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【2019シーズンJ1第6節】北海道コンサドーレ札幌vs大分トリニータ マッチレポート 〜ふたりの鈴木、ふたりの福森、ひとりのチャナティップ〜


 今回のマッチレポートから、副題を付けることにしました。見てわかる通り、大した意味はありません。ただ、そんなに堅い話を書いてるわけじゃないんだと初見で感じてもらえれば儲けものかなと。そんな感じです。終盤にルヴァンカップHOME湘南ベルマーレ戦の内容も加筆しました。ご査収ください。
 まずはハイライトをご覧ください。


開幕から3試合 HOME集客数の前年比較

 HOME開幕からの3試合。ここから先はWorld Cupでの中断や水曜開催、日程的に比較が難しくなってくるので、ひとまずここで一度。比較の軸としては、開催時期を同じくして比較したものと、対戦相手を同じくして比較したものを用意。大分トリニータ(前年J2・2位昇格)はVファーレン長崎(前年J1・18位降格)で代替しています。どちらの比較軸でも、3試合合計の集客数は対前年増。前者の比較軸では、第6節(トリニータ戦)は対前年減。後者の比較軸では対前年減はなし。しかしいずれにしても、第6節トリニータ戦の集客数は直近2試合に比べ大きく落ちている。
 2連敗中というチーム状況、プロ野球の開幕、選挙の直前、土曜13時開催、他にも理由として説明されればなるほどと思ってしまうものもありますし、きっと現状は複合的要因に依るものなのだと思います。GWの神戸戦はチケット好調ですし。
 しかし実際のところは、多様な調査を試みることでしかわかりません。思ったこととしては、サッカーの楽しさやスタジアム観戦の魅力を、もっと多角的に発信し、それぞれを面白いと思って尊重していくことが大事なのかな、ということです。そう考えると、応援の在り方は本当に自己満で良いのだろうか。もっと裾野を広げる方法は議論され尽くしたのか。自分の胸にそっと手を当ててみます。

スリーバックおさらい

 この試合を語る上で、3バックという選手配置での守備について先に話しておきたいところです。コンサドーレのスタメン配置図は3-4-2-1が用いられることが多く、よくある形として、攻撃時4-1-5、守備時5-4-1のように場面ごとに用意されたシステムに沿って人の配置が変わっていきます。
 しかし、オーソドックスな形として最終ラインに配置される人数はあくまで3枚。守備の優先順位に則りもっともリスクを抱える中央を手厚くするので、大外にはスペースが出来ます。中央の堅い3バックに対し、攻撃側はこのスペースを活用しようとしますが、CBがこの動きに素直に対応し外側に流れると、今度はCB間で横のギャップが出来ますのでそこを利用されないように……と基本後手を踏むことになります。
 ひとつの対応策として、インテル時代の長友などが顕著でしたが、WBが守備時にこの大外のスペースをケアする形をとります。あくまでCBとの連携ありきですが、ストレートに帰陣しボール保持者をケア、あるいは外側に引き出されたCBと中央にできたギャップを埋めるカバーリングポジションを取ることで守備陣形を整えます。

相手を見て攻撃をデザインした片野坂。自分たちのサッカーに留まったミシャ。

 試合開始のファーストプレーから、片野坂トリニータは先述の大外スペース、左福森の背後を狙い撃ちにします。マンツーマンで対応する相手をセットしやすい配置であることからも、コンサドーレが高い位置からプレスをかけてくることを見越し、複雑なことはせず、むしろ相手がリトリートに切り替える前にシュート局面までフェーズを進める疑似カウンター。GKを含めた4対3の構築によるプレッシャーの回避。福森の裏スペースを空けて活用するために、前後の駆け引きを通して福森、菅の重心を前方に傾ける。シンプルながらデザインされた攻撃だったと言えます。
 片野坂監督は、広島でミシャとともに仕事をしただけでなく、ガンバでは長谷川監督の下でコーチをやっています。”ファストブレイク”というバスケ用語を使う、攻撃的堅守速攻の使い手です。守備理論であったり、相手を見てゲームモデルをつくるようなやり方はガンバ時代の影響が大いにありそうです。
 対してコンサドーレの守備はどのようなプランのもと進められたのか。開始2分弱でビハインドを背負うことになり、もしかすると用意していた策のほとんどを使わずに終えたのかもしれませんが、限りあるプレーから推測するに、やりたかったのは前節グランパス戦で自身がやられたようなことなのではないかと。前線から積極的なプレスをかけ、ショートパスのインターセプトを優先順位高く置き、顔を下げた相手の苦し紛れのロングパスを回収するという形を志向。現に、何度か上手く前線のインターセプトからショートカウンターに持ち込む形は見ることが出来ました。 

