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災害対策の取り組み事例

災害は企業にさまざまなリスクをおよぼします。しかしながら、事前に災害によるリスクを理解し対策を行うことで回避できる場合もあります。そのために、日本の企業が実際に行っている災害対策の例を以下にて紹介致します。

①従業員へ勉強会を開催

企業の防災対策の問題点を資料で配布し、アンケートなどを通して従業員の防災対策に対する意識の向上を図る狙いで、勉強会を開催しています。また、資料を提供し、集団的地震対策について比較的進んだ取り組みをしている企業の事例を紹介しています。

アンケートでは、防災対策に対するノウハウや知識、対策を検討する時間がなく、対応策がないと回答した意見が多くみられました。このように災害対応への取り組みの進んだ企業の事例を学ぶことは、災害リスクを理解するために役立ちます。

②BCP策定で防災と事業継続を強化

食品水産加工事業者の株式会社白謙蒲鉾店では、2011年の東日本大震災で被災した経験から事業継続活動の強化を図っています。従業員の6割が被災した経験から、2013年より人命を第一とした、BCP策定をスタートさせました。単なる事業優先ではなく、安全を配慮したうえで最善をつくすことに取り組んでいます。多岐にわたる訓練を日頃から行っており、2022年度の訓練は計182回に及んでいます。

従業員にどのように行動するべきかを主体性を持って考えてもらうことによって、従業員の意識を高めることに成功しています。結果的に、事前対策を講じることができる会社へ成長することに成功しています。

③代替品の準備で事業を継続

小熊建設株式会社は、窓ガラスや屋根が飛んでしまい復旧する際に頼む先として選んで貰えることを目標にしています。社長就任時には防災マニュアルもない、ゼロベースからのスタートでした。現在では、中小企業庁配布の提供するテンプレートのBCP策定から実業の実態に即した経営戦略としての、BCP策定に切り替え構築しています。

BCPとして、ガラスは発注後入荷までに日数がかかるので、応急処置としてダンボール・ベニヤ板をガラスの代わりとして貼り付けます。このように、窓ガラスの機能を代替品で用意し、お客様の要望にその日中に対応することを可能にしました。災害時は即座に完全な回復をすることは不可能ですが、このような状況を想定してベニヤ板やダンボールの在庫を多めに保持していたのです。結果的に、一時対応を迅速にすることでお客様の満足度を高めることに成功しました。

④自家発電機器で停電対策

沢根スプリング株式会社では、直前に停電を想定した訓練が功を奏し必要最低限の業務を継続することに成功しています。同社は以前から、防災マニュアルを作成し防災訓練を実施していましたが、東日本大震災を目の当たりにしてBCPを策定しました。

同社は経営理念として「会社を永続させる」を掲げており、この理念に基づきBCPが策定されています。

停電時に備えた切替え手順書を用意していたことが功を奏し、定番の在庫品や小ロットの手作り品については停電時にも、自家発電機の利用によってパソコンから受注を受けれる環境を整えています。

⑤自主的に防災訓練を実施

自主的に、防災訓練を実施することによって、防災対策を強化することが可能です。

さまざまな自然災害別にマニュアルを作成したり、企業のある地域の特色も考慮して作成するとよいでしょう。また、自社だけで防災訓練を実施するのでなく、防災関連企業を招いてプロ目線でのアドバイスを受けるとより、精度の高い防災訓練を実施することが可能です。

⑥災害時に安全な建物や街の建設

災害大国の日本にとって安心・安全が最重要テーマとする森ビルのプロジェクトで、災害時に逃げだす街から逃げ込める街への転換を提言し、実行されています。都市基盤設備の代表事例である六本木ヒルズは、民間では最大の市街地開発事業として、整備されました。災害時には、5000人の帰宅困難者の受け入れができるよう想定し、最大規模の備蓄品を備えています。

また、定期的に総合防災訓練が実施されており、地域の防災拠点として機能しています。

⑦情報をクラウドで共有

イオングループでは、災害発生時にグループ各社の連携をより一層強化できるよう情報インフラを整備しています。災害発生直後の通信状況でも問題なく通信サービスを利用するために、インターネットを経由したITツールを利用しています。

今後、安否確認システムとイオンBCM総合集約システムはより簡素化された、イオン災害報告システムへ切替えが行われる予定です。グループ内でシステムを共有することで、一元管理していく予定です。

⑧バックアップを二重にして対策

東北を中心に約20店舗を出店するスーパーのマイヤでは、震災前は営業データは、本社だけに保存していました。同社はこの営業データから販売計画を立てていたため、震災でこのデータが消えてしまい、震災後に店舗を再開する際に販売計画の立案は容易ではありませんでした。しかしながら、東日本大震災を教訓にして内陸部にバックアップサーバーを設置することでデータを二重化しています。

