重国籍問題について
重国籍とは?
以前、とあるWechatのグルチャで子供が日中二重国籍で旅券を2つ持っているとどや顔で話す日本人が数人おり、ものすごい違和感を感じた。まず第一に、日中両国では、二重国籍は認められていないはずだということと、もう一つは、そもそもそんなことを見も知らぬ不特定多数の他人の前であっけらかんとして話すその人間性に激しく嫌悪感を感じたのである。
そこで、色々調べて重国籍について勉強することにした。私の娘は中国にて出生しているので、今後の将来も考えて当問題をよりよく知っておいた方が良いと考えた。
民進党代表の蓮舫議員が台湾籍と日本国籍の「二重国籍」状態だったとの報道をきっかけに、重国籍にたいする関心が高まっています。正確な数こそ把握されていませんが、日本国籍と外国国籍をもつ重国籍者は40万から50万人、もしかしたらそれ以上いるかもしれないといわれています。
これは結構衝撃的な数字だ。2016年の統計データなので、現在はもっと多いかもしれない。いや、絶対増えているだろう。中国にある日本人学校に行けば分かるが、イベントがある毎に学校へ行くと結構な数の「中国人ママ」と出くわすことになる。うちの息子達のクラスにも平均で4〜5人はいるイメージ。中には中国籍なのに、日本人学校に通えている人もいる。まあ、それはどうでもいい。
中国国籍法から見る重国籍問題
まずは中国の場合二重国籍についてどうなっているのだろうか見てみた。まずは憲法の「国籍法」を見てみよう。
第三条 中华人民共和国不承认中国公民具有双重国籍。
いきなり三番目に二重国籍は認めない、と書かれている。これはすごいw
第九条 定居外国的中国公民,自愿加入或取得外国国籍的,即自动丧失中国国籍。
中国籍を有する者が、外国籍を取得した時点で自動的に中国籍を抹消されるとある。だが、制度的にそうだとして、実際にどうやって外国籍を取得したかどうかを確認するのだろうか。
更に調べてみると、現状の中国の憲法においては「二重国籍は認めない」とするも、「違法かどうか」については違法ではない、というのが見解のようだ。これは意外だった。
とは言え、国として二重国籍を認めていないことから、公安に見つかれば上記弁護士の回答のように、厳しい処罰があることは容易に想像できる。要は、ばれない間は大丈夫だが、バレた途端国籍を剥奪され、国を追われることになるだろうとこの弁護士は仰っている。
一番バレる可能性があるのは、出入国履歴が分かる「边检」(出入国審査)であろうか。入出国時に一貫して「中国旅券」を使用していれば足はつかないのかもしれない。他国から中国へ帰る時に、出発国の旅券で出国手続きをしていると簡単に足が付きそうなものだが、現実問題それで捕まったという人を聞いたことがない。現状ただ単に泳がせているだけなのか。
日本の重国籍問題についての認識と現状
さて、翻って日本はどうか。
日本から海外に渡り外国籍を取得した人たちが日本の国籍を持てないのはおかしいと訴えた裁判で、原告の請求が棄却された。訴えていたのは日本からスイスなど海外に移住した8人。仕事や生活のため移住先の国籍を取得するなどしていた彼らが国に求めたのは、自分たちが日本国籍を持っていることの確認など。しかし21日、東京地裁は「原告の請求を棄却する」という判決を出した。元々、日本国籍を持っていたのになぜなのか。実は、日本の国籍法には「自分の希望で外国籍を取得した場合は、日本国籍を失う」という規定がある。原告側はその国籍法自体が、国籍を変更する自由や幸せに生きる権利を保障した憲法に違反していると訴えていた。しかし、東京地裁は「個人に複数の国籍がある場合、国家間の摩擦が生じる恐れがある」「国籍法の目的は合理的であるといえる」とした。つまり、日本では“二重国籍が認められていない”のだ。
おっと、日本でも「認められてはいない」が違法かというと、グレーな感じなのか。
