だった。
なんだか目の前が暗くなるような思いがしたものだ。
名前は大切である。

論文は会員限定公開?か何かでお手軽にアクセスできなかった。
多分、江西省は山林が多い、だから飢饉に強かったということだろう。

戦後、食い物が足りなくなったから、山に木の実だのなんだのと食えるのを探しに行ったと私の大叔父が言っていた。
戦中、食い物がないので球根を食ったけどめっちゃまずい、それで山のけものを取って食べた、ねこと猿はおすすめしない、とこれは祖父の言だ。

山は人類最後の砦なのだ。

最近、政治が変わるという話をよく聞く。
兵庫県でも革命が起こったようである。
局所的な大躍進政策が県庁で始まるのかもしれない。

実際、小規模な大躍進政策はいたるところで起こっているのである。
寒空の下で無念の死を迎えている人を、自分はどうすればいいのだろうか。

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