【2019シーズンJ1第9節】ジュビロ磐田vs北海道コンサドーレ札幌 マッチレポート〜北の大地より王国への侵攻〜
ここまで直近リーグ戦3連敗の後2連勝。ルヴァンカップもグループ首位に付けている。しかしながら、まだまだ途中過程。自他共にまだまだ変化が間に合うタイミング。
手負いの獅子を猫だと思い返り討ちに合うなんてことは、勝負の世界にはよくあること。そこにあるのは不要な驕り。その瞬間の相手を正確に認識しなければならない。同時に、相手が臆病になっているのなら、そこに付け込まないこともまた不要な驕り。何かそんな話を誰かがしていた。もしかしたらしていないかもしれない。
前節までの振舞いは、王者ジュビロからは程遠い状況。けれども、大体そんな相手に勝ちきれないのもコンサドーレ。ミシャの言う、"強者のメンタリティ"の進捗や如何に。
新幹線に揺られ、そこはサッカー王国静岡
前段ではやたら堅苦しく書いたものの、試合前後は楽しいアウェイ旅です。サッカー王国静岡。現在どうこうという論争はさておき、筆者が幼少の頃は、王国静岡、王者国見という認識が強かったような気がします。王国なんですが、県大会のレベルが高すぎて簡単に絶対的な王様を決められないし、国見高校(長崎)がどうにも止まらないし。
繰り返しですが王国静岡。その空気を吸うだけで高く跳べると思っていたのかなあ、と友人達も何人かサッカー留学をして行きました。実際、当時の北海道サッカーとの格差もあり、とてもサッカーが巧くなってました。
そんな、地区予選レベルも高そうな静岡。きっとサッカーを見る目も肥えているのではないでしょうか。実情は知りません。
磐田駅はジュビロ一色。2002年ワールドカップで世間を沸かせた懐かしい選手たちの足形も。とても好きだった明神選手、戸田選手もおり感激。
"Monument of START2002 in 磐田"
試合前。ピッチとの距離感は抜群。手前ゴールライン際を視認できるかどうか。芝の状態は良好な模様。
スタメンは3バックのぶつかり合い
前節のマリノス戦は守備時に菅の位置取りを下げた4バックのシステムを用いたコンサドーレでしたが、今節は守備時5-2-2-1のような形で、ビルドアップの際に後方に人数をかけるジュビロに対して、対面する相手をある程度決めた形で構えます。今節も前半早々にリードを奪うことになり、同点時あるいはリードを奪われた際にどのような組み方をしたのかはほとんど見ることが出来ませんでした。試合開始直後は宮澤が左、深井が右でそれぞれ位置取っていましたが、開始数プレーで普段の宮澤が右、深井が左の配置に戻っていました。
対してジュビロは、ロドリゲスが出場停止。前節の3-5-2から前線の構成を変更し、アダイウトンの1トップで3-4-2-1の形を採用しました。ロドリゲスがピッチを広く使いながらDFラインの裏を狙う選手であるのに対し、アダイウトンはどちらかというとボールの収めどころとして、相手の脇にボールを呼び込みながら攻撃の起点になろうとします。この形で攻撃が効果的につながっていくための鍵になるのは大久保&山田のセカンドトップに位置する両選手との距離感と角度であり、結果として効果的なサポートを受けることのないアダイウトン単体であれば、ロドリゲスに比べてもコンサドーレのCBミンテは対応しやすい相手であったと言えます。
嫌な時間帯をどのように振舞うか
結果から先に言うと、ハイライトの通り2-1でコンサドーレが勝利します。名波監督は試合前コメントで「先制点がポイント」と話していましたが、前半6分早々にコンサドーレに先制点を許し、試合のほとんどをビハインドスコアで過ごすこととなります。ジュビロが先制したならばどのようなサッカーを展開しようとしていたのか名波監督の腹案はわかりませんが、先制点をひとつの勝負所と捉えていたというのであれば、失点の起点となったボールロストはあまりに安易でした。引いてボールをもらい受けようとする田口と、その遥か先でロングボールを待つアダイウトン。意思統一が図れていないことで生じる数秒の迷いが武蔵のプレスバックによるボールロストを生み出します。この失点の後も、こうしたビルドアップにおいて前後の意思統一が取れていないかのようなポジション取りによって、前半のジュビロの攻撃はなかなか厚みを作ることのできないものとなりました。
