『廻る椅⼦』作家インタビュー ⽥村けん太さん(後編)
2021年9 ⽉13 ⽇(⽉)から5週連続公開がスタートしている演劇集団ふらっとのYouTubeラジオドラマ『廻る椅⼦〜出会った椅⼦は、あなたの椅⼦でした。〜』は、4 ⼈の作家による書き下ろし作品で構成されています。
今回は、第三話「ピンクの⾁⾷獣」( https://youtu.be/jVI_xg6NZlA )の作者である、⽥村けん太さんへのインタビューの後編です。⽥村さんが作りたい物語とは…?
◆「やりたかったものができた」
――⽥村さんが本企画に参加されたご感想を伺いたいのですが。
これまでも台本を書く機会はあったのですが、⾃分で企画を⽴ち上げて、⼀から⼗までやるっていうのはなかなか⼤変で。だからやっぱり声をかけてもらうのは⼤事だなと思いました。書くことに専念すればいいので。機会を与えていただいてありがたかったなあと思っています。
――素敵な作品を作っていただき、本当にありがとうございました。完成して、⽥村さんご⾃⾝が感動されたと聞いたんですが、それはどういう点だったんですか?
これは僕だけかもしれないんですけど、最初に僕の頭の中で台本が完成した時に1 回泣きそうになるんですよ。⾃分の中で最後まで話がつながったときに、何か映画を⾒たような気持ちになって。書いている途中はあまりそういうのはないんですが。で、次に泣くのが、実際に⾳声で聞いた時なんですよね。演出や俳優の⽅が僕の書いているものにすごく理解をしてくれて、寄せてくれて、セリフを⾳として⽴ち上げてくれる時。⾃分の思いと違うものが出てくる時もあるけど、今回は、⾃分の作りたかったものを作ってくれたということで、グッときたんじゃないですかね。
――ということは、出来上がったものは⽥村さんがやりたかったものになったということでしょうか?
その通りですね!素晴らしい。お⼆⼈ともね。稽古の最初の⽅から⾒させてもらったんですが、お⼆⼈の俳優さんが、お互いそれまで会ったことがない「はじめまして」の間柄だったんですけど、関係がどんどん近づいていってね、すごく兄妹になっていったなっていう感じですよね。だんだん精度も上がってきて、いい関係で芝居をされていたなあと思いますね。それにしても、実際に会ったことがない⼆⼈でも芝居を作れるんだなって思いましたね(笑)。
――そういえばそうですね。この⼆⼈に関しては、今もまだ直接会ったことはないですよね(笑)。
(※「ピンクの⾁⾷獣」は稽古前の顔合わせから最後の録⾳まで全てオンラインで⾏われた。)
そうですよね。僕もまだエイトさんには直接会ったことないし。エイトさんの⾝⻑とか体格とかわからないです(笑)。背が⾼いのか低いのかわからない。画⾯に映る感じで「鍛えているっぽいなあ」って感じ。
――会ったことがない⼆⼈が作りあげた世界。これは新しいですね。
いや、⾳源聴いても、まさか⼭⼝と東京でつないで録っているとは思わないですよね。
◆希望のある話に
――ところで、「死んだ⼈と出会う話」という話はどこから出てきたアイデアだったんですか?
そうですね…⾊んな映画とか、作品とかでそういう設定があるじゃないですか。映像とか舞台ならではの表現として、⾃分も⼀度やってみたかったんですよね。やっぱり、そこに必ずドラマが⽣まれるじゃないですか、⼈が亡くなるっていうことで。それをちょっとやってみたいなあと思って。それで、与えられた条件に沿ってやっていったっていう感じですね。男⼥お⼆⽅でとか。椅⼦と旅をする話にしてということでしたが、本当に椅⼦と旅をする話になりましたね(笑)。
――死んだ⼈と出会う物語というのはどうしても切ないですが、切ないものを描きたかったんでしょうか?
うーん、確かに、永遠に⼀緒にいられるわけじゃなくて、別れが来て終わるのは必ずそうなるんだけど、なんかこう希望を持ってまた⽣き続けられるっていうのがあって。出会えて良かったなあっていうのが。
――物語の中で、妹の寛⼦は死んでから天国に⾏くまでの間にやり残したことをやりましたね。
寛⼦さんはほんとに⼀⼈で亡くなってしまったわけなので、誰にも会わずに⼀⼈で。最期何か折りたかったなあっていうのがあるんですけど。⾃分では折れなかったけど、作品は残すことができたよっていう。それでまあ、「成仏」するというかね。
◆⾳へのこだわり
――今回は⾳響も⽥村さんということで、⾳もこだわって付けられたのではないかと思うのですが。
そうですね、だいぶ時間かかりましたですね。電⼦系の⾳楽が好きで、⽣の楽器よりはシンセサイザーの⽅が元々好きで、そういうところから選んだんですけど。⾳量とかうまくいっている⾃信がまだあんまりないんですよ。ヘッドホンを通して聞こえる⾳とスピーカーで聞こえる⾳と聞こえ⽅が違ったりとか。そんなんもあって、かなり時間がかかってしまいました。
――すごく⾃然に聞こえてきたと思います。俳優⼆⼈と⾳響と3 ⼈がうまく混ざり合っているなと思います。
ありがとうございます。今⾃分の⼦どもが「⻤滅の刃」の声優さんが作ったラジオドラマをよく聞いてるんですけど、それにはめっちゃ⾳が⼊ってるんですよ。こんなに⼊るの?と思って。常に鳴っているみたいな感じなんですね。だから演劇と違って、結構⾳は⼊るかなあとか、でも⾳がないところも欲しいよなあとか、そんな感じで作りました。
――「⻤滅の刃」の影響もあったとは!
