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2012 音楽業界を諦めたはなし

香取さとり30歳までのカウントダウン
第20夜 2012

2012年は家族にとって大きな節目の年でした。何があったかは言えないのですが、家族からの要請を受けて急ぎ帰省すると、部屋のあらゆるものがある時間を境に思考をやめていて、その事象がもたらしたショックの大きさを私に訴えていることだけは見た瞬間にわかりました。こういうときになんとかしなきゃいけないのは長女の役目なので西へ東へ奔走しましたが、それでわかったのは意志を持って行動できる人が結局一番強いっちゅうことですね。この話はここまで。

このころ私は音楽イベント運営系の会社でインターンとボランティアの中間みたいなことをしており、要は雑用を引き受けながら事務処理のノウハウや業界のルールを学んでいました。大学の軽音サークルで自分より歌のうまい人、演奏の上手い人にたくさん出会ってしまい、自分の音楽で食っていくにはまだまだ時間が要るなと思ったので、大学を卒業したらとりあえずレコード会社とか芸能事務所とか音楽業界の裏方になって、勉強しながら創作を続けようと思ったからです。でも、本気で業界の裏方を目指している人の熱量や知識と比べると自分はやっぱり半端だったし、裏方として誰かを売り出すことを考える労力があるならそれは自分のために使うべきだという気持ちも芽生えていきました。

一年間の活動の最後、メンバーに向けて決意表明をする時間がありました。周りが「今手伝ってるバンドをメジャーデビューさせる」とか「日本一のフェスをつくる」とか言ってるなかで私は「カリスマブロガーになる」と宣言して組織を去りました。業界の裏方のはしっこに一年身を置いてそれしか浮かばないってことは、業界を支える立場に適性がないってことだなとここではっきり自覚できたので、それはそれで収穫だったかなと思います。

じゃあ私は何になればいいんだろう。いつになったら表に立てるんだろう。本当にやりたいことを相談できる相手は周りに一人もいませんでした。そんな時に学科の友達が「一個上の先輩がアコースティックのデュオでライブをするから一緒に見に行かないか」と誘ってくれて、それを見に行ったのが私のターニングポイントであり、深い落とし穴だったという話はまた明日しようと思います。

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