チャンスの神様とすれ違った話
2010年、私はバンクーバーにいた。
街は冬季オリンピックでお祭り騒ぎだった。
2021東京オリンピックでも同様だったかと思うけれど、観戦チケットは地元の人から優先的に購入できる。もちろん抽選方式なのは変わらない。
冬季オリンピックの観戦と聞いて、どんな種目を思い浮かべるだろうか。
フィギュアスケート、スノーボード、スキー、アイスホッケー、ボブスレー、そして、、、カーリング。
私はダントツでカーリングが好きだ。
カーリングと言えば、2018年の平昌オリンピックで女子チームが銅メダルを獲得したことで、一気に知名度が上がり、流行語にもなったが、2010年の時点ではルールを理解している人も少なかった。
#そだねー
2010年のオリンピックが開催される時、私はワーキングホリデーでバンクーバーに住んでいたこともあり、優先的に抽選に申し込むことが出来、そして幸運にも観戦チケットを手にすることが出来た。
しかし、周りにはカーリングに興味を持つ友人はおらず、一人でスタジアムに向かった。
試合当日の朝、スタジアムの最寄り駅にはたくさんの人がいた。しかし、駅を出るところで右に左に人々の流れは分岐していた。
(どっちに行けばいいのか?)
当時、現地のガラケーしか持っていなかった私は、隣を歩く男性に話しかけた。
「カーリングのスタジアムはこっちで合ってますか?」
「あぁ、私も今から行きますよ」
男性は親切に同行してくれるようだ。
その男性は、50代~60代くらいだろうか。日本語の会話に全く問題はないが、少し外国人が話す日本語のような訛りがあった。海外歴が長いのか、日系の外国人の方なのか。
しかし、彼の服には日の丸のワッペンやバッジがたくさん付いており、オリンピックへの熱心さが伺える。
「カーリングはお好きなんですか?」何気なく話をふる。
「そうですね、日本チームに教えたりしています」彼は冗談とも真実とも見分けがつかないくらい淡々と答える。
私は「本当か??代表コーチが電車に乗って、駅から歩いてスタジアム入りするのか??」と少し疑問を感じながら、それでも心は昂揚していた。
スタジアムまで10分くらいだっただろうか、私は自分の持てるカーリングの知識の全てを総動員して彼との会話を続けた。彼は選手のことや練習の様子を教えてくれた。
スタジアムに着くと、会場外で手荷物検査のゲートがあった。すると彼は、
「私はこっちなので」
と、ジャケットの中からIDを取り出し、関係者用のゲートに向かっていった。
彼はミキ フジ ロイさんという、正真正銘の代表チームのコーチだった。バンクーバーとソチオリンピックでも代表コーチを務めている。
私は、疑念と興奮が混ざり合いテンションが上がり過ぎて、この貴重な機会をうまく活かせなかったことを、今でも悔しく思うことがある。
彼ともっと親しくなっていれば、代表の練習を間近で見られたかもしれないし、代表選手と直接話すことも出来たかもしれない。
そして何より世界トップクラスの人の経験を聞く貴重な機会だったのに。
#チャンスの神様には前髪しかないとはまさにこのこと
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この経験は、今思い出しても幸運なことだったし、もったいないと思ってしまいます。
「チャンス」は意外と身近に転がってくることがあるのですが、それを掴み損ねてしまうことも往々にしてある。
チャンスを逃さないためには、いつでも掴んでやるという心構えも必要だし、ガッチリと捕まえる握力(実力)も必要だし、チャンスをチャンスとして認知するための視力(判断力、感受性)も必要なのですね。
#チャンスの神様は初老の男性の姿をしていることもある
今日、書かせて頂いたオリンピックコーチとの話は、私の思い出に残る、逃したチャンスの代表格ですが、他にも「あの時こうしていれば」「一歩踏み出していれば」「思いを伝えていれば」などなど、後悔にも似た感情を抱く出来事は他にもたくさんあります。ただ、後悔はするだけ無駄なので、反省に変えて、繰り返さないための準備をしていくしかないですね。
チャンスの神様はあなたのすぐ傍を歩いているかもしれませんよ?
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