『廻る椅⼦』作家インタビュー ⽥村けん太さん(前編)
2021年9 ⽉13 ⽇(⽉)から5週連続公開がスタートしている演劇集団ふらっとのYouTubeラジオドラマ『廻る椅⼦〜出会った椅⼦は、あなたの椅⼦でした。〜』は、4 ⼈の作家による書き下ろし作品で構成されています。
今回は、第三話「ピンクの⾁⾷獣」( https://youtu.be/jVI_xg6NZlA )の作者である、⽥村けん太さんへのインタビューの前編です。物語の設定をどのように決めていったのか、語ってくださいました。
◆作家プロフィール
⽥村けん太(たむら・けんた)
早いもので演劇を始めて13年⽬、昨年までに23本の舞台に出演しました。劇作家としても活動しており、上演作品は本作品で10作⽬です。 こういうのを数えるタイプの⼈です。 私たちの⽣み出した作品が、ほんのひとときでもあなたの⼼にとどまってくれたなら、本当にうれしいです。
◆当初の⼈物設定は「砂漠の恋⼈たち」
――今回は「あてがき」ということで、事前にキャスト⼆⼈と話をして、それを作品に落とし込むという⾯⽩さがあったと思うのですが、その点いかがでしたか?
私は⾳響も担当したので他のお⼆⽅(上⽥千尋さんと武⽥宜裕さん)の作品もかなり聴き込んでいるんですけど、お⼆⽅の作品ではかなりキャスト⾃⾝の特徴を⼊れ込んで作っておられると思うんですけど、私はあまりあてがきっていうのができなくて。キャストの実年齢とキャラクターの年齢も多少違ったかもしれんし、ほとんど本⼈の情報に寄せてない感じになりましたね。だから、演じる⽅は⼤変だったかもしれないと思うんですけどね。⾃分は作りたいものが浮かぶとパッとそっちに⾏ってしまうタイプなので、今までの作品もそういうのが多くて。キャストの⽅の個⼈的なものはあまり⼊っていなくて、すみませんって感じなんですけどね(笑)。
――なるほど。確かに個⼈的な情報は出てこないですね。頭に浮かんだことを作品に落とし込んだということですが、最初どのようなアイデアが浮かんだんですか?
最初は全然違う話で、実は、砂漠で出会う恋⼈の話だったんですけど(笑)。だから登場⼈物は⽇本⼈でもなかったんです。でも「雑貨屋さん」を登場させてほしいという企画側からのオーダーがあって、砂漠はムリだなって思い、⽇本の話になりました。で、少し前にボツにしていた「死んだ⼈と出会う話」を思い出して、そのアイデアを再利⽤したんです。
――兄妹の年齢を20代に設定したのは理由があったんですか?
これはお⼆⼈の声かな。お⼆⼈の実際の年齢は知らないんですけど、聞こえた声の印象で。実際はもうちょっと上なのかな?
――百合野ちゃんは20代で、エイトさんは多分30代半ばだったと思います。
百合野さんに合わせたのかもしれない。あんまり歳が離れた兄妹だとまた設定が難しかったんですよね。
――いっしょに遊んだ記憶のある年齢差が良かったとか?
そうそう。その辺は俳優に合わせて作っている部分はあるかも知れないですね。⾃由にやってもいいと⾔われるよりは、役者とか条件が決まっている⽅がやりやすくて。いろんな条件が追加されるほど、先に進んで⾏く感じはあるのかも知れない。⼤体俳優が決まらずに書くというのは、弱⼩劇団ではないよね(笑)。先に台本書いてから俳優探すとなると⼤変なんですよ。まあ、オーディションとかできるところならいいけど。私の場合はまず出てくれる⼈を確保してからですね。
――そんな中でも、今回は条件多めだったんじゃないですか?外国から来た椅⼦に、雑貨屋に…。
うん、多めでしたね(笑)。でもこれがうまくクリアできるなってわかったときは嬉しかったですね。あーこうすればクリアできるわって。砂漠の話を捨てて(笑)
――海に来ましたものね、砂漠じゃなくて。
外国の砂漠じゃなくて。⽇本の話になって。⼆⼈の恋愛っていうよりは兄妹の話の⽅がいいのかなって感じたかな、声を聴きながらね。最初は戦場の恋⼈の話だったんですが(笑)。ラジオドラマ、⾳声のドラマってことで演劇とは違うっていうのも⾯⽩かったです。ナレーションみたいなのも結構⼊って。⽬で⾒られるものがない。仕草とかはないから。また⼀つ新しいチャレンジでしたね。
◆航路から決まった椅⼦の旅
――本作は⽂字通り「椅⼦と旅する」お話です。フェリーを使う設定には「その⼿があったか!」って思いました。
「椅⼦と旅する」ってどういうことかなって思って。椅⼦と⼀緒に⾏動して⾃由に動けるって、電⾞とかじゃ無理だし、⾶⾏機も無理だし。でもフェリーだと乗ったら何もすることないし、いいかなと思って、消去法的にフェリーを出すことにしました。移動しているんだけど、本⼈は⾃由っていうのはフェリーが⼀番良かったですね。
――ご⾃⾝にフェリーの旅のご経験があったんですか?
