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【サッカー日本代表2019】森保一監督は今どこの山を登っているのか

 代表ウィークを終え、明日からまたJリーグが再開します。今回の代表には贔屓チームより鈴木武蔵選手が選出されたこともあり、普段の代表戦とは一風違った観戦スタイルを敷いていました。例えるなら愛する息子(いないけど)を応援する運動会観覧の親。熱も入るはずです。
 そして、コロンビア戦とボリビア戦を終え、まあ冷静になると思うのです。「この試合、結局何したかったんでしたっけ」と。
 アジアカップでカタールに完敗し、コパ・アメリカ出場に向けメンバーはもちろん、ベースとなる戦い方をそろそろこの2試合で固めていきたい。何せ、スケジュールを見ると、6月初旬の親善試合から同月中旬にはもうコパ・アメリカに向かわねばならないのです。

テーマなき試合、道は描けているのか

 毎度毎度、セルジオ越後氏は日本代表への愛を人一番持ちながらコメントを出してくれます。私はいまだ、セルジオ氏の本来の姿はかつてのアジアカップ、日本がゴールを決めたシーンで「やった~~~っ」ってはしゃいだところにあると思っています。しかめっ面に腕組んだプロフ写真でちゃんとサッカーしなさいと檄を飛ばすS氏は偽物です。

 そんなセルジオ氏ですが、今回のコロンビア戦後のレビュー記事の中に、以下のような文言が。

今回のテーマとして、FWの得点ということを持っていたのであれば、結果は出なかった。FWの特長を考えて呼んでいるのであれば、フィットするとは言い難い。得点力をテーマとしていたのであれば、鈴木武蔵より点を取っている伊藤翔を呼ぶべきだし、つまり、メンバー選考に根拠が見えないよ」(引用元:https://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20190323/920853.html)

 日本代表レベルの試合でFWの得点をテーマにって時代ではない。しかも得点だけでメンバー選考なんてしないだろう。そんな単細胞な怒りぷんぷんな投稿を私もしていましたが、これがそもそも誤読でありました。
 森保監督、メンバー発表会見で言ってたんですよね。テーマではないにせよ、期待として。

「(初招集の攻撃陣に)期待するところは得点。まずは得点を取ってもらいたいと思っているし、得点を奪う局面に絡んでほしいと思っている。
(引用元:https://web.gekisaka.jp/news/detail/?268742-268742-fl


 セルジオ越後氏は、上記の発言の中でも「~であれば」という言い方をしていました。彼がこういう言い方をするときは、大体が「だけど、そうじゃないよね」という結びに至ります。いろんな話題を挟みましたが、察するに氏はきっとこう言いたいのです。
 「この試合のテーマは何だったの?」「相変わらず、集客のための代表戦やってない?」
 森保一監督がどのようなゲームプランから逆算しメンバー選定を行ったのか、ここまでの代表活動の流れと会見からのコメントを思い出してみます。

会見にて森保監督の伝えたこと

 まずは、アジアカップ終了後会見。以下、聞いていて気になった点をピックアップしていきます。

・準優勝という結果は残念だったが、選手・スタッフともに最善の準備をした。その積み上げはこれからのチームの土台になる。
試合開始からミスマッチが起こる中、噛み合わせがうまくいかない序盤の時間帯で失点してしまって難しいゲームになった。
引かれた相手に対してこじ開ける連携、連動の精度を高めなければいけない
すべてを上げていかなければいけない。チームとしての連動・連携、個の力も上げていかなければいけない。

 そして、これがコロンビア&ボリビア戦メンバー選出時の会見。

・南米の強豪国相手に試合することで、日本の立ち位置や、通用すること、不足していることを感じたい。
・良い試合をすることで、上記の内容を日本のサッカーファミリーとして感じる機会にしたい(世代間融合、オールジャパンというキーワードを就任時に挙げた監督らしい発言)
・個人として、チームとして、試合の流れの中で最良の判断をするというところは、身に着けていかねばならないところ。
大迫頼みからの脱却大迫以外が出てもベストな戦い方を柔軟に出来るようなチャレンジを。鈴木武蔵は序盤ですがリーグで結果出している。札幌の中で裏への抜け出すスピード、起点になること、彼の良さを出してプレー出来ている。代表でもチームのコンセプトの中で、思い切って自分のプレーを出来るように働きかけしていく。

 おそらくは、アジアカップの戦いの中でチームの土台となる部分は見えてきている。しかし、大迫という替えの利かないプレゼンスを持つ選手を欠く中で、新たに別の選手を当てはめても機能するようにチャレンジしたい。武蔵の良さを活かすということについては、事前準備から関与していくと明言しています。
 そして、一貫して目指すのは、柔軟性のある戦い。この柔軟性という言葉は非常に厄介で、ベースになるプレー原則のインプットがないと柔軟が過ぎて芯の無いチームが出来上がります。ここに対しては、監督の手腕が問われるところです。
 そして、アジアカップ決勝戦の敗戦を通し、守備はその柔軟な対応(噛み合わせの修正など)、攻撃は引かれた相手への連携の精度を課題として捉えているように思えます。