”自分たちの形”を求めるが故に

 お互いにやりたい形はあった中で、トリニータは”相手を見た上で組み立てられた方法”をとり、コンサドーレは”自分たちのやるべき行動”に終始したことが、それぞれの狙いに対して十分な結果が得られたか否かを分けたポイントかと思います。コンサドーレというチームも、改めてチャレンジャーとしてのメンタリティ、相手に合わせてやり方を変える(守備の開始位置を下げる、リトリートのタイミングを早めるなど)ような形もとっていき、チームとして勝利を目指す方法論を検討しても良いのかもしれません。
 ここまでは一昨日までの自分の感想。実は昨日、とある方とTwitter上でミシャについて意見交換をさせていただいたことで、ひとつ上記の内容に対しても違う気付きというか、違う可能性を考えるに至りました。
 というのも、ミシャを招聘すると決めたとき、コンサドーレというクラブは彼に何を求めたのか。勝者のメンタリティ、攻撃的なスタイルのDNAをコンサドーレに生むこと。ミシャの哲学とクラブが求めている未来像から逆算すると、この試合で早いタイミングからプレス開始位置を下げブロックを形成するやり方を取らなかったことにも意図があるような、そんな気がしてきました。その良し悪しは場合によりけりですが。今までにない哲学を染み込ませるために、必要なプロセスなのだと思いたいところです。

守備の判断基準は適正か

 とはいえやっぱり気になるのは、守備における個々の判断の質。奪うためのプレスか、遅らせながらリトリートするのか、個々の判断における基準が非常に曖昧です。これは、チームとしてのスタイルがどうであれ、合わせないと効果的な守備が回りません。
 動画は1対2の局面、宮澤が飛び込んで容易に突破されるシーンです。少なくとも2人の選手は視野の中にいるはずですので、数的不利時のプレー原則からすると、失点には繋がらなかったものの、判断に至る思考プロセスは疑問の残るところです。

ビルドアップの改善点

 前節において最も悔いの残るところとなったのは、ビルドアップにおいてチャレンジし続けられなかったことでした。芝のボールの進みもHOMEよりも格段に良く、止める、蹴るのところでも質を保つことは出来ませんでした。とはいえ、1週間で技術が急に向上することはなく。
 動画は、底からのビルドアップ、ソンユンから武蔵への中盤を飛ばしたフィードの場面。前節では山なりの球質のため空中戦に持ち込まれていたところ、低く速いボールに変えたことで、(ハンドにはなりましたが)背負いながらボールを収められそうな場面を作ることが出来ました。

芝とチャナの疲労感

 DAZN観戦していて気になったのは、芝のコンディション。中央ラインとペナルティエリア内が特に酷いことに。とはいえ、この天候でここまで維持できていることについて、管理者の皆様に感謝ですね。え、ラグビーワールドカップ…?おそろしいことです。
 チャナもなかなかパフォーマンスが上向きになってきません。連戦による疲労でしょうか。しかし、それでもできることはあるはず。チャナやアンロペ、ルーカスらドリブラーがボールを持ったときの周囲の位置取りと関与については改善の余地が多いにあります。守備側の警戒を分散させることでもっとボール保持者の自由度が高められるはずです。

