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卒業記念の日時計

  小学校の駐車場の脇に大きな木、その根元にボクの腰くらいの高さの、コンクリでできた正方体の台座付き、立派な日時計が置かれていました。
 
 台座の前面に『卒業記念 贈呈品』とかすれて読めます。

 残念なことに台座は大きく傾いていて、大きな木の下だから日光も当たらない、日時計本来の役割ははたしていませんでした。

台座の下には元あった場所の地面のコンクリートごと掘り起こされた跡が残って、『移設』でなくて、棄てるわけにもいかない記念品、困った故の『放置』なのかも。
 おそらく、日時計として復活できる日は来ない…

 ☆ ☆ ☆

バイト先で子供達の宿題をみていた時。

 漢字の宿題、分厚い辞典を引きながら書き写している子がいました。
 一つ引くのにも、ずいぶん時間がかかってます。
 「スマホ使ってもいい?」
あっという間に宿題を終わらせてしまいました。

  製本された辞書なんて、自分が最後にいつ使ったか、すっかり思い出せません。
 たぶん、バリの友人へ手紙を書くためのインドネシア語辞典が最後、10年以上前です。
 今は、翻訳アプリが充実していますから。
  もし辞典を使うとしたら、それが家の何処にあるか探すところからです。

  小学校の日時計の放置、とやかく言える身分ではありませんね。

 子供達の宿題プリントは、他に時計の文字盤を読むモノ、描かれた数枚の硬貨の金額を答えるモノなど。

  そんなに遠くない将来、アナログの時計も過去の遺品になり、デジタルが主流、24時間表示が当たり前になって
「AM.PMって何?」
なんて時代になりそうです。

アナログ時計の見方を知っている
=日時計の見方を知っている

程度に。

 道に迷って、アナログ腕時計の短針を太陽に向け、12との真ん中で
「南はこっちやなぁ」
なんてしなくても、スマホがあれば方角どころか、地図や現在地まで表れます。

  お金だって、キャッシュレスが一気に進めば、硬貨を使う機会なんて無くなってしまうかもしれません。

 最近、ダイヤル式の電話を使えない子が多いと聞きます。
 でも、今さらダイヤル式の電話のかけ方を、子供達に教える必要はないでしょう。

 子供達の宿題をみて、辞書を引く作業、アナログ時計の見方や硬貨の数え方等、まだまだ昔ながらに教えているけれど、今の子供達に必ず教えなければならない技術なのか?宿題として必須なのか?疑問です。

  こんな宿題させる時間があるなら、マインスイーパさせといた方が、よっぽどエエんとちゃうん?と思ってしまうのです。

☆ ☆ ☆

 とはいえ、使わなくなったからって、『もうイラン』と棄てられると、その時代を生きてた者にとっては、かなり寂しく切ないこと。
 置いておいてくれていても『放置』ではなくて『遺産』で置いておいて欲しいと願っています。

  先の日時計も(もちろん、日時計で生活していたわけではないけれど)せめて、ちゃんと時刻が分かるように日の当たる場所に設置してあげて欲しいです。
 

  で、ボクも、せっかく思い出したので、家の何処かに埋もれているインドネシア語辞典を探しだして、本棚の一角にちゃんと並べておこうと思います。

 たぶん、もう使わないけど。


 
 

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