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スープとイデオロギー

日本にいる在日コリアンと呼ばれる方々の中に韓国籍の方々と、朝鮮籍の方々がいらっしゃることを、日本人はどのくらいきちんと理解しているのか?おそらく殆どの人がよくわからないのではないかと思います。

私は好きになった歌手の方や映画監督、俳優さんに在日韓国人の方が何人かいて、彼らの事を深く知りたいなと興味を持ち、少しずつですが今までの歴史を勉強しています。

今回のドキュメンタリー映画を監督されているヤン・ヨンヒ監督を知るきっかけになったのは「かぞくのくに」というヤン・ヨンヒさん自身の半生が描かれた映画を観た事がきっかけでした。(この作品には安藤サクラさんや井浦新さんが出演されています。)

朝鮮籍で朝鮮総連の熱心な活動家だったご両親のもと、3人の兄と共に大阪で生まれ育ったヤン監督。北朝鮮や韓国の事を勉強すればするほど、正直気が滅入るお話も沢山あるのだけれど、それと同時にヤン監督のように思想に疑問を抱きアナーキストになり、色々な内情を発信して下さる方が存在する事に深く感謝しています。と言うのも、とんでもないリスクを負っているわけですからね。閉ざされている色々な内情を発信するということは。でも、ヤン監督のように発信して下さる方がいなければ、私のような人間はなぜそこまで北朝鮮をその人達が信じられるのか?と漠然とした気持ちにたどり着き、そこで答えがでずに学びが終わってしまいます。でも一歩踏み込んだ発信をして下さる方がいるおかげで、ひとりひとりに誰も知らない過去の歴史がある事を知り、心を寄せる事が出来るようになります。

今回の映画はお母さまの生き様を通して、彼女の人生のもがきと、とても強い愛情を描き出していたなと強く心に残りました。

“思想や価値観が違っても一緒にご飯を食べよう。殺し合わず共に生きよう。”

そんなメッセージを節々から感じました。
オモニ(お母様)は元々は韓国が母国であったのに、なぜ北を信じるようになったのか。

そこには壮絶な体験があった。

韓国で近年までタブーとされていたという「済州4・3事件」。今は観光地として韓国でも海外でも有名な自然の美しい済州島。そんな島が、かつて同じ民族同士での殺戮の場になっていたと私は知りませんでした。この壮絶な体験を、お亡くなりになる少し前まで誰にも話さずに記憶を抱えて生きてきたオモニ。そしてオモニと同じような経験をし、けして口を開かなかった、開けなかった方々が今までも沢山いたし、今もいるんだと思うと涙がでました。そしてその話を伝え始めた頃よりアルツハイマー病を患い、オモニの記憶からその出来事が徐々に消えていく。辛い思いを忘れていけたなら、忘れてもいいのかもしれない。そこで初めて色々なことから解放されるのなら。とも思い胸がギュッとなった。

記憶が薄れゆくなか、臨時許可証で故郷である韓国・済州島の追悼集会へ参加したオモニとヤン監督夫妻。歌詞も知らない、本来のオモニの母国、韓国の国歌を周りに合わせて一生懸命歌おうとするオモニの姿、今も目に焼き付いています。どんな思いだったのかな。どうか全ての苦しみから解放され、天で安らかであって欲しいと願わずにはいられなかった。アボジやコノ兄達と沢山笑っていて欲しいと願った。愛情って凄い。それにつきる。

今回私は再上映されたこの映画を映画館で鑑賞したのですが、この再上映の少し前にNHKで監督自身に密着したドキュメンタリーが放送されていて、私が再上映を見ることが出来たのはこの放送を拝見したのがきっかけでした。NHKさんありがとう。

そして現在この作品を含めた過去の監督の作品のデジタル・リマスター化の為のクラウドファウンディングも行われています。映画を見た方、または見てみたい!興味がある!という方は是非検索してみてくださいね。私も少額ですが参加しました!

沢山の方へこの作品が届きますように🌿

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