重国籍を認めているのは、アメリカやブラジル、ロシア、ドイツなど61の国や地域。しかし、近藤氏は「『重国籍を認めている』という言い方は必ずしも正確な表現ではない。例えば、両親の国籍が違うとか、その国で生まれた人には国籍を与えるといったケースで複数国籍になるケースはよくある。それをどの程度広く認めるか、制限的に使っているかの違い。日本も実は重国籍を一定の範囲で認めている」と指摘する。日本では「日本人が意図的に外国籍を取得」「日本人が国際結婚などで自動的に相手国の国籍を取得」「外国人が日本国籍に帰化」などの場合、重国籍となる。
「山片さんの話にもあったが、二重国籍を認めないと一括りに言ってしまうのは非常に危険なところがある。例えばアメリカの場合は、アメリカ人が日本国籍を取得してもアメリカ国籍はなくならない。外国人が日本国籍を取得する場合と日本人が外国籍を取得する場合を同じに考えていいのかと、日本人が外国籍を切って捨てなければいけない理由が本当にあるのかというのは全然違う問題なので、考えていきたい。外国籍を取得して複数国籍になった上で、日本国籍がいらないなら離脱してもらえばいいし、日本国籍が大事なら外国籍を捨ててもらえばいいし、両方必要なら選択宣言をして両方持ち続ければいい。それが一番シンプルで合理的な制度だと思う。そうなってくれればいい」と訴えた
こう見ていくと、重国籍問題は想像以上に複雑で、簡単に良いか悪いかで判断できるものではなさそうな気がしてきた。
Wikipediaによると重国籍については下記の通り。
1984年の国籍法改正で、20歳に達する以前に日本国籍とともに外国の国籍を持つ多重国籍の状態になった場合[34]は22歳に達するまで、20歳に達した後に多重国籍となった場合は多重国籍となった時から2年以内が、国籍選択をすべき期限とされている[35]。しかし、日本国籍を選択した場合であっても、外国国籍の喪失は当該外国の法令によるため、日本国籍選択だけでは他国の離脱手続きをしないと外国国籍喪失を意味するものではない。多重国籍状態の解消には外国国籍を離脱した場合には「外国国籍喪失届」、外国の法令によって外国国籍を選択した場合には「国籍喪失届」を市区町村役場または外国にある日本の大使館・領事館に提出する必要がある[36]。
1985年またはそれ以降、自己の志望によらずに日本以外の国籍を取得した場合(出生、結婚など)、期限までに国籍の選択をしなかった時には法務大臣から国籍選択の催告を受け、場合によっては日本国籍を失う可能性がある。2008年の法務大臣の国会答弁によると、これまでに国籍選択の催告を受けた人はいない。
1984年以前、すでに多重国籍であった日本人は、日本の国籍の選択の宣言をしたものとみなされる。また、日本の国籍の選択を宣言した者は外国国籍離脱に努めなければならず、外国国籍を失っていない者が自己の志望によってその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であっても就任することができる職を除く)に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、法務大臣はその者に対して日本国籍の喪失を宣告できる。
多重国籍を自覚している日本国籍保有者が、日本国旅券の取得において、旅券申請書を提出する際に外国籍を保有していないと虚偽の申請をした場合、旅券法第23条の規定による刑事罰の対象となる可能性がある。また、日本に帰化した者の原国籍国が国籍放棄を認めない場合などは、結果的に二重国籍となる。
要は、法律としてはアウトだけどバレなきゃ刑罰の対象とはならないとしか読み取れない。蓮舫氏の二重国籍問題で当問題が大きく取り上げられたが、結局その後どうなったのかは報道されていない気がする。
子供の将来を考えた場合、重国籍は子供に重大な重荷となる可能性があるか?
