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この何気ない日常にたどりついて

開業届けを出すまでの5年間、見習いというか居候というか、ある種の主夫とも言うべき時間を過ごす。

32の時に勤め先が無くなり、ここぞとばかりに農業への道に舵を切った。

婚約者のおなかには子どもがいた、開業資金も計画もなしに家業が農家の彼女の実家にお世話になる事に、今思えばとんでもなく迷惑な義息子。

この期間で何を身につけたかと言ったら、ひとつは自分本位な振る舞いにまず気づけと、ある種の事柄がたくさん起きて、これでもか、これでもか、と。

それに向き合い、堪忍する様に膝をついてから、家族や関係する人たちとのバランスを保つ気配りを学んだ事が資金や計画より起業する上で大事だった。

ただ、完璧にそれが出来ていた訳ではないので、個性というのは厄介だ。

次に思い浮かぶのはやはり最後の研修先の寺坂祐一さん、ご本人が経営の難しさに直面しながら超えてきた数々の知恵をたくさん学んだ、人を幸せにする、まず最初に奥さんを幸せにする、ポジティブシンキング等、農園でのノウハウもおそらく何百何千と改善した技術だったのを肌で感じざるを得ないものだった。

私がミニトマトで農家を始めると打ち明けると、メロン栽培に使うハウス一部をぽーんと与えて下さった、すごく嬉しかった当時の感情が甦る、人を幸せにするって正にこの事かな。

寺坂さんの信用ありきで同地区内に農地を借りる事ができた事で、鳴かず飛ばずで「おれ、だめなんじゃないか」と思っていた人間が農家に。

もう一つ。

自分本位な個性的な私に公私問わず、ずーっと関わってくださった人達がいて、本当に私の心の拠り所的存在に助けられ、堕ちずに済んだ事だろうか。

今年は農家の道を志して15年目の年、未だその先に進めば進む程良いことも悪いことも起きるのが常だが、まだまだ後悔せずに生きていきたい。

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