⑬【小説】 さくら坂のほのかちゃん 5年後、3月18日 ほのパパのFACEBOOKより
5年後、3月18日 ほのパパのFACEBOOKより
(添付されているのは、女の子の片目だけ大きく映した画像が一枚)
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小6の長女は「つけまつ毛」をしていた頃がありました。
ちょうど、きゃりーぱみゅぱみゅが「つけまつける」をリリースした頃です。
小学校にも、付けて行っていました。
自分の事がうまく表現できない等、障害を持つウチの娘は、当時ストレスからか、まつ毛や眉毛を、自分で引っこ抜くようになってしまっておりました。
眉毛などが無いと、とても人相が悪くなってしまいます。
眉毛の方は、眉墨で描けば等と、色々策を施し、本人もマジックで塗ったりしてイモトさんのようになったりしていました。
眉毛を抜く方はさすがに痛いのか、すぐに治まりましたが、まつ毛を抜くのが一向に治まりませんでした。
そこで妻が提案したのが「つけまつ毛」
さっそく先生から同級生の子達に説明してもらい、学校ぐるみで娘の「つけまつ毛」を受け入れてくれることになりました。
娘は「つけまつ毛」が気に入ったようで、「つけまつ毛」を気にしてよく触りはしますが本来のまつ毛は抜かなくなりました。
娘の「つけまつ毛」をやっかんだり、からかって馬鹿にしたりする子は誰もいません。
みんなが協力してくれました。
自分の事のように楽しんでいる友達も、たくさんいました。
やがて、「つけまつ毛」作戦が功を奏して、本来のまつ毛が生え揃ってきました。
さて、今度はどうして「つけまつ毛」を止めさせようかと思案していた昨年の夏、突然娘は「つけまつ毛」をしなくなりました。
きっと、同級生の誰かがプールではずす時かに、しなくてもかわいい!とか、褒めてくれたのではないかと想像しています。
同級生の皆にとって、娘がクラスにいるのは当たり前の事、とても自然に接してくれています。
そんな彼らの姿に、何度も何度も、勇気と元気をもらいました。
同級生の皆にも、娘もいた6年間が、将来きっとプラスになると信じています。
彼らが成長して子供を育てる立場になった頃、娘の「つけまつ毛」のような事は、日本中どこでも耳にする珍しくもない当たり前の話、となっていて欲しいと思います。
秋の運動会の組体操、足手まといにはなっていますが、娘もちゃんと演技の一員になっていました。
涙が止まりませんでした。
修学旅行も、皆と楽しそうにしている娘の写真がいっぱいあります。
娘にとって幸せな6年間でした。
感謝の気持ちでいっぱいです。
明日、娘の卒業式です。
ハンカチだけでは心もとないので、吸水性抜群の「エアーかおるタオル」を持って参列しようと思っています。
(おしまい)
このお話はフィクションで、登場する人物、団体は、実在のものとは、一切関係がございません。
【引用歌詞】
★大塚愛作詞 「クムリウタ」「LOVE PiECE」
★林柳波作詞「ウミ」
★藤浦洸作詞「ラジオ体操の歌」
★作者不明「ハッピーバースデートゥーユー 」