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桔梗の形をした盛り塩

 「角砂糖はありますけれど
『角塩』って無いじゃないですか…」

 営業に来た青年は熱心に説明してくれました。
 

 約20年前、雑貨卸会社で勤めていた頃、仕入先と商談していた時の話です。

 
 その青年の勤める会社は、昔ながらの引き出物『祝鯛』等、贈答品の砂糖を主力とする卸会社、でも、その会社からは砂糖でなくカラータオル、パイナップル、メロン、リンゴ等の形にして、果物を販売するような段ボールに納めた、かわいいタオルセットを仕入れていました。
 ホワイトデー用に仕入れたそのタオルが好調で、そのまま夏に向けて展開するお店もありました。

 彼は、社長の鶴の一声で設置された、新しいギフトアイテムを開発する部署に所属しており、旧態依然とした砂糖問屋の中では異端児扱い、営業先の開発も担っていて、砂糖以外の新たな販路もでき、ようやく果物タオルだけでも商売になってきたのに、未だに社内に居場所が無いとぼやいていました。

 その日、彼が持ってきた商品
『盛り塩』は、塩を桔梗の形に固めた、見た目、落雁のよう。
(画像はホンマもんの落雁です、当時の画像がなくてすみません)

 岩塩を削るのでなく、塩を固形にするには高度な技術が必要、更にその桔梗が『盛り塩』として有効にするため、デザインを有名な風水師(聞いたこと無かったけど)が手掛けている…

 彼は熱心に語るけれど。さて。

 『風水師』と聞いた時、店頭での催しを探していたお店が閃いたので、

 いきなり『盛り塩』を並べても難しい、風水師の『風水占い』と『盛り塩』販売をセットにした催事提案からなら営業できるかもしれん。

と伝えると、彼はその場でさっさと風水師に連絡し始め、ボクも彼の熱に負けて、その閃いたお店に電話を入れ、トントンと『風水&盛り塩』催事が決まったのでした。

 結果『風水占い』はそこそこ好評でしたが『盛り塩』は占いを受けた人が購入しただけで、店頭販売はいまいちでした。

 今更ですが、考えてみれば、知り合いにいつも『盛り塩』をしている人はいないし、芦田愛菜ちゃんもやってる!とかで『盛り塩』がブームに乗らないと、需要はあがりません。
 逆に『盛り塩』を常にしている人は、塩をちゃんと山型に積み上げるはず。


 一年ほどして、新しい営業の方から、彼の退社を知りました。
 退社の理由は聞きませんでしたが、彼の事だから、きっと新しいチャレンジのための退社のはず。

 桔梗の『盛り塩』のせいではないと信じています…


 会社名を覚えてましたので、その会社のHPを検索してみました。
 残念ながら商品カタログに『盛り塩』は載っていませんでした。

(商品として、風水師が監修したハートの形のかわいい盛り塩は、他で出回っていました)


 

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