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印刷会社といえど。作業ばかりしていた頃

広告デザインが作れるところで働きたい

次こそは思う存分、パソコンでデザインの仕事がしたい。
どんな会社が、仕事を持っているのだろうか?
よくわからず、求人誌や新聞の求人をひたすら見ていた。

今から20年ほど前。
まだ、インターネットで仕事を探すことは一般的ではなかった。

求人広告の条件を読むと
「DTP専門学校卒」「DTP経験3年以上」など
職歴学歴に条件があるところばかりだった。
素直に、これには当てはまらない。
私は、受けれないと思い、電話もせず家で悶々としていた。

いまさらだけど、専門学校に行っておけばよかったと後悔しだしていた。

ある日、母が新聞に印刷会社のアルバイトの求人が出ているよ。
と教えてくれた。

そこにも「DTP専門学校卒」「DTP経験者」と書いてあったのだけど
Macで看板作ってたんだしいいんじゃない?社員じゃなくてアルバイトだし。
と思い、電話してみることに。

電話したら面接へという流れになったので、印刷会社に行ってみた。
ちょっと暗い感じの会社だった。
社長と話をしてみたら、あっけなく採用。

この会社内ではなく、新聞社に出張部署があり、そこで働くという事だった。



新聞広告だけを作る部署

実際に働く部署にいってみたら地方新聞社のきれいなビルの中の一室だった。社員は女性2人しかおらず、アルバイトの20代前半の方が4・5名ほど。
みんな、Macで新聞広告デザインを作っていた。

windowsがないんだ。
Macだけの環境にも驚いた。

illustratorとPhotoshopを使う作業で、印刷の知識がない私はそこで教えてもらうことが多かった。

ただし、作るのは新聞広告=モノクロ。

モノクロの画像補正やモノクロの表現内でできる地方新聞広告を作っていた。

新聞社の営業さんが、お客様と打ち合わせをして新聞社に戻る。
営業さんがラフ画を書いて広告の仕事を発注しにくる。

仕事を部署責任者が割り振り、
ラフを元に原稿を作るという仕事内容だった。
いわゆるオペレーターだった。

その中でも私が担当したのは、昔から何十年も続くような田舎の仏壇屋さんや不動産、お祭りなどの企画枠の広告だった。

何十年も続いているようなところで広告内容に変化もない。
おそらく予算もなかったと思う。
私がした広告修正作業1点1000円~3000円で手書き請求書を書いていた。

たまに大枠があっても、1万円くらい。

版下の一部分の文章をカッターで削ってMacで同じような大きさ、似たフォントで紙焼きを作り、糊ではりつけるという手作業ばかり。

4ptくらいの小さな黒文字をピンセットで貼る。
言葉になっていたらやりやすいのだけど、「が」を「は」にするなど
一文字だけの修正もけっこうあり、いつの間にやら、職人みたいになってた。

作業が簡単で大量だからなのか、
朝連絡が来て、その日の夕方に出稿(新聞社に版下を渡す)も当たり前だった。

これ、私がしてみたかったデザインじゃない。と気づくのに
1か月もかからなかった。

それでも、一部訂正したり版下の訂正をする小さな作業はたくさんあったので、作業をこなしていく要員としてがんばって働いた。

よくよく会社の仕事の状態を見ていると社員さん、アルバイトの中でも古参の数人だけがイチからデザインを作る広告やカラーの広告の仕事をもらっていることが分かってきた。
 
その人たちは絶対に仕事を下に振らない。
そりゃ、デザインできるから楽しいものなぁ。
自分でやりたいよね。
 
当時、イラレ8が最新だったのだけど、先輩たちは、イラレ5.5が素晴らしい。と言い、5.5で頑なに作業をされていた。

仕事を下に振ると自分の存在意義がなくなる。
新人たちにおびえているように見えた。


社内の人たちのお金の価値観との違和感


出稿の時間が17時ごろまでだったし、そこまでの作業量もない。
朝9時~17時の定時でほぼ毎日帰っていた。

ここの職場のよかったことは、新聞社という大きな取引先の会社内にあるから、取引先の会社の中の様子がよく分かること。
新聞社内の食堂を使えたこと。
大企業に入ったらこんな感じで働けるんだなぁって実感できた。

当時、時給750円だったと思う。

先輩たちは、安い時給でランチなんてもったいない。
と考えるお金にしっかりした方ばかりだったので、
ランチも食堂に毎日行って弁当を広げるか、100円のパンを持っていく。
もしくは、食堂の一番安い150円の素うどんを食べていらっしゃった。

今までそんな食事を毎日なんてしたことがなかった私は驚いた。
お腹すくし、休憩くらい好きなもの食べたいよ!!
と思い、好きなものを買って食べるようになった。

雑談でもどれだけ安く食材を買えたかとか、
服はスーパーで買って1000円だったのよ。
あの草、きのこ食べれるんだよ。
きのこが採れる場所が●●●にあるから日曜に行って採ってきたとか。

