note小説 三十路のオレ、がん患者 第22回 末梢神経障害
引き続き、抗がん剤治療。
世間で抗がん剤と言えば、脱毛と吐き気だろう。
そして、死の間際。
残念ながら今やっている抗がん剤に関して言えば、これらは当てはまらない。
脱毛も吐き気もない。
当然ながら死の間際にいる実感もない。
テレビで見る抗がん剤で痩せ細って髪の毛のない状態の芸能人のイメージがあるかもしれないが、オレの場合はそんな事ない。
まるで快適に思われるかもしれないが、それも違う。
副作用がゼロではない。
脱毛や吐き気の代償に手足の痺れ、喉の違和感がある。
喉の違和感は点滴をしてから1週間くらいで消える。
その後の2週間は通常の食生活を過ごせる。
いつの間にか初夏になっていた。
手術を受ける時に咲き誇っていた桜も今は青い葉を付けてる。
菜の花はどこかに行ってしまったのかのようだ。
近頃は温暖化のせいか、春と秋が短く感じる。
中学の時に習った温暖湿潤気候から亜熱帯化してるのではないだろうか、日本は。
空模様も初夏とは言え、夏本番さながらの入道雲も見える。
そんな移ろう季節にも疎くなっていたが、自分の身体の変化にはもっと疎くなっていた。
最初は数日で抜けていた手足の痺れが次第に抜けなくなって来ていた。
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