見出し画像

【第三回】【IBDP・日本語A文学】言語に対する鋭敏さを養うということ

寒いとご飯が美味しくなりますね、Kateです。最近はNoteを進めようという気力があります。いつもこういうのは続かないので、続いていることが驚きです。このままやる気があるうちになるべく書き進めていこうと思っています。

また、この記事の内容は2021年から提供されているシラバスに準拠して、2024年に記しているものです。読者の皆さんはシラバスが更新されていないか確認してください。

さて、私たちの学校で提供されているのは日本語A文学ということで、広告などの分析を含む言語と文学とは異なるものになっています。日本の一条校だとどっちが多いんだろう?言語と文学の方が少し多そうな感じがします。

私のこの一連の記事の趣旨はDPについて説明する事にあらず、なるべく一点でも高い点数を取ることなので、DPのGroup1の科目とは何かという事について詳しいことは他にもNoteを挙げてくれている先輩方のものを見てみてください。もしかしたら、Group1科目は書く内容が多くて一つの記事で終わらないかもしれないので、いくつかに分けるかもしれません。

初めに断っておきますが、私の学校の文学の先生はかなり適当な先生だったので、私自身的外れなことを言っていたり、認識が甘いところが特に日本語に関しては多分にあると感じています。先生よりも独力や偉大な先輩に頼りながら手探りで進めてきた側面が大きいので、内容の正誤については注意して読んでください、お願いします。

科目の概要

軽く科目の概要を共有しましょう。
日本語A:文学HLは4つのコンポーネント(評価要素)からなる科目で、以下のようなアセスメントがあります。
【内部課題(IA)】
口述試験(IO)- 20% :日本語を原語とする作品と翻訳作品を選び、グローバルな問題と二つの作品について分析する口述試験
【外部課題(EA)】
HL小論文 - 20%:Line of Inquiryを立てて、一つの作品について分析する。
Paper 1 - 35%:初見のテクストの抜粋二つに対してGuiding Questionに答えながら分析を進めていく。
Paper 2 - 25%:二つの作品に対する比較小論文。問いが与えられるので、それについて二つの作品を比較・対比させながら分析する。

このように概観してみると、評価要素が多いことがわかると思います。また、試験が60%と成績の大半を占めていますが、IO・HLEも舐められない比重を占めるということで、最終試験のパフォーマンス、そして日頃からの努力(IO・HLE)の双方が求められる強度の高い科目です。

DPが終わってみて、私の自信を百分率で表すとするならば、
IO - 40%:悪くはないが、良い出来(30+の点数)でもなかったように思う。
HLE - 70%:おおむねよかった。しかし、非常に優れたレベル(15〜20点のレベル)までは達せられなかったように思う。
Paper 1 - 30%:最後までこの試験を「これだ!」というやり方で答えられなかったように思う。最終試験は結構難しかった。
Paper 2 - 60%:最高級(30点中25点以上)のレベルまで達することはできなかったように思うが、良いパターンを知ることができたので、それなりに自信がある。ただ、二作品しか準備できなかったのは残念。
という感じでしょうか。

選択した作品

ご存知のことかと思いますが、IO・HLEで選択した作品はPaper2で選べませんし、重複がルール上ダメになっています。確認しているかどうかはわからないので、Paper2でIOで使った作品を使ったとしてもバレないような気もしますが、わざわざ危ない橋を渡る必要はないんじゃないかなと思います。
私の学校では以下のような作品を選択していました。
IBのPRL(Prescribed Reading List)はこちらへ

  • 戯曲:『人形の家』(ヘンリックイプセン)(Paper 2)

  • 戯曲:『近代能楽集』(三島由紀夫)(IO)

  • 戯曲:『父と暮らせば』(井上ひさし)

  • 小説:『砂の女』(安部公房)

  • 小説:『こころ』(夏目漱石)

  • 小説:『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)(Paper 2)

