見出し画像

土佐市の対応はどうすればよかったのか シティプロモーションの大切さ

さて、いろいろ炎上しているこの案件。
真実はこれから裁判でもない限り明らかにされないが、上記の記事のように、土佐市としての反応が出てきた。

これは、リスクマネジメントの教科書に載るくらい、最悪なやり方のうちの一つだと考える。

これによって土佐市は『実際の告発者の言い分がどれだけ真実かどうかだったかは別にして』大きなダメージを負ってしまい、これから回復するまでに相当の時間を要すると思われる。

① そもそも、ここまで問題を大きくさせてしまったことが致命的&担当者から、迂闊な発言が出てしまったことも致命傷

告発者のTwitterの発信は2023年2月から始まった。この発信内容から見ると、市の施設指定管理NPOの代表Y氏との関係はそのかなり前からおかしな状況になっている。

論点の整理としては
(1)Y氏から執拗に邪魔者扱いされている(業務妨害)
(2)Y氏からセクハラを受けていた(強制性交等罪(旧:強姦罪)、強制わいせつ罪、名誉毀損罪、侮辱罪、迷惑防止条例、軽犯罪)上、市職員に相談してもセクハラを容認しなさいというような発言(尻でも触らせておけ等)をしていた
(3)NPO法人の会員の同意なく退去通告書類を捏造した(公文書?私文書?偽造、業務妨害
(4)そもそもこのカフェとNPOの間に正式な契約書類がない
  ※これはカフェ側への批判対象でもあるが、そもそも所有者の市がカフェ運用を前提として地域おこし協力隊を連れてきているのであれば、市側と委託管理者であるNPO、市の3者協議の場や覚書、なんらかの家賃の検討した形跡があるはずである(無いというのであれば、これは全面的に市にネゴシエーション不足の責任があるといわざるを得ない)
(5)カフェのSNSの告発は市やY氏への名誉棄損であるか否か

ということだろうが、そもそも論として(1)(2)は犯罪である。これを、市職員側だけのヒアリングしかしていない(ようにみえる)段階で、市側の見解として関係者の口から出てしまっていることはとてもまずい。
これで、カフェ側から揺るぎようがない証拠や、第3者(例えば、カフェの建物1階にある直売所のあるばいとのおばちゃんや常連客)から、そういった暴力的発言やセクハラ行為の証言が出てきてしまえば、その時点で一般大衆は土佐市の事を今よりも強い口調で糾弾するだろう。

そうなってしまえば、裁判となって(4)(5)である程度のカフェ側の責任追及がされて退去などはNPOの主張が認められたとしても、市は結局カフェの事を大事にしなかったという風評的に大きなダメージが残る。

おそらく、地域おこし協力隊や移住定住の推進というところへのダメージは大きいし、ハッシュタグで広がっているようにふるさと納税へのダメージもある程度影響するだろう。ちなみに、不祥事を起こした自治体のふるさと納税がどれだけ減るかという想定では、寒河江市では4割減少を見込んでいる。土佐市の年額予算は95億円らしいので、ふるさと納税2億8千万の4割、約1億円が減るとなると、1%以上の税収が減少することとなる。

対応としてはこういった「市からの発言」は、市広報部に一元化し、また公式の記者会見をもって発表するとして、入念に準備することが最低限必要であった。間違っても取材に対して一担当者(建設課らしいが)が暴言等の経過を十分に調べ切れていない中発言をするというような(少なくとも上記記事の発せられた段階で、市側からカフェに対してセクハラの第3者調査などを持ちかけている節は見当たらない。)ことで発言させてはならない。

セクハラパワハラは犯罪である。その時点で、双方への入念な調査が必要である(で、たいがいの場合やったほうは罪の意識がない)。その感覚が市職員(指定管理担当者も、この記事に応対した職員も)全くなかったことで、今回の事象は間違いなく土佐市にマイナスとして残る。


② 複雑な背景事情・経緯を市が整理できていない可能性が高い

もともと、このカフェが入る施設は河川工事を伴う公共工事だったが、立ち退き等の影響を危惧する工事反対派住民の声が大きく、その反対派の「切り崩し」に動いたのがY氏だとされている。

ちなみにこの辺の事情に詳しい元高知県民に内々で聞いたところ、そのY氏が反対派切り崩しに動いたのは事実らしいが、実は完全に封じ込めていたわけでなく、反対派の火種はくすぶり続けたままらしい。

ともかくその工事もあり観光施設が立ち上がったが、そこに入居を依頼された別団体から、一度入居を拒否されている。

上記の情報元から聞いた話では、とはいえ反対派を「説得」したという手柄を傘にきて、Y氏の態度はとても不遜なものだったらしい。「この施設は俺のもの」という発言をしたとされているが、こういう発言をする人は地域のいろいろなところにいる。

ここからはいくつか推測があるが、Y氏は当初から厭味ったらしい態度をしていたのは、市が言う通りに動かない事、自分の息のかかった人にカフェをやらせないことに対する不満がたまっていたことはあったのだろう。それをもちろん市側も理解はしていたが、どのみちY氏やそのNPOではその運営は無理なので、『当面は』外から連れてきた人が運営したらいいと説得し、折をみてY氏の態度変化を期待していたのだろう。コロナの影響は、飲食店にとってはマイナスであるから、市側としても内心喜んでいたのではないだろうか(Y氏に言い訳ができる)。
ところが、コロナも収束の兆しを見せ、また、Y氏の知り合いでお店がやりたいという人が出てきたのかもしれない。もしくは、先ほど述べた「反対派」がカフェと仲良くしているように感じた(そう見えた)ようなことがあったのかもしれない。それが、この6か月ほど前からの『追い出し』という行動にかじを切らせたのではないか。市が委託管理をNPOにしている以上カフェ側はその要請を原則は断れない(退去通知が早すぎることはあるだろうが、契約的なものが無いというのはまずいが。ただ、上記(3)の問題もある)
本来指定管理を受けている事業者だとしても、毎年の事業計画は市側と協議して決定しているはずである(おそらくだが、1階のお土産物屋・直売所の運営も指定管理料としてNPOは土佐市から金額を受領しているはずで、定期的にチェックを受けたり、入居事業者を変えるなどの重要事項は市側と協議したうえで実施するなどの条項があるはずである)。
しかし、たぶんこのNPOと市はそのような細かいことはできていなかったであろう。理事長が、『総会で決まった』という(3)を盾に、市職員側に損な役回りをするよう押し切ったと思われる。

