katoshi

ソフトウェアエンジニア/システムアーキテクト/博士(工学)。システム開発の現場で培った経験を活かし、生命の起源のメカニズムや生命現象の本質、さらには知能や社会の構造を探求します。 【記事まとめ用サイト】 https://katoshi-mfacet.github.io/ja/

katoshi

ソフトウェアエンジニア/システムアーキテクト/博士(工学)。システム開発の現場で培った経験を活かし、生命の起源のメカニズムや生命現象の本質、さらには知能や社会の構造を探求します。 【記事まとめ用サイト】 https://katoshi-mfacet.github.io/ja/

最近の記事

  • 固定された記事

生命の起源の全体像:システムエンジニアの視点

私はシステムエンジニアの視点から生命の起源について個人研究をしています。 システムエンジニアはシステムの構造やメカニズムだけでなく、その構造やメカニズムをどのように上手く作り上げるかということを日々考える仕事でもあります。その視点から見ると、通常、私たちが設計する人工的なシステムよりも遥かに複雑で巧妙な自然のシステムである生命が、どのようにして自然に出来上がったのかは、科学や哲学だけでなく、システムエンジニアという視点からも非常に興味深いのです。 ■生命の起源の全体像

    • 品質の経済

      社会を経済の側面から評価する場合、一人あたりのGDPや所得の平均値あるいは中央値のような指標が用いられています。 GDPや所得が高い国は先進国や高所得国と呼ばれていますが、こうした経済的に成熟した国は、より大きな成長が難しく、場合によっては日本のように長期間に渡って経済成長が停滞することもあり、打開すべき経済的な問題として認識されています。 一方で、現実的な経験を振り返ると、日本の経済が停滞して成長が止まっていたと言われる1990年代から2024年現在にかけて、私たちの生

      • 言葉が持つ力:現実を理解させる能力

        ChatGPTのような会話型AIは、人間のように会話することができる能力を持っています。 私たちは子供の頃から現実世界で経験を重ねることで、現実の様々な概念を把握し、それらの概念が持つ性質や法則、概念同士の関係などを理解します。例えば、ボールを投げると放物線を描いて落下するといった物理的な概念や法則、他人に良いことをすると褒められ、悪いことをすれば叱られるといった社会的な概念や法則などです。 通常、私たちはこうして実体験の中で現実世界について学び、それらの概念について他者

        • 不満を生み出す構造:現代社会の弱点

          現代社会では、社会の仕組みや技術は進歩しています。社会は豊かになり、生活の利便性も大きく向上してきました。 それにもかかわらず、多くの人が幸福を実感できずにいます。それは、一般論としては社会格差の大きさの問題として扱われていますが、私はその見解をあまり支持していません。 私の見解は、現代を生きる私たちは、幸福を感知したり表明する能力が弱体化しており、代わりに不満を感知して表明する能力が発達している、というものです。さらに、社会は私たちに向かって、この社会は欠陥だらけであり

        • 固定された記事

        生命の起源の全体像:システムエンジニアの視点

        マガジン

        • システム思考から見た経済・社会
          32本
        • 人工知能という情報処理システム
          35本
        • システムアーキテクチャから探る生命の起源
          72本
        • 未来の寓話シリーズ
          14本

        記事

          一貫性を保つ能力:生物と知能の特性

          生物と知能の振る舞いについて考えると、そこには一貫性を保つという性質があることに気がつきます。 例えば天敵から逃げたり食べ物を探したりするために移動する際、どちらの方に進むのか、選択肢は多数あります。 初めは右側に移動し始めたとしても、その次の瞬間も、移動できる方向の選択肢は多数あります。この際に、左に戻るような選択肢を選んでしまい、また次の瞬間には右に移動する、といった選択を繰り返してしまうと、敵から逃げたり食べ物を探すという目的を達成できません。 また、敵から逃げて

          一貫性を保つ能力:生物と知能の特性

          人工知能を「概念情報」プロセッサとして理解する

          会話型のAIが人間と同じような自然な会話を実現できている理由は、単に自然言語を習得したり、膨大な知識を学習したということだけでは説明がつきません。 会話に含まれる様々な概念についての情報を内部に保持し、それらの概念の情報を会話の流れに沿って的確に補正した上で、それを参照しながら回答文を生成しなければ、自然な会話は成立しません。 例えば会話型AIに「東京駅から渋谷駅に行きたい。ただし電車に乗らずに。」という質問をすると、「東京駅から渋谷駅へ電車に乗らずに行くには、バスを利用

          人工知能を「概念情報」プロセッサとして理解する

          反復想起する知能:人間とAIの主観性

          私たちが世界をどのように認識するかという問いが、哲学や認知科学の分野で議論されています。 従来の知能モデルでは、感覚入力が脳によって受信され、処理され、解釈される受動的なプロセスとして知覚が描かれることがよくあります。しかし、そのようなモデルでは、主観的な感覚の説明が上手くできません。 この記事では、反復想起システムという考え方を中心に、人間と人工の両方の知能を理解するための新しいフレームワークを提案します。 従来の刺激反応モデルとは異なり、能動的な想起の反復プロセスと

