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カツオくんは冬のドレスコードを完璧に理解している。

寒い日だ。
朝、駅のホームで電車を待っていたら、前の人が立派な外套を着ていた。
襟が大きい。
キャプテン・ハーロックみたいだ。
かっこいいと思った。

襟が大きい服なら首元もあたたかろうし、そう見えるから周りも安心だ。
自分は暑がりで、真冬でも薄着だから周りから心配されることがある。
心配されるのはいやなので、あたたかくみえる方法を模索した。

それで分かったのが、首になにか巻いてあれば、冬の格好としてふさわしくなるということだ。
首さえ隠れていれば、仮に下半身がパンツ一丁でも問題ない。
首を隠すこと、これが冬のドレスコードなのだ。

良い例がサザエさんのカツオくんである。
彼は冬になると、いつもの長袖半ズボンに、マフラーを巻くだけである。

また、若い女性を見るがいい。
冬でも短いスカートやホットパンツを履いて、おみ足を外気にさらしている。
しかし上半身は、なにか鳥や羊の化身のようなモコモコを身にまとっている。

カツオくんも若い女性も、ちゃんと冬のドレスコードを守っている。

自分はハーロックみたいな服をもっていないので、何かで首を隠すべきだ。
考慮すべきは当然マフラーであるが、これにはちょっと問題がある。
自分はマフラーをすると、たとえ気温が-20度でも汗をかいてしまう。

おそらく-30度ぐらいがマフラーの適温なのではないか。
そう考えると、日本はマフラーには暑すぎる。
自分はシベリアにでも移住するほかないのだろうか。

そういうことを当時付き合っていた人に相談したら、麻でできた長い布をくれた。
これもマフラーといっていいのだろうか。
スイカみたいな柄だ。
彼女が、さあ首に巻いてみろという。

巻いてみたら爽やかで、なんともいい感じだ。
かといって寒いわけではなく、風を防いで適温を保ってくれる。

必要なのは素材への考慮だったのだ。
私は彼女の慧眼を祝福した。

というわけで私は今も、涼やかな素材の布を首に巻くことにしている。
周りから暖かい格好をしているように見られるための方便として。

よって、心のなかでこれを「言い訳マフラー」と呼んでいる。

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