今まで私が聞いたことがない金銭感覚の世界だった。
趣味も特になく、ひたすらお金の節約に励む先輩たち。

先輩たちに
「お金使いすぎ!!」
と説教を垂られながらも、日替わり定食400円を食べていた(笑)
このときと同じで食いしん坊は未だにです。

アルバイトの中で一人一つ年上の女性で、ハキハキ言わなくていいことも言っちゃうタイプの女性がいた。
話してみると、DTPの専門学校に行き卒業したけれどなかなか、実務経験がなく雇ってもらえなかったらしい。
社員でどこか入れるように。アルバイトとして経験を積むために入ったらしい。

彼女は、私が入るまで一番の下っ端だったそうで、
私が入ってきたことで先輩になり嬉しそうだった。

彼女と二人食事時も先輩たちに怒られながらも、好きなものを食べるようになり、彼女とよく話すようになった。




女性ばかりの職場で働いてわかったドロドロ

たまたま、この職場は女性ばかり。
最初に働いた看板の会社の男性社会とは逆で最初うれしかったのだけども、また違う嫌な面が見えてきた。

当時、責任者の方が40歳の女性で、私が入った時には妊娠をされていた。
出産ぎりぎりまで働いて産後復帰するんだとはりきっていらっしゃって、お腹が大きくても必死にがんばっていらした。

とはいえ、産休に入るからということで
もう一人の25歳くらいの女性社員に仕事を引き継いでいらっしゃる。
引き継いだものの寂しそうな顔をされていた。

産後、本当に帰ってきて私のいる場所はあるんだろうか?
悩まれているみたいに見えた。

そっか、女性で働いて結婚、妊娠で一度ドロップアウトすると
どうなるのか。こんな恐怖があるんだと他人事ながら怖くなった。

またバイト同士でも、女性特有のマウンティングが行われていた。
私の方が早くきれいに仕事する!とばかりにワーワー噛みつく人もいたし、
ペーペーの私なんかに仕事をふるの?みたいに言われることもあった。

そこで戦うのもなぁ。
しんどいから避けたい。
みなさんがやりたくない地方新聞の作業仕事をぱっぱっとやっておこう。
決まりきった作業ばかりだから、スピードだけ速くなっていった。


仲良しだと思っていたけどやっぱり怖い先輩

食堂で好きなものを一緒に食べていた先輩と仲良くなり一緒に帰宅するようになった。
帰り道にカフェに行ったり、ウィンドウショッピングをしたりしていたのだけど、私が彼女の意に沿わないことをすると説教がはじまる。

何がそう彼女を怒らせるのか?ポイントが全く読めなくて。
楽しい時はすごく楽しい話ができるのに。

彼女と話すのに、怒らせないようにしなきゃ。
今、面白く思ってもらえてるかな?
彼女の顔色ばかり気になる。

職場の席も隣だったし、常に気が抜けない。
言葉を選びながら話すことに、緊張が走るようになっていった。

空気を読んで相手が喜ぶように動くことが当たり前。
なんでもうんうん、って話を聞いていたから、当時気づいてなかったけどマウンティングされていたのだろう。

ひどい時は仕事から帰って夜、電話があり説教がはじまった。

「あんたは、こうで、こうだから。ダメなんや。」

彼女的には楽しく話しているようだったけど私には、はぁっ。。。と気が重くなる時間だった。

ある時、バイト休んで友達と旅行に行こうと思い、バイトを1週間休みたいと会社に相談した。

そんなことをするバイトの人は今までいなかったようで、え?とすごく嫌そうな対応をされた。

アルバイトだし、数か月前に相談しているし。
何が悪い?と思って彼女に話したら、「え?そんなことしていいの?」
と私が悪いという話になっていった。

あれ?休んだらダメなの??とびっくり。

勝手なことをしてはいけない。
バイトは休んではいけない。
常識はこうだ。という説教を受けた。

何で怒られるのかよくわからないまま。
でも、やっぱりおかしいと思い、強硬に休んで旅行にいってきたんだけど。
こういうところ、初志貫徹(笑)

旅行から帰ってきて、緩んだ私。
仕事を休むことが悪と思うんだなこの会社もここで働く人も。
それから反すると、ワーワー圧をかけてくるというところがしんどくなっていった。

どうせ750円バイトだし。
マクドナルドと変わらない。
私がやってるのは作業。いなくてもまわるわ。

ふっと頑張る気持ちも抜けてしまった。

社長にもどう考えているのか。私たちを、成長させたい。
会社を大きくしたいとかあるのだろうか。
と気になり、社長とちょろっと話をした。

結果、750円バイトのまま続けるならいたらいいし。
仕事も今のまま。
というお話だった。

ああ、ここにいても成長することはできない。

バイトをはじめてから、ちょうど一年で辞めることにした。


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