日中両国の入国管理局も、二つのパスポートで日中往来を行っている輩がいることは把握しているし、日本の場合は二重国籍自体違法ながらも「人道的措置」の一環として黙認している状態である。(以前日本の入国管理局から唐突に子供が日本に入国する際はどちらのパスポートを使用されてますか、と聞かれたことに驚き、詳細を聞くと上述のような内容の回答を頂いた。)
ただ、中国の場合上述のような厳しい処罰が行われることが予想される。ドヤ顔で子供が二重国籍を有していると自慢する日本人を見て、子供達がこのまま何もしないで成人間近になり、国籍を選択する段階になった際、受けるであろう処罰について考えると可哀想で仕方がない。まあ、何事もなければよいのだが。
我が娘の国籍はどうなってる?
私の娘は、2020年コロナ禍の真っ最中の4月に上海の同仁医院で産声をあげた。所謂「上海生まれ」である(上海人は認めないだろうが)。同病院が発行する「出生証明書」を持って、上海総領事館に届出を行った。その二週間後程に妻の実家がある江西省の「郷」(鎮と同等か若干下の行政単位)で「戸籍登録」を行った。(名前は日本の名前のままw)
その後、日本の戸籍に娘の名前が入ってすぐに総領事館で日本国旅券の申請を行い、日本国籍を得た。一方で、中国側での国籍登録は行わなかった。理由は言わずもがな、二重国籍となるからだ。
※ちなみに戸籍謄本の娘の国籍欄には「(留保)」と記載されている。これは、今後国籍の選択の余地が残されていることを示している。
彼女が成人するまでに、国籍を日本籍から中国籍に変えたい場合、手続きを踏めば問題なく変更は可能。また、名前も中国式の名前に変えることも1回は許されるし、日本の名前のままでもいいそうだ。
=======<<2021年7月12日追加分>>========================
日本で生まれ育ったのに中国籍扱いとなり、中国ビザが発給されない?
このLiang@上海さんからのリプを見て衝撃を受けました。え?どういうことなんだと。そっからまた色々調べてみました。
在中国日本大使館のページにはこう書かれていました。
(注)中国の国籍法は、父母の双方又は一方が中国の公民で、本人が中国で生まれた場合は、中国の国籍を有することとなり、かつ、二重国籍を認めていませんが、北京市出身の親をもつ二重国籍の子どもに対して、日本国パスポートに「出境カード」や「通行証」が交付される場合もあるようです。しかし、北京市以外の多くの都市出身の親をもつ子供は、中国国籍法からみると中国国籍だけを有することとなり、中国国籍法が二重国籍を認めていないため、日本国パスポートで出国することができないこととなり、中国パスポートを取得し日本へのビザを申請する方法となります。これらを理解していただいた上で、日本国パスポートを申請することはできます。
な、なんと、中国で生まれただけで中国籍を有することになる??パスポートを持ってもないのに??
更に、こんな情報も発見した。
中国の国籍法 第三条と五条をご覧ください。二重国籍を認めていない けど、親が中国人なら海外で生まれても中国国籍はあるよ、中国人側が海外の永住権を持っていない場合、自動的にその夫婦の子供にはどこで産まれても中国の国籍がある ということだそう。
★中国では、国籍がある ≠ 戸籍(户口)がある ←これが日本人の私たちにはわかりにくい★
➡戸籍がないので中国パスポートは取れない、中国の国籍がある(中国から見れば中国人なため)ので、中国渡航するための中国の滞在ビザがもらえない(日本のパスポートに中国滞在のためのビザは貼ってもらえない、申請できない)→旅行証があれば中国入国、中国人なので滞在が可能
これは複雑過ぎやしないか…海外で生まれても中国籍を有すと見做されるとは…Liang@上海さんのケースはまさにこれではないか。ただ、私の息子は普通に帯同ビザは取れた。今は昔と比べ厳しくチェックするようになっているのか?
こちらの内容も分かりやすくまとめられています。ご参考まで。
重国籍問題、想像以上に相当難しくややこしい話だった。今後も情報を収集して娘の将来にとってベストな選択が出来るようにしたいと思う。
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