反乱は洗濯キャンセルから
私は着るものを2着持っている。
毎日、かわりばんこに着ている。
着た服は、夜、風呂のあとに洗濯する。
最近までそれで問題なかったのだが、このところ洗濯がおっくうになってきた。
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風呂に入ったあとすぐ眠たくなってしまう。
洗濯は明日の朝でいいかな、と思いそのまま寝てしまう。
起きるとすぐに出かけなければならない。
やむを得ない、洗濯は今夜しよう。
洗濯キャンセルである。
こうなるとかわりばんこサイクルがまわらなくなる。
着るものの枯渇が発生する。
今もでかけたいのだが、服が乾くまで家でじっとしている。
難儀だ。
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司馬遼太郎の「翔ぶが如く」に、西郷隆盛が着物を一着しかもっていないという話が出てくる。
その着物を朝、書生に洗濯させる。
すると西郷着るものがない。
服が乾くまで西郷は裸でいる。
客が来ても裸で応対する。
人に呼ばれても「着物が洗濯中なので」といって欠席してしまう。
着物を増やすよう人にすすめられても笑って取り合わない。
川路利良が、そんな西郷の行動に反乱性向が含まれていることを感じるのである。
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これは小説のなかのお話であるからして、ほんとうの西郷は着物ぐらい持っていただろう。
それにしても、いまの自分も小説の西郷と似たようなことをしている。
すなわち、私も反乱者であったのだ。
おそろしい。
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