そうなんですよ!⼤学の時、旅をするサークルに⼊っていたんで、結構乗りました。だから、神⼾から⼤分⾏きのフェリーも乗ったことあるんですよ。夜明けに到着するっていうのも体験したことがあって。なんかフェリーっていいですよね。
――私もフェリーで旅したことがあるので、その感覚はよくわかります。夜明けに到着するっていいですよね。では、フェリーだと船上で⾃由に過ごせる時間があるということから、折り紙の設定を思いついたんですか?
なんで折り紙じゃったんじゃろう…あ、そうだ。登場⼈物たちが会話をして、消えてしまった後でも何か物質を残さないといけないと思って。その⼈(死んだ⼈)は、⼝は出せるんだけど、実際に作業に関わることはできないっていう状況を思いついて、折り紙がポッと浮かびましたね。編み物でも良かったんですけどね。ただ、編み物は急にはできないですよね(笑)。でも折り紙ならなんとかできるかなと。
――場所の設定はどのように決めていったんですか?
神⼾は後付けで、まず航路から先に決まったという感じですね。夜明けの少し後に⼊港するような航路で、僕が馴染みがある関⻄から九州に⾏く航路だと、神⼾−⼤分っていうのがあるなと。そこから、じゃあ舞台は神⼾にしようということになって。それで、元々は⼤分に住んでいたっていう設定がくっついてきた感じですかね。
――夜明け後に到着するというのが⼤切だったんですね。
最後に紙⾶⾏機を投げるのが盛り上がるところなので、そこの情景が綺麗な⽅がいいじゃないですか。朝⽇に向かって投げるっていうのがいいかなあって思って。
――そういう景⾊の美しさまで考えて決められていたんですね。
そうですね。真っ暗な中投げるよりは、太陽に向かって投げる⽅がいいかなって思って。
――確かに。逆に⼤分発神⼾⾏きっていうのは考えなかったんですか?
それでも良かったですけどね…個⼈的に神⼾という街が好きなんですよね。なんか素敵な街っていうイメージないですか?あの椅⼦も神⼾で外国から来たって⾔われたら、「ああ、なるほどね」と思える気がします…あ、そうだ!神⼾を選んだ理由はそこにもあった気がします。外国から来た椅⼦っていうので、神⼾にした気がします。考えていきながら⽭盾点が出たらまた修正していくという作業を設定を作る時にやっていて、設定が全部完成したら物語を書き始めるというのが僕のやり⽅なんです。⽭盾点がなくなったら、ストーリーが始まる。最初は⼿書きなんですよ。
(※⽥村さん、ここで制作ノートを取り出す)
――わー!すごい!!制作ノートですか?え!そんなにページ数あるんですか?
そうそう。「ピンクの⾁⾷獣」ノートというのがあって…12〜3枚、つまり25ページくらいはあります。あ、⼀応ラストまで⼀通り⼿書きで書いてますね。でも、今⾒たら最終的な内容はだいぶ変わっていますね。1 回これを書き終えてパソコンに⼊⼒しながら、ちょっと違うなとか、でまた変えたりとか。印刷してまた直したりとかですね。⼊⼒しながら台本書く⼈が多いと思うんですけど、僕の場合は、パソコンで作業していて途中変換ミスとかあると、集中が切れるんですよね。あと、パソコンの通知がポーンと出たりしても集中が切れるし。紙だとそういうのがないのでいいですね、集中が切れないので。それに、書いたものは絶対に消えないですからね。
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続きは後編で!お楽しみに〜♪
田村けん太さん作品のご視聴はこちらから▼
『廻る椅子』第一話「ピンクの肉食獣」
https://youtu.be/jVI_xg6NZlA
インタビュー:2021年10月23日 Zoomにて
聞き手:竹峰幸美、キャサリン
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