ペーパームーン・ライトを照らされて
1800年代に紙製の月に腰掛けて記念写真を撮るのが流行した。 SNOWもびっくりなハリボテのお月さまにヘンテコな顔が描いてあったりする、非常にレトロで味のあるセット。
それが「ペーパー・ムーン」
子ども、恋人、親子、動物だって
このことを知ったキッカケは「ペーパー・ムーン」という映画だった。
詐欺師のおっさんのモーゼと少女アディが、聖書を騙して売り付けながらめちゃくちゃな旅をするっていうロード・ムービー。
「Paper Moon」1973年公開
1930年代が舞台で、あえてモノクロで制作されている。この時代はカメラを持っている人なんてそうそういなかったから記念写真といったら写真屋が定番。
それと、お祭りなどで『写真はいかが?』と声をかける出店があり記念写真の背景として人気があったのがこの三日月に腰をかけて撮影する「ペーパームーン」だったらしい。
そして映画のタイトルにもなったペーパームーンだが、劇中では少女アディが一人で写してる。
詐欺師のおっさんモーゼにも『一緒に撮ろう』と誘っても『あとでな』と冷たくあしらわれてしまう。
そしてアディは旅の別れ際、車の座席にその写真をそっと置いて行くのだ。一人でつまらなそうに月に腰をかけているアディの写真。
『モーゼへ アディより』というメッセージが書かれていた。
だが、ジャケットやポスターにはふたりが並んでペーパームーンに腰掛けている。
映画の結末の先にある物語なのか、ふたりのヘンテコな関係性も表しており、とても心温まるジャケット。
「信じあえば・・・愛しあえば・・・助けあえば・・・ 紙のお月様だって ほら!本物に見えるでしョ」
このキャッチコピーのように、紙のお月さま、いわば“ハリボテ(偽物)の月だけど綺麗”といったところに儚さも加わり、それはそれはロマンチックなのだ。
ちなみに、もう数年前だが、わたしはこのペーパームーンをテーマに歌詞を書いた。
ペーパームーン・ライトという曲で、ハリボテの月灯り、のような “ でたらめな青春時代 ” がテーマだった。
自分の書いた中で今でも気に入ってる歌詞だ。
(これは余談なのだが、創作には「偽物×偽物=儚さ」になったりする)
このように自分の中では、思い入れの深くなったペーパームーン。
ハリボテや、偽物の月の儚さとロマンチックさのコントラストが美しい。
そして、過去の物語の中の話のように話したが、今だってわたしたちはでたらめで狂った時代を過ごしている。
まだ物語の渦中にいるのだ。