ファンタジスタ懐かしいですよね。カルロ・グロッソが個人的には好きでした。

間接フリーキックにおける珍事

 相手のバックパス(味方からのパスをGKが手で処理してしまう)により得た間接フリーキック。どうしても、福森がシュートを放つなら何で武蔵が助走取ったのか意図が分からず……。ボールをいつ触るのかタイミング取れてしまうので、相手からしたらボールにプレスかけやすく、本来ならばフェイントのひとつやふたつ挟んで相手を困惑させるのも手なのですが。いまだにちょっとわからないプレーでした。

おまけ-ルヴァンカップHOME湘南ベルマーレ戦-

 久々の勝利に歓喜。リーグスタメン組を各所に配置する必勝の構え。ゴールシーンについてはハイライトを。それ以外にあったことを簡単に以下まとめていきます。

守備開始ラインを大分戦よりも下げる。先制後は更に。5-2-3の形。コンパクトを保ちながら後方スペースを狙いにくくし、ポジトラにおいて裏抜けできるスペースを確保。武蔵が解き放たれる。
・攻撃においては、大分戦でやられたことを実行。3バックの相手に対し、CBの外側へ裏抜け。サイドチェンジを伴う斜めのロングフィード。福森→檀崎のライン。
・ビルドアップにおいては大分戦よりもボランチ2人の役割と位置取りが固定的。宮澤がDFラインに落ち、金子が中に残る。まだ金子はローテーションの中に組み込めるほど戦術定着間に合っていないものと思われる。
・宮澤キャプテンのカバーリングスキルが光る。最終ラインだとカバー範囲が広くスピードが不足するケースも散見されたが、中盤の方が攻守ポリバレントに良さを発揮できそう。
・金子が攻守に躍動。ボランチの配置だが、流動の中でWB、シャドーにおいてもプレゼンスが発揮できる可能性を見せた。ユーティリティかつ基礎能力の高さは重宝しそう。
試合開始早々に早坂を削り激怒させる相手選手(警告取得)→その後もアフターチャージを繰り返し退場を匂わせるも前半途中で交代
・個の力で打開できてしまうポイントが複数存在。ルーカスはこのレベルだともはや卑怯の域。
・WBルーカス、CB早坂、ボランチ宮澤の組み合わせが良好。大外に張るルーカス、インナーラップする早坂、カバーする宮澤。

 抜け漏れありそうですが、詳しくはスカパーオンデマンドで。
 加えて、おすすめシーン抜粋しましたのでどうぞ。

 キャプテン裏抜けからの華麗なスルーパス。強引に行くかとも思いましたが、そういえばFW時代もこういうプレーやっていたことを思い出しました。

 菅ちゃんの危うい守備対応からのキャプテンナイスカバー。金子が上がってきたことでペナ周りに7人もいる。リスクマネジメントは大丈夫だったのだろうか……。

 リプレイには入ってなかったけれど、檀崎に訪れていたもうひとつの決定機。すでに1点とった後、ルーカスからのスーパースルーパス。

 この試合で一番好きなシーン。早坂お兄さんのインナーラップから小ダイアゴナルランで5バック崩し。もともとWBやシャドーできる選手なので、このあたりの感覚とタイミングも巧みです。

最後に

 ミシャ就任以来初の3連敗。鹿島・名古屋・大分と3試合で2得点9失点。コンサドーレのストロングポイントと思っていたものに対する疑心。
 そんな中、ターンオーバーを敷くかと思われたルヴァンカップに主力を数人起用し、しっかりと取るべき選手が点を取り勝ち切れたことには価値があります。明確な解決が得られたとは言えませんが、勝てたことで進められる一歩もあるかと思います。
 次戦は中2日でAWAYセレッソ大阪。ロティーナによるポジショナルプレーの落とし込みがどのくらい進んでいるのか、はたまた全然別軸のサッカーを展開するのか。それよりも、正直都倉ですね。彼をどのように止めるのか。見えないところでごりごりやってくることは今まで黙認していましたが、これからはとことん文句言ってやろうかと思います。
 ルヴァンに出てこなかった白井はスタメンかもしれません。ジェイの回復具合も気になりますが、出場可能であれば福森のセットプレーが蘇るかもしれません。伸びしろはまだまだありますね。
 個人的にも初めての大阪遠征、週末がとても楽しみです。


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