 ではここで、いきなりコロンビア戦後の会見内容を見てみます。

「崩してペナルティーエリアの中に入れなかったという部分はあったと思うので、そこはより確実に得点チャンスを演出できるようにチームとしてレベルアップしないといけない。中央の守備はコロンビアも堅かったと思うので、クロスから得点チャンスにもっとつながってもよかったと思う。サイドからの攻撃でクロスにどこに入っていくかというのをやっていければ、もっとシュートに持っていけたと思う。中央からの突破も含めて、サイドから突破できたときにも中でしっかり合わせていけるようにチームとして共通理解を持って攻撃ができればと思う」(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190323-41358565-gekisaka-socc)

 ええ、そうです。程度は違えど、カタール戦後の会見と攻撃において同種の課題です。しかも、”中央がだめならサイドから”という初期段階の打ち手が取れていなかったということでした。果たして、練習で何を試していたのでしょうか。

つまり、どういうことなのか?

 基本的に、森保監督は会見で多くを語りません。結構な文量をこしらえてくれるのですが、具体的なところにはほとんど踏み込みません。「具体的には……?」という記者の重ねた質問にも回答の具体性はあまり増えません。柔軟性という言葉の解釈についても、試合の場でアウトプットされたものを頼るしかないような、そんな感じです。誰がタクトを握り、判断基準をどう定めていくのか。就任時会見で2018ワールドカップにおけるフランス代表を倣う例に出した森保監督ですので、きっとシステマティックでスピーディに判断が伝播するチームを志向することでしょう。
 そして、「すべてを上げていかないといけないと思います」。就任会見でも、そしてアジアカップ後の会見でもこの文言を用いていますが、「すべて……?」という疑問をこのマネージャーに対して抱くことは決しておかしなことではないと思います。敢えて使っているとは思いますが、それにしても有能感が薄れる回答です。
 とはいえ、スタッフも選手も、会見で多くを語り過ぎる必要はもちろんありません。むしろ、チームの中で共有されている情報こそ本物です。ブラフもあるでしょうし、実際に練習を同じくやっていく中で具体性を帯びてくるものも多いかと思います。

監督は情報発信によって何を実現するのか。

 会見において監督が質疑応答の時間を設けるのは、様々な理由から成り立つ伝統です。メディアを通し発信をすることで、大衆の代表戦への関心を増す。スポンサー露出。選手へのメッセージ。各世代に向け、A代表の方向性共有。他にもいろいろあるかと思います。森保監督は、選出外になった選手へのメッセージを、具体名上げなくとも差し込む傾向にあります。
 ただやはり、森保一監督は東京五輪世代U-22も兼任しています。世代間融合をすぐにでもやっていかなければならないとなると、会見の機会でも試合でも、軸となるイメージやビジョンをもっと伝えていく必要はあります。これは、普段からミシャや鬼木監督、風間監督に触れているとなおさら感じます。
 U-22は3-4-2-1、A代表は4-2-3-1兼務のチームで配置も課されるタスクも異なる、ある種選手ファーストの森保監督らしいアウトプットになっていますが、融合に向けた最終回答を用意しているのか、非常に気になるところです。

あなたは私を怒らせた。

 秋田豊氏のこの記事については言わずもがなですが、監督会見や現状を鑑みるに、監督は大迫探しに徹してはいなかった。要所で組み合わせは最悪に近い形でしたが、武蔵と鎌田を選出したのが一番のメッセージでした。メディアを通しての発信としては、御粗末と言わざるを得ません。新戦力に落第を与えるにしても、少なくとも、表現を変えるべきでした。
 個人的には、武蔵にパスが出てこなかったことについて、個々の選手の技量であったり判断をとやかく言う気はありません。それよりも、チームとしての課題を結局前進させられなかったチームビルディングにこそ、問題があるように思えます。ボールを握ると言いながら足元の不得意な東口の起用にはじまり、香川起用時の武蔵不在など、特徴を生かした組合せの妙を感じさせてくれない、大迫の次は中島への依存がただただ増しただけの試合となりました。

最後に

 冒頭にもあげましたが、コパアメリカまでに使える時間はもうほとんどありません。アンダー世代から、久保や三好を上げるアイディアが記事になっていましたが、来てみたら全然別のチーム、というのはあまりに無策。結果この2人ならうまくマッチしそうという思いもありますが、代表チームがここまでちぐはぐなのも珍しい。森保監督が、いったいどこまでの人に自分の登ろうとする山と、その登り方を伝えているのか(あるいはそもそも見えているのか)、コパに武蔵が招集されるのならばなおさら、興味が尽きないところです。

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