何回も繰り返し観たい映画がある。
先日、久しぶりに『グリーンマイル』を見て、「やっぱいいわあ~」としみじみ思ったわけだけど、もう1つ観たかったのが、これまた名作の『サウンドオブミュージック』。
1965年に公開された、オーストリアを舞台にしたアメリカ映画。
私が初めて観たのは、大学の英語の授業だった。
ずいぶん昔の映画だなとぼんやり観ていたら、「ん?これ聞いたことある歌だ。あ、これも知っている。え?」という具合で、歌に導かれるようにいつのまにか夢中で観ていた。
私が生まれるより20年以上も前の映画。
主人公が思い付きのように歌い出すドレミの歌は、私が物心ついた頃には童謡の代表曲のような存在になっていて、始めから童謡として作られた曲だと思っていたほどだった。
他にも「え、これこの映画の曲だったの?」と思うような曲がいくつもあるので、それはぜひ映画をみて発見してほしい。
初めて観た日を含めれば、今回がたぶん5回目くらいになる。
主人公・マリアの明るく朗らかで、愛に溢れた可愛らしさは、何回観ても、時代が変わっても、私の年齢が変わっても、変わらず魅力的に映る。
ただ、大学の頃は長女(16)の恋愛を「切ないな~難しいな~」と思っていたのが、いつのまにか「楽しそうね~可愛いな~でもそんな男はやめとき!次々!」と母親目線になっていたのが、じわりと面白かった。
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映画に限らず、同じ作品を間をあけながらも繰り返し観ていると、しばしばこういうことが起こる。
おおざっぱにいえば、自分の年齢に近い登場人物の気持ちが身近に思えるようになるのだ。
若い頃は若い子の気持ちがよくわかり、それをとりまく大人の言動が面白くないな~と思っていたりしたけれど、自分が大人になると、若い子の気持ちの理解しつつ、昔は理解できなかった人たちの言動がわかるようになったり、共感できるようになったり。
ストーリー上は問題無いんだけど、「なんで今この表情?なんでいまこれ言った?」とぼんやり疑問に思っていたシーンも、年齢が変わったり、経験が増えたりすることで、ある日、「ああ、きっとこういうことか」とストンと自分のなかで腑に落ちるような瞬間がある。
現代は、一生かけても見尽くすことができないほどめちゃくちゃコンテンツが多くて、さらにはタイパ優先で倍速再生をする見方も生まれるなか、同じ作品を何度も観るという人は減ってきているのかもしれない。
ただ、同じ作品を繰り返し観ることにも、それなりの楽しみ方はきっとあるんだよね。
少なくとも私はそう。
時間がいくらあっても足りないくらい魅力的な作品は生まれるし、追いつけないくらい人におすすめしてもらう作品もあるけれど、そんな幸せな時代でも、何回も繰り返し観たいと思える作品に1つでも出会えたら、それはとびきり幸せなことだと思う。
私はたぶん死ぬまでに『グリーンマイル』も『サウンドオブミュージック』ももう1回は観ると思う。
他にもまた観たい作品もたくさんある。
でも、新しく観たい作品もたくさんたくさんある。
「観たい」という欲求だけで、生きる理由になる。
どうせいつかは必ず死ぬけど、ちょっとまだまだ観たいものがたくさんあるので、死ぬわけにはいかない。
生きる意味とか理由とかって、そういうシンプルなことでもいいと思う。