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地方活性化とブルーオーシャン戦略 ②

前回に引き続き、この題について。
さて、画像はいただきものではあるが、美味しそうな豚の丸焼きである。大きなオーブンなら手間なくできるが、野外で炭火でやろうとすると3時間以上必要でさらにずっと豚肉を回し続けなければならない(均一に火を当てるため)、専用サービスに作って運んでもらうほうがいい。なお、丸焼きの場合お勧め美味しい部分は肩ロースとほほ肉、首回りである。

今回は豚肉の話とブルーオーシャン戦略である。

神奈川県藤沢市に宮治豚という養豚農家がある。

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画像にもある通り、月の生産量はわずか100頭。規模効率・コスト重視の養豚業(価格が安いため、この方式にならざるを得ない)にあって、この大きさは零細と言っていい。ところが、この養豚家は同規模の養豚業に比べると倍以上の売り上げがあるという。それはいったい何なのか。
簡単に言えば、「ブランディング化」に成功したということなのだが、口で言うほど「ブランディング化」は難しい。一流のアパレルショップなどに見るように、ブランディング化にも、ブランド維持にも巨額の費用が掛かる。シャネルなどのラグジュアリーブランドも、TVCMや雑誌への広告、目立つ場所への出店などはそのために行っていると言っていい。顧客獲得というより、ブランド維持のコストも見ているのだ(このへん、地方活性化でおざなりにしている部分である。何かイベントをして人の耳目を集めるだけでなく、顧客をどう維持するかも大切なのだが、単年度予算で動く行政としては、このあたりのことをしにくい)。

宮治豚はいかにしてブランド化を行ったのか。それを語る前に、豚肉の流通の仕組みを少し解説する。

養豚家は、母親となる豚がいて、精子を買ってきて妊娠させる。生まれる数、産める回数はある程度見えているので、母親の豚が何頭いるかで、その養豚家の年収は見えてくる。つまり、養豚業は、規模を拡大(母親の数を増やす&子豚たちの育つ場所をその分確保)するか、出荷単価を上げるかしか、収入増加の見込みがない。しかし、出荷される豚は必ずと殺を行い、市場に出荷され、その時の価格で収入も左右される。単価を上げようにも市場出荷価格が低ければ、それに引きずられる。
宮治豚も、かつては普通に出荷され、いずこへともなく市場に出回っていた。つまり、消費者から見れば生産者の顔が見えない状態である。牛と違って単価も安い&数が多いので、個体識別番号制度など無理な話である。

そこで、宮治豚では「ドロップシッピング」モデルを用いて、顧客に直接販売する方法をとった。いったん出荷してと殺、解体された自社の豚肉を卸会社である程度ストックしてもらい、自社HPで顧客から注文があれば、卸会社から『買い戻して』、顧客に出荷するのである(実際は出荷もその卸会社に委託)。これは、と殺や菌検査などが自社ではできない中で考案された。一番の問題は、自社HPで買ってくれる顧客を作ることである。

そこで考案されたのが、「バーベキューパーティー」である。宮治豚では、近隣の場所を借りて月に一度「バーベキューパーティー」を行っている。
これをなんと15年以上、ほぼ毎月行っており、毎回200人以上の参加がある。ここで、宮治豚の味を理解した顧客が、HP上で、自宅用あるいは贈答用として購入してくれるのである。その価格はスーパーで並ぶ国産豚の3倍程度にもかかわらず。

ここで注目したいのは、ブルーオーシャン戦略でいうところの、「ユーザーエクスペリエンス」を元に自社のビジネスモデルを確立したところである。

ひとは、なぜ「おいしい」と思うのだろうか。それは、高級な肉だからか。著名なワインだからか。本来、「おいしい」は千差万別である。宮治豚はそこを突いている。

OBP講座2020519配布用

上記の図は筆者が作成した。豚肉を食べる人にとっての「価値」を分解してみたものだ。おいしさもあるが、それ以外にもたくさんある。いくら高級なワインでも、嫌な上司に説教されながら飲むのであれば、心に残らないだろう。バーベキューは、楽しい。こどもも喜ぶ。眺めや雰囲気のいい場所であればなおさらだ。そこで得た「おいしさ」は、通常の場所で食べる「おいしさ」を上回る。だから、引き続き購入をしてくれるのである。食べたことそれ自体が「自慢」となり、ブランドが確立されていく。

地方活性化では、このユーザーエクスペリエンスをしっかりと分析しなければならない。地方には様々な「魅力」があるとされる。しかし、その魅力はいったいなんで構成されているのか。自然が近いからか。海があるからか。それだけなら、全国で千を超える自治体で似たようなものばかりになる。
地方活性化でよくあるのは、「自分の地域の魅力はこれだ!」と「自分たちだけで考えてしまう」ことである。外からくる人(移住者であっても、観光客であっても)は、「自然」などだけを魅力として考えているわけではないはずだ。その地域の「おいしさ」をより強く意識させるためには、顧客から見た付加価値のいくつかのうち、どれを高めるべきなのか、そしてどれを捨てるべきかを考える必要がある。

地域活性化を「やっていく」組織体制にも問題がある。

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こういった状態になっているのが多い。これでは、ユーザーエクスペリエンスに気が付くはずもない。

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やるのであれば、こういう体制でないとできない。また、④であるように、PDCAをしっかりできるような形でないと、「何がこの地域で魅力的なものなのか」に気が付くことができない。ユーザーエクスペリエンスを分析することもできない。

そういう組織づくりを行ったうえで、ブランド構築だけでなくブランド維持も含めたPR戦略を作る必要がある。そうでないと、近隣との競合で勝てるわけはない。観光戦略であれば、世界中で観光客の奪い合いになるのである。コロナ後でも観光客は激減する。安全、保健衛生という付加価値をユーザーが意識することは間違いない。しかしそれだけではその地方に来てくれる理由にはならない。

次回は、地方活性化の失敗事例を分析しながら、組織づくりについても論じていく。

なお、宮治豚の腕肉をブロックのまま、玉ねぎ、にんにくなどと2時間煮込むと最高の煮豚ができる。茹でたスープにカレーのルーを入れると最高のカレーができる。ちなみに腕肉のブロックはHPでは販売していないので、バーベキューに行って、宮治と仲良くなるしか入手の方法はない。

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