◆誰もが楽しめるエンタメを作りたい
ーーところで、もし次作品を作るとしたらどんなものにチャレンジされたいですか?やってみたい設定とかはありますか?
まず、俳優が決まって、条件が出揃った上で、何かしら書くというのはやっていきたいですね。「ウェルメイド」という⾔葉があって、よくある設定で誰もが楽しめるエンターテイメントみたいなね。こう、あまり仲良くない⼈たちがよせ集められて、何かこう、やらないといけない。喧嘩するんだけど段々まとまっていって、何か良い結果になって盛り上がるみたいな話がよくあるじゃないですか。そういうのちょっとやってみたいです。よくあるやつ。王道。そういうのがみんな⾒たいんじゃないかなと思って。抽象的なやつとか難しいやつとかも必要ですけど、わかりやすく楽しめるものを作ってみたいですね。僕自身がそういうのが好き…⾒てて安⼼するからでしょうね。⾒ててグロテスクな表現とか、誰かが傷つくような表現とか、今はなんか⾒たくないなって、個⼈的にはね。今ちょっとこう⾊々ストレスたまる時代ですけど、何かわかりやすくてハッピーなものを⾒たいし、作りたいなあ。
――それで⾔うと、今回の作品もすごくあったかくて、誰でもわかってもらえる作品だったと思います。
そうですね、わかりにくいものは僕はあんまり作りたくなくて。こういう話なんだなって、伝わる、伝わらないはあるとは思いますけど。意味がわからないものはあまり作らないかも知れないです。
――最近⽥村さんは落語をされていたりもしますが、今回の物語にもちょっと笑える部分を⼊れていましたね。シリアスだけど、ちょっと笑えるみたいな。
やっぱり、笑ってもらうと嬉しいんですよ、書いている⼈間として。劇場で笑いが起きるとめっちゃ嬉しいんですよ。⾃分が書いたセリフを他⼈(俳優)が⾔って、ワーって受けたりすると、すごい嬉しいですねぇ。やっぱり笑いは⼊れたいですね、ちょっとはね。
――なるほど。確かに、今回も内容はシリアスなのに、会話は漫才みたいなところありましたね。渋々折り紙を折らされているお兄さんと圧強めの妹みたいな(笑)。そういうところはクスッと笑えましたね。
◆「ピンク」の理由
――「ピンクの⾁⾷獣」というタイトルは、意外性のあるタイトルですごく良いと思うんですけど、どんな⾵にこのタイトルに決めたんですか?
タイトルは⼤体最後に決めるんですよ。最初仮タイトルがあったんだけどなあ…仮タイトルでずっと進んでいって…たしか「兄妹なんとか」みたいなタイトルだったんですよ。
――へー!全然違いますね。
で、ティラノサウルスの折り紙の話になったときに、最後にその折り紙が残ったというセリフを印象的に聞かせたくて、そこをタイトルにしようと思いついて。で「ピンク」だったら⾯⽩いかなと。
――「⾚」でも「⻘」でもなく、「ピンク」っていうのはベストチョイスだった気がします。
ピンクの折り紙ってよくあるじゃないですか。で、「ピンクの恐⻯」っていうのがポンと降りてきて。それで仮でやってたら、あー、なんか⾯⽩いかなあと。その流れですかね。それに、聞く⽅もね、「⻩緑の⾁⾷獣」だったらなんかちょっと微妙ですよね(笑)。あと⽂字数とかも⼤事。語呂合わせとかリズムとか。
――たしかに。タイトルはやっぱり⼤事ですね。それにしてもなぜティラノサウルスだったんですか?
なんでだったかなあ。折り紙でなんか⾯⽩いもの…セリフにも出てくるけど。ティラノサウルスにしようと思って…まあ、ドラゴンでも良かったんですけどね。でも実は、僕、鶴さえ折れないんです。「鶴さえも折れない」というのは僕のことだったんです(笑)。
――そうだったんですね(笑)。今⽇はほんと、お話をうかがって⾯⽩かったです!物語を作る際のいろんな側⾯が聞けて。お忙しいところありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。今度はリアルでお会いしたいですね。
――そうなんですよ、飲み会がしたいです(笑)。
ほんとに。早く打ち上げをできるようになるといいですね。
(終わり)
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田村けん太さん作品のご視聴はこちらから▼
『廻る椅子』第一話「ピンクの肉食獣」
https://youtu.be/jVI_xg6NZlA
インタビュー:2021年10月23日 Zoomにて
聞き手:竹峰幸美、キャサリン
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