  • 小説:『変身・掟の前に他二篇』(フランツ・カフカ)(IO)

  • 小説:『源氏物語』(紫式部)

  • 小説?:『風姿花伝』(世阿弥)

  • 随筆?:『おくの細道』(松尾芭蕉)

  • グラフィックノベル:『ペルセポリス』(IもIIも)(マルジャン・サトラビ)

  • 詩歌:谷川俊太郎の詩集(HLE)

  • 詩歌:『智恵子抄』(高村光太郎)

こうしてみてみると、小説のジャンルが非常に充実しているのは良いですが、古典(実質捨て作品)がかなりな配分(三作品!)もあったのは苦しいところのような気がします。

日本語A文学において必要な力とは?
前置きが長くなってしまいました。アセスメントについての話は次弾以降に譲るとして、私が全部の評価要素に共通する日本語文学に必要なスキルについて考えて終わりとしたいと思います。

日本語・英語双方の科目でHLの文学を学んできて私が最も肝要だと感じたスキルは「言語に対する鋭敏さ」です。どういうことか。

初めに国際バカロレアの文学の基本的な構造は以下のようになっていると私は考えます。(*あくまで私の考え方です)評価要素は異なっても、作者の選択(テクスト)を解読し、読者がその意味を読み解くという基本構造は変わらないはずです。

文学の分析のレベル

DP2年間を通じて、レベル2まではほぼ全員が達成することができると思います。どんなに「文学が苦手…」という人でも、表現技法とその効果を暗記すれば、ある程度の「分析らしきもの」は書けると感じました。
例えば、
------------------------------------------------------------------------
1. 「登場人物の心情がりんごに比喩として喩えられている」
2. 「りんごとして喩えることでエデンの園のりんごのように抗い難い様が現れている」
------------------------------------------------------------------------
ここまでであれば、トレーニングを積むだけで2年間の間になんとか仕上がると思います。この先に行くためには、「作者はなぜこのような選択をしたのか」ということを理解する必要があるのです。
------------------------------------------------------------------------
3. 「この比喩表現によって、作者は登場人物の中にある相反する感情の中で悪の要素を取り立てて魅力的なものとして描こうとしている」
上は(あまり良くないかもしれません)例ですが分析をするためには作者がなぜその選択を行い、それが作品の中でどのように意味を形成するかまでみなくてはなりません。これは、広告など実社会に根ざしたテクストが出る言語と文学では特に顕著じゃないでしょうか。
------------------------------------------------------------------------

一方、私は鋭敏な分析と普通の分析を差別化するものはLEVEL3の意味づけだと思います。そして、ここが難しい。おそらく日本語文学に優れている人はここの意味づけをするのが上手いからこそ簡潔で、それでいて洞察力のあるエッセイを書けるのだと思います。

言語に対する鋭敏さとは作者の選択の中で選りすぐりのものを選び抜く力であり、また、作者の選択の意図や背景を汲み取ることができる想像力を持った人ではないでしょうか。

ここでいう作者の選択を汲み取るとは固定観念で正解があるものではなく、自分なりのテクストの「読み」を突き通すという意味です。例えば、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』にはフェミニズム的な読みやレイシズムの観点からの読みを行うことができますが、これはミソジニーやレイシズムが一般的だった当時からすれば、当時の社会環境を反映しているに過ぎず、シェイクスピアがその不公正を暴き出そうとしていたというにはかなり無理があるでしょう。しかし、文学界ではこの視点からの読みも、作者が意図していなかったとしても正当なものとして認められています。

正直、文学は最後まで自分の得意科目ではなかったので、この感覚は正しいかどうかはわかりません。また、Paper 1ではこのレベル3のことが本番でもあまり発揮できなかったような気がします。
次回は作品の選び方・HLEについて言及して、Paper2・Paper1としていこうと思います。それではまた会いましょう!


いいなと思ったら応援しよう!