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【第十一回】【IBDPコア・EE】データから見るIBのEE・科目を戦略的に選ぼう

EEはIBを履修している人・履修しようか迷っている人の中でもかなり注目する部分だと思います。「高校の段階で学術論文を書くことが求められる」「国内の推薦入試で用いることが多くある」などその重要性はIBの点数よりも、その教育的価値や入学試験での有用性(アピール)などに着目して理解されることが多いと思います。私はこれは否定しません。自分も国内の入試を受けていく中で、そのようなことは確かにありましたし、確かに学術的な論文のようなものを書いた自覚もあります。

ただ、徹頭徹尾このブログは「IBで良い点数を取るには」というテーマで臨んでいくつもりです。そこで、ここからは単純にIBという狭い範囲の中でのEEについて述べていくつもりです。EEの科目は自分の専攻に則って選ぶという方も多いかと思いますが、このブログではそれらに関係なく、「良い点を取るには」という一つの視点のみから見るということです。ちなみに、私は課題論文の科目は良い点が(比較的)取りやすく、かつ自分の専攻に関係すると考えられる「歴史」でエッセイを書きました。

自分はスケジューリングやEEへの取り組み方は失敗したと考えていますが、エッセイそのものの質やRQの立て方はかなりうまくいっていると思います。このようなことを念頭に皆さんについてはこのブログを読んでくれれば幸いです。EEはかなり濃密な内容になるので、おそらく何回かに分けての記事となりますが、最後まで読んでいただければ幸いです。

【1.データから見る課題論文の難しさ】
皆さんはIBが出しているStatistical Bulletinというものを知っていますでしょうか。これは、IBが出しているそれぞれの試験回の報告のようなもので、同じ試験回でどのくらいの点数を全世界のIB生が取っているのかなどのデータをまとめたものになっています。これはそれぞれの科目のおおよその難易度を把握するのに役立つので、科目選択をする上でも助けになると思います。
以下の内容は国際バカロレアのウェブサイトで公開されている

https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/about-the-ib/pdfs/dp-final-statistical-bulletin-may-2024_en.pdf

に準拠します。
以下のウェブサイトの内容に準拠しています。またその他の回の結果については以下のリンクから一覧を見ることができます。

https://www.ibo.org/about-the-ib/facts-and-figures/statistical-bulletins/diploma-programme-and-career-related-programme-statistical-bulletin/

ここから2024年5月試験回のEEに関するデータのみを抽出して考えます。

コアポイントの合計の割合。3点を取るのがそれなりに難しいことがわかります。
TOK・EEのマトリクス(2024年11月現在有効)3点を取るためには、最低でもAを1科目以上で取り、B以上をもう一方の科目で取る必要があります。この表を見ると、ボーナスで2点を取る人が多いことも理解できます。

以上からわかるように、ボーナスで得点を1点でも多く取るためには、EEだけでは完成しません。しかし、ここでは、ひとまず、EEでAを取る方法について考えていきたいと思います。


(おまけ)DPの点数の分布
よくベンチマークにされる40点以上の人たちは世界に10%もいるんですね。そう考えると東京大学に入るとかと比べたらレア度が低いような気もします。

2024年5月試験回のEEの得点率
選択する科目によって難易度に大きく幅があることがわかる。
EEの人気科目Top 10
さっきの分類よりもさらに詳細なデータがわかります。例えば、English BやEcon、MathのEEでAを取るのはものすごく難易度が高いことや、English AはCが一番多いのに対し、Business ManagementはBが一番多いなどが読み取れます。

以上のデータから読み取ると、点数が取りやすい科目とそうでない科目が浮かび上がってきます。私が選択した歴史は、A・Bの割合が比較的少なく、C・Dの割合が多いという特徴があります。一方で、点数として最も高得点を望めるのは、統計学的に考えればAとBの合計の割合が4割を超えるStudies in Languageとなります。
ただ、このような統計学的なアプローチには限界があります。なぜなら、コインの表と裏のように、みんなが同じパフォーマンスをするわけではなく、一人一人の生徒の努力や元々の能力など点数には様々な上昇・下降要因が働くためです。確かに避けるべき科目はあると思いますが、その一方で、「Aが取りやすいから」という理由で取った科目でAが取れるほど甘いものでもない、そう感じています。

