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白いシャツなんて着て大丈夫?という心配が存在する
私は一年ほど前から、そこらで売ってる白い綿のシャツを着ている。
夏は開襟シャツ、それ以外はボタンダウンシャツである。
白いシャツだとビジカジというのか、会社にも着ていけるし、もちろんプライベートでも着ることができるので、楽である。
そういう生活をしていると、「白いシャツなんか着て大丈夫?」と心配してくれる人がいる。
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この「大丈夫?」には2つの意味がある。
1つ目は、「襟がついてると心理的圧迫感に苛まれ、ストレスを感じてしまうのではないか?リラックスできないのではないか?」という心配である。
これをいう人は丸首教とでも申すべき宗教に入っている。
とにかく首周りをひろく開けておく、それが精神衛生上もっとも良いとされているのである。
たぶん学生時代、学ランのボタンを2つ外して先生に怒られていたタイプだろう。
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2つ目が本題で、「白いシャツはすぐ黄ばんだり黒ずんだりシミがついたりしちゃうから着れなくなっちゃうよ、SDGsじゃないよ、大丈夫?」という心配である。
我々適当に生きている独身男性はみんな「海辺のカフカ」に出てくる星野さんみたいな生活をしている。
星野さんは下着を洗わない。
汚れたら捨てて、新しいのをコンビニで買うのである。
そのような生活スタイルならば、なるべく汚れの目立たない服を選ぼうとするのが人情といえる。
洗濯するよという者であっても、毎日洗濯しない。
週末まとめて洗濯するので、汚れが熟成され、洗っても黄ばみがとれない。
毎日洗濯するよの者であっても、そういう人は乾燥機つきドラム型洗濯機を使っている。
白いシャツは乾燥機にかけるとクリーム色というか、黄色っぽくなるのである。
毎回シャツをクリーニングに出せる富豪以外、白いシャツは鬼門なのだ。
だから彼らは色が濃い服を好む。
貧乏浪人が茶色の袴を穿くのと同様である。
時代がうつろい、IPS細胞からつくった心臓が万博に展示される世の中になった。
しかし我々うだつの上がらない独身男性の服に関する観念は、200年前からアップデートされていないのだ。
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実際のところ、ネットで検索すれば、簡単に漂白技術を会得することができる。
心配には及ばない。
しかし、心配してもらえるうちが花というではないか。
ありがたいことなのだ。
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