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あなたの風邪はどこから?僕は上唇から

ツイッターで、

「自分すごいって主張してるときは調子が悪いと、又吉が言ってた」

というつぶやきを発見した。
そのとおりだと思う。

自分も大いに「俺すごい」を連呼して日々を過ごしてきたが、あれは調子が悪かったのだ。
さっさと帰って、温かいものを食べて風呂に入って寝るべきであった。

やはり又吉はすごい。
又吉の主張をキャッチしたつぶやき主もすごい。

又吉の話は精神上の健康の話だと思うが、物質的健康も大切だ。

自分の場合、体の具合の悪さは上唇で判定できる。
上唇が腫れて痛くなってきたら、具合が悪くなる兆候なのだ。
逆に多少の不調であれば、上唇にワセリンを塗って炎症を抑えることで、回復することもできる。

便利だ。

この便利体質の起源は、私がまだ高校生だったころにさかのぼる。
ある冬の日曜日、私はパックに入ったいかの寿司を食べていた。
いかの寿司は私の好物で、母が近所のスーパーで買ってきてくれたのだ。

パック寿司を食べて数分も経つと、ふいに手のひらが痒くなった。
不思議に思いつつ手のひらを冷水で冷やしていると、かゆみが全身にひろがっていく。

混乱しつつ鏡を見る。
顔がみるみる腫れてきてきた。
まぶたが腫れて目が閉じかかる。
全身がミミズ腫れのようになった。
関節もこわばって動きづらい。

恐れおののいた私は母に助けを求め、二人して農協病院に向かったのであった。

あいにくその日は日曜だった。
しかたなく我々は急患の列に加わった。

その日は寒かった。
急患の列も凍えるようだった。
寒さで腫れが引いていく感じがする。
ふと気づくと、本当に腫れが引いてきて、生白いむくんだ皮膚だけが残った。
ほとんど治ったといってよかった。

タイミングが悪いことに、腫れが引いてすぐに私が診てもらう番になった。

「どうしたの」

芯から疲れたような若い医師が尋ねる。
私はおどおどしながら答えた。

「えっと…体が…腫れてたんですけど…」

「どこが?」

「全身が…でも今は…」

「腫れてないね。なんで来たの?」

医師が不機嫌になるのも無理はなかった。
私以外の急患は膝が逆に曲がっている人とか、本当に具合の悪そうな人たちばかりだったのだ。
ふざけている場合ではない。

私は反省した。
そのまま放免になった。

帰ってから母と、あれは何だったんだろうねといぶかしがりながらこたつに入っていたら、下半身がまた腫れてきた。

ストーブを使った実験の結果、温まったところが腫れるという結論に至った。
私は終日、冷たい廊下で生活し、寝るときも布団に入らずパンイチで寝た。

謎の病はすぐに治ったが、これ以後、私は急に花粉症になったり、布団を頻繁に洗濯しないと痒くなったり、果物で口が痒くなったりするようになった。

それとともに、例の上唇センサーが作動するようになったのだ。
人体の不思議といえる。

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