          反復想起する知能:人間とAIの主観性

          「学習する数式」としての知能

          人工知能の技術的な進化が注目されています。 人工知能はプログラムで実現されていますが、通常のプログラムによる情報処理技術と根本的に異なる点は、機械学習というアプローチを採用している点です。 プログラムは、いわば数式の塊です。 通常のプログラムは、人間のエンジニアが情報処理の規則を設計します。つまりプログラム内の数式を全て設計します。 一方で、機械学習をするプログラムは、人間のエンジニアは情報処理の規則は設計しません。その代わりに、トレーニングや学習と呼ばれる処理の中で

          「学習する数式」としての知能

          進化する数式の世界

          私たちの住んでいる世界は、物理的な物や法則によって支配されています。 もちろん、物理学で扱われる概念より複雑な、化学や生物や人間の社会など様々な仕組みがあります。しかし、それらも元を辿れば物理的な物や法則の集合や積み重ねによって成り立っています。 そして、物理的な法則は全て比較的シンプルな数式で表現することができます。その数式に、初期状態と経過する時間を与えると、どんなに先の未来であっても正確に予測することが可能です。 ここで疑問が浮かぶはずです。シンプルな数式で法則を

          進化する数式の世界

          信頼・責任・好感:社会システムのテクノロジ

          社会的なシステムには、そのシステムの目的を満たす機能だけでなく、そのシステムが選ばれて存続し続けるための要件があります。 その基本的な要件として、信頼、責任、そして好感があると私は考えています。 この記事では、この考えについて、関連する技術と共に説明していこうと思います。 ■信頼構築技術としてのブロックチェーン ブロックチェーン技術は、アルゴリズムに依存した信頼構築を可能にする技術と言えます。信頼とは端的に言えば、システムに入れた内容や指示が、事前に決められた手続きや

          信頼・責任・好感:社会システムのテクノロジ

          ブロックチェーン技術の本分

          Web3というバズワードと共にブロックチェーン技術が注目を集めてから、流行は一旦落ち着いたように思えます。 先日、Web3をテーマにした討論の動画を久しぶりに見る機会がありました。 討論としては、ボトルネックとされていた取引コストの問題が解消して低コストで取引ができるようになったにもかかわらず、Web3は当初言われていたような普及はしていないという事実を出発点として、では何が結局普及の鍵なのかという話が中心でした。 そこでの議論は、既に技術は出揃っており、キラーアプリが

          ブロックチェーン技術の本分

          情報処理システムとしての生物システム

          私は個人研究として生命の起源について考えていますが、専門はソフトウェアシステム開発です。 ソフトウェアシステムは、情報処理システムと呼ばれることもありますが、情報というキーワードで考えると興味深い点があります。それは、ソフトウェアが処理する対象であるデータは情報ですが、ソフトウェア自体も情報であり、処理中の内部状態もまた情報である、という点です。 そして、生物もまた、考えてみると情報処理システムとしての側面を持っています。 生物は環境に反応して自身の生存に有利な行動を取

          情報処理システムとしての生物システム

          システム非完結性の原理:環境と生命

          生物は、独立したシステムと考えることができます。 生命の起源について考える中で、システムの自己非完結性という概念が重要になることに気がつきました。 これは、システムとして自己完結的であるほど、システムの継続性と増殖能力は高くなるにも関わらず、現実には自己完結していないシステムの方が高度な進化が可能であるということです。 以前から私は「生命のリドル」と呼んでいる現象について考えてきました。それは、なぜ生物は一度停止しても再び動作できるように進化しなかったのか、という謎です

          システム非完結性の原理:環境と生命

          生命の起源:地球は晴れていたのか?

          生命の起源についての議論で、生物が必要とする有機物が初期の地球環境でどのように生成されたのか議論されています。特に、基本的な有機物が自然環境で十分に生成されなければ、生命が誕生するための素材が存在しないことになってしまうためです。 以前には、生物が必要とする有機物は、生物にしか生産できないと考えられていた時代もありましたが、ユーリー・ミラーの化学実験をきっかけにして、無機物から自然に基本的な有機物が合成できることが証明されました。その後の研究で、様々な条件下で様々な有機物が

          生命の起源:地球は晴れていたのか?

          生命の起源:システム理論的探求

          生命の起源は、多くの謎に包まれているとされています。この謎について、私はシステムエンジニアの視点から探求を進めています。 この記事では、これまでの私の研究成果について、私自身の整理も兼ねて、概説しようと思います。 ■生命の起源の3つの側面 地球における生命の起源について考える際、大きく3つの側面に分けて考える必要があります。 1つ目の側面は、一般的な物理学や化学的な法則についてのシステム的な理解の整理です。 この側面での理解が、生物の誕生が例外的なものであるという誤

          生命の起源:システム理論的探求

          美味しい物の複雑さ:複雑系の要素

          出来立ての料理、日持ちしない生菓子や発酵食品などには、単純な味覚や嗅覚のバランスを超えた美味しさを感じます。 そこには複雑さによる美味しさがあります。 もし美味しさが単調な味覚や嗅覚のバランスだけで成立しているなら、機械的に素材をすりつぶして混ぜ合わせて最適なバランスに整えるだけで、完全な美味しさが容易に実現できます。 しかし、複雑さの美味しさは、単なる味覚や嗅覚に対する静的なバランスだけでは成り立ちません。 すりつぶして混ぜ合わせると失われてしまう構造や、揮発や発散

          美味しい物の複雑さ:複雑系の要素