アンデルソンロペスが前半途中で負傷交代となり、荒野が同ポジションに入ります。そこまでの時間帯において、推進力をチームにもたらしていたロペスと全く同じ役割を荒野に求めるのはさすがに酷というもので、要所でのチェイシングやリンクマンとしての位置取りにおいて一定のタスクはこなしたものの、高橋がほとんど止めることのできなかったロペスとの交代はジュビロにとってポジティブな転機だったはずです。
前半を凌ぎ後半に備える策を提示し反転攻勢に出る、というのが名波監督のプランとしては妥当なものだったはずですが、ここでも、ビルドアップにおける安易なロストから、決定的な2失点目に繋がるCKを与えることとなってしまいます。
90分ある試合において、”時間帯”というのも試合をプランニングしていく上で考慮していく必要があります。得点や失点という結果ではなく、得点を狙い失点を避けるための振る舞いにおいてアウトプットされるべきものです。実際に失点という結果には至らなかったもののコンサドーレも同様で、試合終盤の振る舞いにおいては駒井が発信していた通り、時間の使い方や相手の嫌がるプレーを繰り返すことを今後実践していく必要があります。
4-1-5の躍動
直近の試合では、ボール保持を相手に握られながらもポジトラにおいて縦に速い攻撃を展開することが有効に作用しました。転じて今節は、前半においてはボールを握る側に回り、ミシャ式と言われる4-1-5の形をじっくりと見ることが出来ました。ジュビロはアダイウトンを筆頭に前線からプレスをかける場面はありましたが、結果として試合を通しての統一感や具体的な打ち手としてのプレスを用意してきたようには感じられませんでした。
上図のように組まれた、所謂ミシャ式4-1-5。ピッチを広く使うことで相手守備の狙いどころをコンパクトに限定させにくくしながら、縦横のスライドにより相手守備陣形のギャップを生み出します。
チャナ&ロペスが位置取りを落としボールを迎えにいく形に対し、ジュビロは大南&高橋の両CBがそのままマーク。引き出されたDFの両隣のプレイヤーがそのスペースをケアする意識も薄く、コンサドーレにとっては狙いどころのひとつとなりました。
上図のようにチャナティップが引くことで空けたスペースを菅ちゃんが突くという形も見られました(タイミングズレてオフサイドになりましたが)。
最後に
コンサドーレにとっては後半耐え凌ぐ形での逃げ切りとなり、ジュビロにとってはチケットが完売したホームでの手痛い一敗となりました。総じて感じたのは、ジュビロというチームは悪い意味でプレーの選択肢を多く用意しすぎていることです。更に言うと、判断のベースとなるプレー原則がおそらくは有耶無耶になっており、それ故にプレースピードが上がらず停滞を招いているように思えます。
コンサドーレとしては、前半途中のアンデルソンロペスの負傷退場後の試合運びについては課題の残るものとなりました。次節以降、おそらく彼の代役を探すことになるでしょう。右腕に相手を背負いながら左にボールを置き半身で内側を見ることのできる、すなわち左利きの選手が最適なのですが、みよs……早坂や岩崎、荒野、檀崎あたりが候補となると、少々スケールダウンの印象が否めない部分です。日大の金子くんは大学の試合もあるのでそもそも招集できるのかも怪しいところです。
個人的には、神戸戦は2トップ気味にして武蔵と早坂を組ませる形を推します。守備においても気の利いたプレーが出来ますし、ルーカスを生かすとなるとファーストチョイスなのかと思います。とはいえ、ミシャがどんなことしてくるか、はたまた3mの高さを落下しても無傷だったアンロペが無休で出てくるのか、4日の試合が大変楽しみです。
それではヤマハスタジアム、また次回。
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