【2. 結局どの科目を選べばいいの?】
確かに、「Aが取りやすい科目」でAを取れるほどEEは楽勝ではありません。一方で、確実にAが取りにくい科目(つまり避けた方が良い科目)は存在します。以下にそれらを判断する方法の一つを述べたいと思います。
1. その科目のEEを学校で書くことができるか?
 これは、人的リソースと設備の両方を含みます。その科目のEEを指導するにあたって指導経験豊富な、もしくは最低限頼れそうな先生がいるかというのはEEを書く前に考えるべきだと思います。個人的に、国際バカロレアで最大の要素は先生の運だと思っていて、ほぼほぼ先生の質によって最終的な成果物の質も決まると言って差し支えないと考えています。期待外れな先生しかいない科目でEEを取るのは余程の自信がない限り避けた方が賢明かと思います。特に難しいとされる数学や理科でEEを書く場合や自分がSLで履修している科目でEEを書こうと思っている場合はこれが特に必要だと考えています。私の学校であった酷い例では、先生がEEの要件をきちんと把握しておらず、First DraftのあとになってEEを書き直さなくてはならないという例がありました。
 また、設備などがあるかどうかも重要な焦点になると思います。理科の科目のEEを行う中では様々な実験を行いたいという場合もあるかと思います。例に、私の学校は(こう言ってしまうとわかってしまうかもしれませんが)SSHを実施している学校であったため、器具・予算は比較的充実している方でした。実験などを行うに十分な設備があるかという観点からもEEの科目を考えても良いかもしれません。
2. 科目との親和性と能力の高さ
私が歴史を選んだ一つの理由は(自分の中で)歴史がやりやすく、比較的得意なHL科目だったからです。私は歴史書に触れたことはなくとも歴史小説を読むのが好きだったため、早く多くの書籍を読める自信がありました。また、歴史をHLで取っているためP2やP3のエッセイの延長線程度だろうという甘い認識がありました。その科目が得意か(自分の思い込みだけでなく点数として)、また、科目との親和性があるかどうかはモチベーションの面でも重要だということをDPを通じては学びました。
3. 「科目」という大きな括りだけではなく、「課題論文の科目」という認識を持つこと。
どういうことか。例えば、文学のEEでは自分が好き勝手な作品について好きなように分析できるわけではありません。例えば、言語と文学については以下のように制約が設けられており、かなりな程度「型」が定められていることを理解するべきです。例えば、曲の歌詞を分析する場合は、自動的にカテゴリー3に落とし込まれます。

『課題論文 指導の手引き』IBO p.116より

この制約を踏まえてもなお、その科目を行いたいかというところまで考えられると最適なように思います。
4. 情熱・科目に対する熱意
よく他の人のEEのアドバイスを読んでいると、自分が情熱を持って取り組めることに取り組むと良いということが言われていると思います。これにも私はある程度同意しますが、「成績を良くする」観点から見たときに情熱だけでは不十分です。
情熱があるからEEでAが取れるのではなく、
情熱がある→(気づかないうちに自分の選択したテーマについて多角的に、粘り強く分析的なアプローチを保つことができる)→良い点数が狙える
というわけです。当たり前かもしれませんが、情熱がなかったとしてもAは十分に狙えると思います。ただ、ある方がやりやすい、その程度のものではないでしょうか。

私は毎回のブログを概ね二千字くらいに収めたいと思っているのですが…なかなか難しいですね。今回も三千字を超えてしまいました。今回はここまでにして、次回からは私の学校でのEEの取り組みについて共有するつもりでいます。それでは、メリークリスマス🎄!



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