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【第十四回】【Chemistry SL】新シラバスで何が変わる?旧シラバス履修者の私見

この一連のブログを書くにあたって、難しいなと感じているのが化学です。化学は2025年の試験からシラバスが完全に異なるものになってしまうからです。試験の形式も従来のPaper 1〜3までの形式からPaper 1・Paper 2からなる形式に変更してしまうため、「この試験ではこうすれば良い」的な対策を言うのも困難ですし、また内容が大きく変わってしまったら最適な勉強方法も変わってしまうかもしれません。そこで、自分が少しずつ理解を積み上げると言う意味でも今回は新シラバスと旧シラバスを比較してみてみたいと思います。

注意して欲しいのは自分は先生でもなんでもないので、私が勝手に行なっている比較対比が正確でない可能性がある(正確になるように努めはします…)ことです。迷う場合は先生の言うことを信用した方が賢明だと思います。

【1. 科目の性質全般について】
https://www.ibo.org/university-admission/latest-curriculum-updates/chemistry-updates/

上のページに化学の科目の変更についてのIBOの考えが書かれています。以下そのページからの部分抜粋です。

The new DP chemistry course will be launched in February 2023 for first teaching in August 2023. First assessment will take place in May 2025.
(…)
The chemistry curriculum is built on two broad organizing concepts: structure and reactivity. Each of these concepts is subdivided into topics and subtopics, which are all connected through the idea that structure determines reactivity, which in turn transforms structure.

出典:IBO

旧シラバスを履修した人の感想としては、この記述を読む限り、新しい化学のシラバスで求められる知識というのはより具体的なものになっていると感じます。構造と反応性という二つの焦点が明確にIBOから提示されている以上、私が想像するにもっとこの二つの観点に対して焦点化された学びをしなくてはならないような気がします(この記述から読み取る限り)

The new chemistry course is moving towards a reduction in content and highlights concepts that underpin learning. The course aims to develop understandings that connect factual, procedural and metacognitive knowledge and recognizes the importance of connecting learning with conceptual understanding. This includes a non-linear, ongoing process of adding new knowledge, evolving understandings and identifying misconceptions.

Conceptual understanding will enable students to be aware and critical of their own knowledge, and to transfer and apply skills and understandings to new or different contexts in creative, generative, autonomous and dynamic ways.

The syllabus structure has been re-imagined, incorporating subject specific concepts—structure and reactivity—within a framework that focuses on models and concepts that enable teachers to create their own pathway for the two-year programme.

出典:IBO

なるほど。やはりこれまでの化学とはIBが方向性を大きく変えようとしているように私はこの記述から思いました。私が履修してきた化学SLというのはほぼほぼ暗記と練習で乗り切れる科目で、IAなどIBの独自性もありましたが、意外と日本の化学と変わらない知識で乗り切るという側面がありました。しかし、このIBOの発表から推し量るに、IBはもっと思考力(概念的理解)を試すようなシラバスへ転換したがっていますね。
明確に履修内容を制限するとIBが言及している以上、やはり化学的な知識とともに未知の状況への考え方を身につける、そう言う勉強方法をIBが求めているような気がします。これをプラスと捉えるかマイナスと捉えるかは人によって違うかと思いますが、私は単純作業で勉強できないと言う意味で若干難化しているようにも思います。

【2. Sub-topicの比較検討】

旧シラバスの構成
Chemistry guide First assessment 2025より

以上がシラバスのアウトライン(旧シラバス、新シラバスの順番)になっているわけですが、思ったこととしては、履修内容はほとんど変わりませんが、構成の仕方がものすごく変わっているように思います。一部旧シラバスでは履修していない内容(例えばCrystalizaiton)も含まれてはいるのですが、なくなっている内容もあるために、知識量として見ると全体的に若干減っているような印象を受けました。

しかし、教科書のように細かく小項目が決められていた旧シラバスとは異なり、新しいシラバスではよりざっくりとした(しかし体系的な)学びが構成されているように思います。すべての学習項目が反応性と構造に結びついていることで、より「なんのためにこの項目を学習するのか」が明晰に見通すことのできる構造になっているように思います。

【3. Specimen Paperから見る違い】

または
https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/programmes/dp/pdfs/chemistry-hl-sl-specimen-papers-1a-2b-2-en.pdf

過去問を一通り見てみた感想は単純に難化していると思います。Paper 1Aが旧シラバスのPaper 1の継承となっていて、Paper 1BがPaper 2とPaper 3の合体、そしてPaper2もPaper 2と3の合体という雰囲気でした。

ただ、全体的に気になったのが純粋に知識を問われる質問が少なかったことです。すべての試験に計算機もFormula Bookletも使えるということはかなり難化しているのでは?と勘繰ってしまいます。私はいつも単純な知識が出題されるPaper 1/3で点数を上積みし、Paper 2で失敗しないという点数戦略を取っていたため、単純な知識問題が少なくなる新形式だと点が取るのが難しいだろうなと予想します。その分Grade Boundaryも下がるかもしれませんが、個人的にはより先生の技量の影響が出る変更になっているようにも思います。なぜなら、考える問題(実験を行うという形式の問い)に重点が置かれているためです。
前までは分野ごとに出題範囲が示されていたため、先生の質に関わらず自分の努力でなんとか課題を克服することができていましたが、新しいシラバスでは「考え方」というなかなか自分のみでは習得しにくい部分を聞いてくる気がしています。例えば、IBがPaper 1でも計算機やFormula Bookletを許可していることには知識のみでは評価しないという確固たる意志のようなものすら感じました。

過去問もない中でではどのように勉強していくべきなのか。さらっとシラバスの全体をみてみた感想はこれまで以上に授業の重要性が高まっていると感じました。例えば、授業内で実験を行うときには、その化学反応の機構を理解するだけでなく、なぜ特定の条件(環境の制御)の下で実験を行なっているかを把握しておく必要があると思います。これまででも重要なことではありましたが、新しい課程の下では今まで以上に考えながら学ぶことの必要性が高まっています。

さて、これからのブログに関してですが、化学については具体的なノウハウというより考え方や取り組み方全般にフォーカスしたブログを書きたいと思います。

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