将来に災害発生に直面してもこのバックアップを二重化することで、事業継続計画が以前より強化されているため迅速な復旧が可能です。

⑨地域に向けてイベントを実施

株式会社東京ガスは、企業と地域で連携して防災フェアを実施しました。

公益性の高いライフライン事業者の防災活動には、地域との協力や連携が不可欠であるとの考えから、2005年より地域住民と一体となり防災イベントを開催しています。内容としては、移動式ガス発生装置による炊き出しや、マイコンメーターの復帰操作訓練などです。

実際の災害を想定した訓練は地域住民にとって有益な知識と経験になるため、積極的な開催は地域の防災対策にも貢献しています。

⑩他の企業と連携して情報共有

広島県ケーブルテレビ連絡協会とNHK広島拠点放送局との防災における連携協定では、災害発生時や緊急時に映像や情報の共有を行っています。

これには、広島県での災害発生時によって多くの人の生命と暮らしを守るために、情報を伝えることを目的としてあります。地域に特化したケーブルテレビ局との提携によって迅速な情報提供が可能となりました。

なぜ日本企業に災害対策が求められるのか

日本は、災害大国で多くの自然災害のリスクが存在します。つまり、日本企業はできる限り災害の脅威に備えておく必要があります。

以下では、なぜ企業に災害対策が求められるのかという理由を、詳しく解説致します。

地震が多い環境であるため

日本は特に、地震による被害が多い国です。2022年の震度1以上の地震発生回数は、1,964回でした。そして、2011年には東日本大震災が、2016年には熊本地震が発生致しました。加えて、大地震が起きると余震や津波などが起こり、東日本大震災の時には関東の湾岸地域を中心に液状化現象も発生しました。

また、政府の見解では首都直下地震が30年以内に70%程度の確率で発生すると予測されています。このような背景もあり、国内全体で防災や安全配慮義務への意識が高まっています。

異常気象が多発しているため

近年では、地球温暖化の影響もあり多くの異常気象が見受けられます。この異常気象とは、今までとかけ離れた気温・気候が確認されることで日本の気象庁では、過去30年以上観測されなかったほど著しい値を示した場合と定義しています。

例えば、日本では近年の夏は異常なほどに猛暑日が続いたり、台風や豪雨の頻度が高くなりました。加えて、線状降水帯が相次いで発生したことによる、川の氾濫や土砂災害などの水害での被害も近年多発しています。

業務を早期復旧するため

災害発生時に、企業がリスク管理をしておらず災害への備えが不十分だった場合には、事業の復旧が大幅に遅れることになります。

企業にとって事業が迅速に復旧できないと取引先や顧客からの信頼を失う可能性があります。そのため、企業の事業継続を考慮し日頃から災害発生時のリスクについて具体的に考え、適切な災害対策を講じることが重要です。

災害発生時に、どのような優先度で業務復旧していくのかのチェックリストをあらかじめ作成することも、早期復旧のための対策になります。

災害ボランティア活動とは?

災害ボランティアでできること

災害ボランティア活動とは、地震や水害、火山噴火などの大規模な災害が発生した際、被災地のために見返りを求めず自発的に行う、復旧・復興のための支援活動のことです。 災害ボランティア活動でできることとしては、家屋の片付けや炊き出し等の直接的な復旧支援だけでなく、被災者の活力を取り戻すための交流機会作りや被災者への寄り添いなど、被災した地域や住民が、1日でも早く元の生活に戻るお手伝いをすることを目的とし、被災者のニーズに対応した活動を行います。

災害ボランティア活動の種類

災害時には全国から「被災者、被災地のために手助けをしたい」とボランティアが集まってきます。災害の種類や、活動の実施時期によって支援ニーズは変化するため、災害ボランティアの活動内容も多岐にわたります。力仕事から、人と人との交流を主にする活動、現地に行かなくてもできる支援まで様々です。また、そういった支援は災害直後だけでなく、長期間にわたって行われます。

活動例

・がれきの撤去や分別
・泥だし、室内清掃
・引越しの手伝い
・炊き出し
・災害ボランティアセンター運営の手伝い
・被災者の言葉に耳を傾ける傾聴活動
・心のケアのお手伝い

災害ボランティアの種類① 力に自信がなくてもできること

災害ボランティアといえば、がれきの撤去など力作業が中心かと思われがちですが、力に自信がなくても行える災害ボランティア活動もあります。自分にとって無理なくできることを探してみましょう。

