新しい春に向けて
あれよあれよという間に、
新年になってしまいました。
皆様、寒中お見舞い申し上げます。
さて、ふらっとではすでに昨年11月から、新キャストを迎えての事前レッスンが始まっています。
読むのは『蜘蛛の糸』。朗読の基礎が詰まっているだけでなく、シーンや人物の動きに大小の変化があり、朗読に触れる最初の作品としても、熟練者が最後に読む作品としても相応しいといわれる作品です。
まず、名前の練習から。
え?と思われるかもしれませんが、NHKの新人アナウンサーの最初の課題でもあり、これができるまで次に進ませてもらえないほど。吸って、吐いて、吸って、吐きながら息を止めずに柔らかく「いとう たえです」
(※強さのバランス6:3:1)
(※前にいる人に向けて山なりに放物線を描くように)
(※初対面の人と仲良くなりたい気持ちで)。
慣れてくるとさらに、「相手にどういう印象を持ってもらいらいか」を考え、それに合わせて息の吐き方を変えていきます。
もちろん終わらないので、次回までの宿題に。
さて、次は話し合い。「極楽はどんなところ?」
雲の上のような世界、澄み渡った青空、空気が金色、ちょうどいい気温…。
「お釈迦様はどんな姿?」「歩き方は?」「『良いにおい』はどんな匂い?」…
ふらっとでは、互いに何でも言い合える関係を目指しています。
特に、稽古場で読む声を聴いて「ここは何を思って読んでた?」「こう思っているように聞こえた」と指摘しあえるようになると、指摘する方もされる方もぐんぐん成長できます。
それには、言語化が不可欠。自分が自分の思いに気づくのも、相手の改善ポイントに気づくのも、それを伝えて助けたり助けて貰ったりするのも、言葉にする力が不可欠。レッスンでは、状況を言語化する力も同時に訓練していきます。
最後に、ふらっとが被爆体験詩の朗読で最も大切にしていることを。
『友達になって』
読むときは「教える」「伝える」ではなく、お客さまと同じ目線で「話しかける」こと。
聴き手がそう感じられるようにするには、語尾を丁寧に仕舞う、顔全体を
上げて笑顔にする、前にいるお客さまに話しかける意識で一音一音発すること。
これが実に難しいのです。被爆体験記や原爆詩はなおさら。
一般に思われている朗読とは一味違うこだわりに、最初は戸惑う参加者がほとんど。
初めて参加するメンバーはお手本の音をひたすら聴き、稽古を重ねるうち、ふらっとの目指す読みに近づいていきます。
私もあらためて基礎に立ち返り、「まだまだだな」と思わされます。
新しい仲間と、そして一期一会のお客様と一緒に作品を作っていくのが、今から楽しみです。
(俳優・伊藤たえ)