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アマビエちゃんと加藤くんのお話 第5話『散歩』

僕とアマビエちゃんはよく、長い散歩をする。
どこまでも歩く。
三鷹から出発して、永福町、新宿、市ヶ谷、お茶の水、東京、両国、2人はどこまでも歩き続ける。
歩きながらいつまでも話し続ける。
1時間、3時間、5時間、8時間、10時間をすぎたあたりから、時間の感覚はなくなって、いったい今どこを歩いているのかもわからくなる。
でも散歩のいいところは目的地のない所だから、迷ってもいいんだ。
ただ、アマビエちゃんと一緒にいたい。
ずっと2人で話して、お話をしていたいから、僕等は歩き続ける。
アマビエちゃんが産まれてきてくれたこと。
この138億年の長すぎる時の中で、同じ瞬間を一緒に生きられることを、誰かに感謝する。
彼女が海王星に生まれないでよかった。
リゲルに生まれなくてよかった。
地球に生まれてくれて良かったと、全身で感じる。
僕には、アマビエちゃんしかいないと思う。
アマビエちゃんはどうだろうか。

そう考えると、いつも不安になる。
でも、そんな不安そうな僕の気持ちが見えているアマビエちゃんは、
そんな時、優しく笑ってくれる。
それを見て、安心してもいいのかもしれないと、思う。
ずっと一人だと思っていたけれど、もしかしたら一人じゃないのかもしれない、もう。

ありがとう。

ありがとう、アマビエちゃん

つづく

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