活動例

・写真洗浄
・避難所運営補助
・炊き出し
・子どもと遊ぶ
・被災者の言葉に耳を傾ける傾聴活動

災害ボランティアの種類② 現地に行かなくてもできること

実際に現地に行かなくてもできることとして、支援を送るという災害ボランティア活動もあります。

活動例

・支援金(災害支援をしている団体に届く寄付)
・義援金(被災された方に平等に届く寄付)
・支援物資を送る

支援物資を送る場合は、被災地の状況や現地の方の気持ちになって、本当に必要なものを必要な量だけ送ることが重要です。

災害ボランティア活動の心得や注意点

心得・注意点その① 災害ボランティアに参加する前は情報収集が重要

災害ボランティアを行う前に、知っておきたい心得や注意点をご紹介します。 災害が発生したら、すぐにでも被災地へ向かいたいと思うかもしれませんが、現地の負担を減らすためにも、まずは被災地の状況を確認することが重要です。 事前の情報収集として確認すべきポイントを挙げていきます

1つ目は自分たちがボランティアとして現在受け入れてもらえる状況なのかを確認すること。発災後は緊急期、復旧期、復興期とフェーズが変わっていきますが、緊急期は発災直後の人命救助を行っている段階です。一般ボランティアの受け入れが始まるのは復旧期に入ってからになります。そのころには災害ボランティアセンターにより、被災地ニーズの把握とボランティアのマッチング体制が整ってきますので、事前に確認してから出発時期を検討しましょう。

2つ目は募集要件をこまめにチェックすること。 一般のボランティアの受け入れが始まったら、誰でも参加できるのかというとそうではありません。募集地域が限られていたり、特別な技術をもったボランティアが対象の場合もあります。それらの募集条件は状況により変わることがよくあるので、定期的に確認することをおすすめします。

情報収集のやり方

正確な情報収集を行う方法として、発災後には、被災地の市区町村や社会福祉協議会、またはそこで立ち上がった災害ボランティアセンタ-などのホームページを確認するようにしましょう。これらの情報は、facebookなどのSNSを利用して公開されているところも多く見られます(SNSやウェブサイトには古い情報も存在します。必ず最新の情報かどうか確認してください)。 また被災地の自治体へ直接電話をすることは避けましょう。職員の方は様々な緊急対応を行っているため、電話での問い合わせへの対応に時間を割かなければならなくなり、手が回らなくなってしまう可能性があります。

心得・注意点その② 災害ボランティア活動中に注意すべきこと

ケガや熱中症に注意

災害ボランティア活動では、安全第一、怪我の防止、体調管理に注意しましょう。 災害ボランティアで特に多いのが熱中症です。ボランティア活動の現場では、ついつい一生懸命になりすぎて無理をしてしまうことがあります。慣れない作業や環境、装備により、体調を崩すこともあります。体調不良を起こすと自分のからだに負担がかかることはもちろんのこと、全体の活動の停止、現地の医療機関の負担を増やす事態にもつながります。こまめに水分・塩分補給をする、一定時間毎に必ず休憩をとるなど、いつも以上に配慮が必要です。

被災者の気持ちを考えて活動すべきと心得る

実際に災害ボランティアに入った場合、依頼者含め被災された方々の気持ちを想像して活動することはとても大切です。

「ボランティアをしてあげている」という気持ちではなく、活動を通して様々な経験や学びをもらえるという、謙虚な姿勢を心掛けましょう。また、活動後に一緒に活動したメンバーと集合写真などを撮りたくなるかもしれません。もちろん依頼者も様々で、気に留めない方もいると思います。しかし、人によっては、悪い印象を与えてしまう可能性があるということを、心に留めておいてください。それでも写真を撮る必要がある場合は、必ず住民に確認をとることを心掛けましょう。 同様に、被災家財の扱い方なども気を付けましょう。ボランティアからみると「もう使えないもの」であったり「災害ごみ」に見えるかもしれません。しかし、住民にとっては、とても大切な「思い出の詰まったもの」であるかもしれないのです。必ず丁寧に扱い、勝手に廃棄するようなことはしないでください。住民の方に確認して、判断をしてもらいましょう。

心得・注意点その③ 災害ボランティア活動後に振り返りを行おう

災害ボランティア活動では、事前の健康チェックや活動中の体調管理だけでなく、活動後のボランティア自身の心のケアも重要になります。災害ボランティア活動後には「惨事ストレス」と呼ばれる体調不良など思わぬ症状を発症することがあります。 代表的な例だと、興奮状態が続いて寝付けない、頭痛、イライラや無力感、現場のことを思い出しフラッシュバックが起こる、活動のことを人に話したくない、現地の情報に触れたくない、孤立感にとらわれる…など様々です。 これらは、心と体が回復しようとするときに誰にでも起こる正常な反応です。まずはゆっくり休みましょう。その日感じたこと、学んだことを一緒に活動した仲間と共有したり、家に帰って家族に話すことで軽減されると言われています。 頭や心を整理するためにも、自分の中で抱え込まずに人に話すことが大切です。


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