モモ効果
学会やワークショップに出ると、なぜかその後、相手の話がよく聴けたり、カウンセリングがうまくなったような気がしたりする。僕と同僚は勝手に「学会効果」と呼んでいる。
ただ、その効果は大体1週間前後でなくなる。効果が消えた後は、また元の状態に戻るのか、あるいは何かが身に付いて、意識しなくてもカウンセラーとしての力がアップしてるのか、それは分からない。後者だといいけど、確認のしようがない。
で、話は変わるけど、最近、『モモ』を読み返している。ミヒャエル・エンデの有名な童話だ。読み返してるといっても、まだ1度も最後まで読み終えたことはない。
子どもが小さいころ、寝る前に絵本を読み聞かせていた。ある程度大きくなった頃、そろそろいいんじゃないかと思って『モモ』を読み始めた。しかし、いつもなら目を輝かせてなかなか寝ない子どもたちが、『モモ』を読み始めると一瞬で寝た。寝かしつける意味では最強の本だが、すぐ寝るのでなかなか読み進まない。仕方なく、そのまま1人で少しだけ読み進めていた。
そんなことなので、長い期間かけて途切れ途切れに読んで、最初の頃の話は忘れ、全体が分からなくなったので、今回、改めて最初から読み直すことにした。
「時間泥棒」というテーマにすごく関心があるけれど、今回読み返してみると、モモが素晴らしく聴き上手な人であることがとても印象的だった。
モモは、人にいい考えを教えてあげられたわけでも、歌や楽器が上手で、人の心を朗らかにしたわけでも、魔法が使えて占いや予言が出来たわけでもない。
「小さなモモにできたこと、それはほかでもありません、あいての話を聞くことでした。」
モモに話を聞いてもらっていると、きゅうにまともな考えが浮かんできたり、自分の意志がはっきりしてきたり、勇気や希望が湧いてきたり、自分を大切に思えたりする。ケンカしてた人同士は仲直りし、子ども達は面白い遊びを思いつく。
これって、カウンセリングの理想的なあり方だなと思う。いろんな技法や理論があるけれど、基本的にはこういうことだ。そうなれたら一番いい。原点であり、最終地点でもある。
まだ読み終えてはいないけど、今日からのカウンセリング、休み明けでリフレッシュしただけではない感覚がある。ただ聴こう、とシンプルに思える。心なしかうまく聴けている気がする。学会効果ならぬ“モモ効果”だな。
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