カフェ側が抵抗を示したので、せめて公募に、という形を市側からNPOに伝えたものの、公募は正常に行われた形跡がない。本来なら市の職員も選定に関わるほどの問題だと思うが。

こういった、カフェ側の主張のすべてが正しいのかは検証が必要だが、市側かそのカフェ側にヒアリング等を(騒ぎが大きくなってから、それも第3者の視点で)していない時点で冒頭の記事のような発言が出てしまったのは本当に致命傷である(何度目かの致命傷)。


③ シティプロモーションはなぜ大切か

シティプロモーションは、「町に住む人や町に関わる人たちの、想いと働きを生み出す道具だ」(河合孝仁 失敗からひも解くシティプロモーション 第一法規株式会社より)とされている。

私は、そろそろさらに進化した「シティプロモーション3.0」の時代だと思っており、

自治体の様々な情報(内向け➡市の活動、行政の活動等々、いわゆる「市民だより」に書かれていること。 外向け➡特産品、観光、ふるさと納税、移住定住等)を
(1)「誰に」「何を」「どう」伝え、
(2)またそれが「どこまで」「どう」理解されているか、
(3)広報活動の費用対効果等を全体的に分析しつつ、
(4)自治体の知名度と存在価値を適切に高め、
(5)かつ「顧客(市内外)管理業務(CRM)」に関わるコスト・リスクを逓減させること
 ※不祥事が発生したときのクレーム電話の件数など
を、定性的定量的に分析していくことが、これからのシティプロモーションに大切なことである。その結果、シビックプライドの向上や、ふるさと納税の寄付拡大といったところに繋がる。

特に今回土佐市が大失敗したのは、この「市の顧客」を何も考えないままにリスクをいたずらに増大させてしまっていることだろう。

先にも述べたように、Y氏が切り崩した、説得したとされる反対派はまだくすぶっている(らしい)。ということは、ここでさらに市がY氏に肩入れしたような態度を出すことは、本来落ち着いていたはずの反対運動をさらに悪化させるという、市内部(市民)からの一番いやな反発が発生しかねない。そして、言わずもがなであるが市外部(ふるさと納税をしてくれる人、土佐市出身でいつかはUターンしようかを悩んでいる人)に対して、決定的にマイナスのイメージを与えてしまった。今後、土佐市が自社をPRしてその汚点を覆そうにしても、金額にして何億円という金額と相当の時間を要するだろう。

シティプロモーションの大切さは、WEBマーケティングの手法やふるさと納税や移住定住促進のPRのために都会でイベントをするとか、市報の見やすさ・伝わりやすさ向上というところのみを考えている自治体がまだまだ多い(結果としてシビックプライドや市外からの関心を高める、という目的の設定は間違えてはいないが、ではどのような打ち手がそれに近づくために必要なのか、必要でないのか、そのための金額は妥当か、というところまで分かっている自治体はほとんど少ない。)

上記の茨木市はまだいい方だと思う。

土佐市のような地方特有の「よそ者を排除する権力者がいる」的な悩みを持つ自治体は結構多い。しかし、その課題を解決しなければ未来はない。その為にも、シティプロモーションの大切さを市職員全てが認識している必要がある。私は、昨年USBメモリを紛失したことで話題の兵庫県尼崎市に住んではいるが、結果取り戻せたからというのもあるが、割とニュースの沈下は早かった。これは、普段から尼崎市内の住民たち自身が、尼崎市がよくなっていることを実感しているからではないかと推察している。市民が、「そういうことはあったとしても、市は頑張ってよくやっている」という思いがあれば、地域の課題を市民が主体的に解決することにもつながる(河合氏が主張するシティプロモーションの効果ではないか)し、ミスをカバーするのであれば大事にはしない、という雰囲気があったように感じる。まあ、これが市職員の資金横領などの不祥事だったらダメだろうが。

自治体はこの土佐市の一環の対応を、ただ指定管理業務の失敗(地元事業者へのネゴシエーション不足や外からの協力者へのフォロー不足)ということで終わらせるのではなく、自治体そのもののブランドが大きく棄損したシティプロモーションの理解不足という側面でも他山の石とせず、対応を考えるべきだろう。そういう仕事ならいくらでも実績もあるし、なんでもやるのでお声がけいただきたい。

今回のカフェの方は、早くこの施設を出て市外で新しくお店を構えた方がいい。地方創生の識者の多くもその方がいいだろうと指摘している。私もその考えではあるが、かつて私もとある指定管理業務に関わっていて、地元の一部の人から追い出された経験があるので、一矢報いたいという気持ちはできるだけ尊重したいが、これ以上争ってもカフェ側のスタッフの方々に負担にしかならないだろう。

※私が近隣の市長町長であれば、どこか場所を手配して手を差し伸べるけどなあ。。。

いいなと思ったら応援しよう!