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プラットフォームビジネスは何がいけないのか~ベビーシッター事件から学ぶビジネスの責任~

世の中プラットフォームビジネスだらけである。かくいう私も2つほどそんなサイトを運営している(ふるさと納税サイトと、食のイベント専用マッチングサイト)。
UBEREATSで食事も頼むし、クラウドワークスで仕事をしたり、頼んだりもする。嫁はメルカリなどで不要になった服を売ったりもする。もはや生活の欠かせない部分になっている感もある。

そんな中、そのプラットフォームビジネスを大きく揺るがすといっていい事件が起きた。それが、題名にもあるベビーシッターの幼児へ強制わいせつの事件である。

詳しい内容は上記リンクに譲るが、容疑者はベビーシッターマッチングアプリの大手「キッズライン」に登録しており、そのアプリに対する信用不安が起きた。今回の事件は、ベビーシッター自体への不安というより、そのサービス(安全)を保証してくれない運営会社に批判が集中した。その会社の社長が結構イケイケの性格だった(周年パーティーでシャンパン空けてプールに飛び込むという、アメリカ映画かぶれ的なことやらかしたらしい)ことが関連したかどうかは別にして、批判の数は非常に膨れ上がった。

上記のnoteに、下記のような指摘がされている。
<まず子ども相手の活動は、小児性犯罪のリスクを完全に排除することが難しいという前提に立たねばなりません。ベビーシッターに限らず、小学校や塾のような歴史の長い業界ですら、一定割合で犯罪が発生するのです。洋服好きの人がアパレル業界を志すように、「子どもが好きだから子ども業界を志す人が多い」という構造があります。ただそこで犯罪という一線を越えるかどうかというのは全く別の話で、多くの人は洋服好きだからといって洋服を盗まないように、多くの人は子ども好きだからといって犯罪には手を染めません。しかし、ゼロではない。だから大多数の良心的な人に交じっている悪質な人材をきちんと入り口でスクリーニングしたり、問題行為をすぐ発見したりと、犯罪を未然に防ぐためのしくみの存在が、そこで働く人材の信頼向上や安心できるサービスとしての定着に不可欠です。>
間違いなく、このとおりである、

①プラットフォームビジネスのそもそもの「在り方」

GAFAや楽天、クラウドワークスのような会社なども含めてプラットフォームビジネスだが、現在の流行は「テーマがはっきりしている」ものではないかと思う。上記にある「ベビーシッターとのマッチング」であったり、「婚活アプリ」もである。特定の目的を持った人が、そのテーマのプラットフォームを活用して目的を達成するというものだ。
ただ、そのテーマを持つということは、その提供する「場」がどれだけ健全なものかということによる。言うまでもなく、婚活アプリであれば独身者しか登録できないようにするとか、未成年者は登録できないということだったりする。特定の目的であれば、それを「達成できる材料(人材)」と「本当に必要としている(ニーズ)」がそれぞれ確かなものかを保証する必要がある。そのため、ランサーズやクラウドワークス等「クラウドソーシング」は「ビジネスをする人(主にフリーランス)」と、「仕事をしてほしいと求める人(主に中小企業など)」の両方の質を評価している。黎明期は前者への保証をしっかりするような構築になっていた(ように見えた)が、近年は仕事を発注するほうにもルールの徹底などを促している。問題になったベビーシッターとのマッチングアプリでも、ベビーシッターの保証だけでなく、要望する家庭側でもネグレクトで合って、ベビーシッターに何かを押し付ける(虐待をベビーシッターのせいにする)などの問題対応が考慮されていたかを確認する必要があると思われる。もし虐待が疑われた場合、ベビーシッターはどこに訴えるべきかなどをサポートする仕組みなどはあったのか。両社にとってwin-winであり、両社にとって責任ある対応を求める(システム上でそれを円滑にする)ことがプラットフォームビジネスの本来の在り方である。


② サービスと保証の問題

前述したように、サービス内容によっては保証をすることでその「場」が成り立つ。というより保証しない場などただの詐欺に近く、手数料を払う必要すらないと評価されてしかるべきである。
ただ、これがプラットフォームビジネスの難しさで、「保証」をするとなると、その分非常に手間が大きくなる。ベビーシッターであれば、保育士の資格などは、その人を登録するか否かで重要な条件ではあるが、充分ではない。人柄、経験数、前科、清潔感、稼働できる日数・時間、、、システムで聞けることと聞けないことがたくさんある。東京だけならまだしも全国展開でやるなら、全国で面談会をする必要もある(ZOOMなどだけで分かることもあるかもしれないが)。では、試用期間などは設定できるかといえば難しいし、それを評価することも難しいだろう。ならば、近所の行政機関で登録事業者を紹介してもらう方が早いし安全であるかもしれない(もちろん料金は高いが)。
クラウドソーシングはそもそも、物理的に事業者同士の距離が遠く、そのため地方の中小事業者や個人事業者が仕事をしにくいというアメリカでヒントを得て生まれたものであり、「安く発注できる」ためのものではない。どちらかといえば「リモートワーク」を促進できるための機能から派生したものである。ベビーシッターなどのサービスをクラウドでというのは、そもそも「プラットフォームビジネス」として成立させて良い物かどうかが疑わしい。それならば、全国各地にあるベビーシッター派遣の会社を比較したり、その会社がお客様を獲得しやすくする&品質を向上させるために、お客様からの適正な評価をするビジネス(食べログの、お客様の声が適正にフィードバックされるような)であるならこういった問題は起こりえなかったのかもしれない。ベビーシッターの会社で、派遣する従業員の事前チェックなどができるからだ。

③メルカリなどで販売される「無農薬」野菜

農業者の間でもこの話題が大きくなりつつある。品質表示には厳しい決まりごとがあり、「無農薬野菜」という表記は本質的にはNGである。栽培期間中農薬不使用という表示が正しい。
しかし、メルカリなどで販売される野菜ではしばしばこの表記が見られ、購入者も不安を抱いている。

そもそも、本物の農家が出品しているかどうかの保証すらない。ネットで拾ってきた写真だけ挙げて、実は盗品ということはあり得る話である。実際、盗品を、正規品の箱だけ入手して販売して不当な利益を得る輩は昔から地域で後を絶たない。野菜泥棒の正体は同じ地域の農家だったりするのであるが、メルカリのような販売手段ができたので、新しい野菜泥棒が誕生しつつある。

こういった「保証」はビジネスの根幹である。だから、協同組合などができる(旅館組合などもそうである)。品質を保証し、消費者保護のため不当な価格をしないようにしつつ、大きなこと(災害)などがあった場合はお互いを助け合うのである。ただ、ここが肥大化してしまうと農協(全農)のような問題も起こる。ただ、品質保証や農薬のチェックなど非常に優れた機能は多くあるのだ。

そういう観点から見ると、プラットフォームビジネスの相互監視のような組合的機能が必用なのかもしれない。行政だけにそれをゆだねるのはまた新たな問題を生む可能性があるので。

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