『カタツムリレポート#10 面白法人カヤック』
こんにちは! 大学生カタツムリレポーターの飯島詩(いいじまうた)です。カタツムリレポート今回のゲストは、COI-NEXTの副プロジェクトリーダーでもいらっしゃる面白法人カヤック代表取締役CEO・柳澤大輔(やなさわだいすけ)さんです。企業と市⺠の両方の視点を持って、このコンソーシアムでどのような取り組みをされているのか、お話を伺いました。
行政・企業・市民が連携して「循環者になるまち」を目指す
飯島 はじめに、カヤックさんがこのCOI-NEXTコンソーシアムで目指す「循環者になるまち」に必要なことは何だと思いますか?
柳澤さん 行政・企業・市民の三者が「循環者になるまち」を目指して連携して進めていくことだと思います。それぞれ役割が違うので、ここは単独では難しい。まちに関わるステークホルダーみんなで連携して取り組むことが重要です。僕自身はこのコンソーシアムに、カヤックという企業の立場と、副PL(プロジェクトリーダー)という個人の、両方の立場で参加していまして、それぞれミッションを持って取り組んでいます。
飯島 なぜIT企業であるカヤックさんがこの資源循環社会の課題に関わっているのでしょうか。
柳澤さん まず循環者になるという実感をまちで増やしていく上で、自分達の関わりがしっかりと数値化されフィードバックされる必要があります。みんなが循環にどのくらい関わっているのか、ゴミがどれくらい削減されたのか、そういった数値のフィードバックを続けていくという部分で、DX化ができるような企業が活躍できる場だと思い参加しています。鎌倉でコミュニティ通貨アプリ「まちのコイン・クルッポ」を提供していることもあり、クルッポをこのプロジェクトに活用できたらと考えています。
それと、カヤックはWebサイトやアプリを作ったり話題になることを仕掛けていくのが得意な会社ですので、この活動を広げていくために、デジタル系のサービスや発信の面でも協力していきます。
地球によいことをみんなで続けながら地域の資本を増やしていく
飯島 カヤックさんが提唱する地域資本主義と、このコンソーシアムの循環者社会というところで、共通する点はありますか。
柳澤さん カヤックが掲げる地域資本主義とは、シンプルにいうと「地域に貢献しながら資本を増やしていきましょう」ということです。
かつて企業城下町だった地域、事業や状況が変わって工場が撤退し廃れてしまったまちが全国にありますよね。単に成長して利益を還元しましょうだと、やはり利益優先になって、より稼ぎやすい、効率のいい、人件費が安い地域に企業は移っていってしまう。
一方で、地域資本主義は地域に貢献しながら利益を増やすことを目指します。地域が前にきますので、地域をより良くするためになんなら事業を変えるくらいの感じで、その方が環境問題も含めてもっといい方向にいくんじゃないかと思います。
たくさん惑星があって、別に地球を捨ててもいいなら資源を取るだけ取って他の惑星に行く、これは今の世界でも起きていることです。企業が社会をよくする、地球をよくしていくということと、利益を伸ばすことの両方に責任を持つという地域資本主義が持続的な社会の実現につながると考えています。
飯島 循環者社会の実現に向けて、どのような取り組みをしていきますか。
柳澤さん カヤックの立場では、社員の4割近くが鎌倉に住んでいますので、まちを自分たちで良くする活動を企業がサポートしていくような取り組みを考えています。
今進めている「みんなのコンポスト」は、社員の生ごみをみんなで集めてキエーロで土に還そうという試みです。鎌倉市の生ごみ処理機の普及台数は令和3年度までで計24000台だそうですが、実際アクティブなのは5000台くらいだと聞きました。ひとりではなかなか持続できないといった課題があるそうです。それならばみんなでやれば何とか続くかもしれない。まず自分たちが率先して取り組んで、コンポストの持続的な活用方法を発信していきたいです。
もうひとつ、まちのコインをもっと広げて、我々も積極的に使い、その効果を可視化していきたいです。現在もゴミ拾いに参加したらコインがもらえたり、カヤックのもったいないマーケットでいらないものを集めてコインを使って持ち帰れるようにしたり、循環社会につながる様々な体験に使われています。まちのコインはSDGs活動の後押しや可視化と非常に相性がいいので、まちの循環に貢献したらコインがたまってそれをまた他の活動に循環していく、というのが一番わかりやすい使い方かなと思います。
「循環者になるまち」とWell-Beingな未来
柳澤さん それから、カヤックとは別に、僕個人はこのプロジェクトの副PLとして2つミッションがあります。1つ目は10年後に8割の市民が循環者であると意識する状態に持っていく。これは非常に高い割合ですが、ぜひ実現したいと思っています。
なぜなら、鎌倉市はゴミ分別の種類が多くて、市民の方の分別意識も高い。人口10万人以上の都市でのリサイクル率ナンバーワンというのを知らない人が多いですが、知ったらきっとみんな自慢したくなると思います。そういった情報や活動を、メディアやイベント、学校で周知しながら達成していけるのではと考えています。
2つ目は、10年で10社サーキュラーエコノミーを実現するベンチャーを創出するというミッションです。サーキュラーエコノミー系のビジネスやサービスをする人達がこの地で起業できるようにしたい。鎌倉では、儲かるからやりたいというよりも、環境への意識が高い鎌倉でやりたいという想いが発端のベンチャーが多いと思うので、親和性はあると感じています。
ベンチャーの定義とは何かにもよりますが、小商いでやるのではなくて、ある程度雇用を生み出せる企業を10社が目標です。サーキュラーエコノミーに特化して10社というのはなかなかハードルが高いかもしれないのですが、やってみたいと思っています。
COI-NEXTには経済的な価値を生み出すという目的も入っており、雇用を生み出し税収を上げることはまちにとっても大切です。どのように進めていくかは、これから考えていきます。
飯島 未来を担う子ども達や若者世代に「循環者」の意識を持ってもらうにはどうしたらいいでしょうか。
柳澤さん まずは小学校から資源循環のテーマを授業で取り上げてもらいたいと考えています。リサイクリエーション慶應鎌倉ラボを学校の課外授業に組み込んでもらうことも良いですよね。現在カヤックでは、市内の小中学校で資源循環や環境に関する授業を社員がボランティアで実施していますので、その取り組みも今後増やしていきたいと思っています。
市民の8割に意識してもらうという目標に関連した話で、地域幸福度(Well-Being)指標を取っている中で鎌倉市は他の地域と比べて幸福度が突出して高いことがわかりました。自然の豊かさなどが理由にあるんですけど、それに加えて、資源循環や分別に貢献している意識がある人ほど幸福度が高いのでは、といった仮説が得られてきているそうなんですね。
循環者であるという意識が幸福度と関連しているとすると、個人の幸福度を高めるためにも、行政・企業・市民が一体で循環に取り組むことで、8割の目標の達成を目指したいと思います。
飯島 企業も市民もみんな一緒に循環者である社会を目指していきたいですね。柳澤さん、どうもありがとうございました!
ーー柳澤さん、ありがとうございました!
「循環者」になることが、そのまちのポテンシャルへの気付きや個人のウェルビーイングの向上にもつながる。それは単に資源の循環だけにとどまらず、もっと大きく社会全体が「まわっていく」ということへの取り組みなんだなと感じました。(飯島)
また、現在COI-NEXT リスペクトでつながる共生アップサイクル社会共創拠点が主催する、「鎌倉サーキュラーアワード」が開催されています。
本アワードは、「ゼロ・ウェイストかまくら」を礎として、さらなる「循環者になるまちづくり」へ、そして「循環型ビジネス(サーキュラーエコノミー)」創出を活性化していくことを目指して、それぞれの取り組みを披露して
磨きあい、高めあうことを目的としたアワードです。「市民部門」「スタートアップ部門」「事業者部門」の3部門により、 幅広い応募を募集しています。
締切は下記の通りです。
★市民部門→ 9/10(火)まで
★事業者部門→ 9/10(火)まで
★スタートアップ部門→ 9/1 (日)まで
世界中から応募可能です。ぜひ、奮ってご応募ください!