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旅する練習

いやー、一昔前なら高齢者にカテゴリーされていた還暦のワタシ。アメリカに住んでいるので、日ごろは周囲から年齢を意識させられるようなことはないのだけど、自分自身の意識の中で「やっぱ、年だわ」と感じることが増えた。

30代で「オズの魔法使い」くらいしか日本人には知られていない州に大学院留学でやってきて、卒業後は労働ビザを取るためにミシガン州で奴隷労働。内気で貧乏なアメリカ人ミュージシャンと結婚することになり、テキサス州に移り住んで、生活を支えるために労働者生活を続けた。

こんな風に振り返ると行動的なように見えるかもだけど、私の本質は小心者。残念ながらアメリカ人配偶者が私以上に臆病者で、生活スキルも欠如しているので、「英語が母国語じゃないガイジン」のワタシが対外的な日常のもろもろを担当しないと生きていけない。

しかしこのところ、例えば国外旅行みたいなやらなくても日常に支障がないことについては、計画を立てるのが億劫で腰がひけていた。こういう時に「年とったせいかも?」と感じてしまうのだ。

何ごとにもトロく能天気な配偶者を抱え、心配性な私は、ツアー旅行だと集合時間に遅れて置いて行かれるのでは?と気になって楽しめないので、自分達で調べてつつましい旅をするタイプ。「どっか行きたい、旅行いこう」と浮かれる配偶者を横目に、日程と予算を考えて、知らない土地での宿泊や移動、荷物の準備など二人分を一人でやらにゃならんと考えると、どよーんとした不安に押しつぶされそうになる。

まあでも考えてみれば、昔も新しいことをするのに不安は感じていたけど、割としょっちゅうやる羽目になっていたので、不安を感じることに慣れて、不安があっても動けていたんだと思う。年とともにそうしたバイタリティを失って、危険や新しいことを避けるようになるのは、ヤバイ傾向かも。それに人生の時間は無限じゃないから、動ける時に動いた方がいいわよね。

旅も練習しておかないと行けなくなると思い、先日、配偶者とともにオランダのアムステルダムにはじめて行ってきました。上の写真はアムステルダムの空港で見たアートな時計。ところ変われば時計も変わる。

アムステルダムにしたのは、とりあえず直行便で行けて、英語が使えて、安全そうで、公共交通機関で簡単に動き回れそうだから。今の時代、ウェブで何でもこと細かに調べられるし、写真付きの詳しい旅行体験を紹介しているブログなど沢山あるので、準備しはじめると大変じゃないし、不安もなくなってくる。

アムステルダムの交通機関のアプリもスマホに入れた。空港から中心地までの電車の切符(アプリでQRコードがでてくる)も事前に購入し、15分もかからずに中央駅に到着。めっちゃラクチン。街中には沢山の旅行者がいるし、みんな親切で快適な旅だった。やっぱり旅も、習うより慣れろなんだなあ。

もっとも旅には予想外の出来事もつきもの。帰りは電車で10分で空港にいける駅チカのホテルに泊まっていた。電車は便利だけどちょっとお高い。10分の乗車でも4.9ユーロだから、二人だと9.8ユーロ(1500円くらい?)だ。すでに購入して使っていた電車以外の市内交通乗り放題券で、駅前出発のバスでも空港にいけることがわかった。出発前夜、40分ほど時間はかかるが賢い消費者としては、9.8ユーロを節約してバスで行くべきか?なーんてケチ臭い議論を配偶者としながらスマホを見ると、衝撃的なニュースが。

なんと交通労働者の早期リタイアと年金に関わる時限ストで、翌朝は市内すべての交通機関がストップだって。ヨーロッパあるある。 節約の話どころか、バスでも電車でも空港にたどり着けないじゃん! あわてて急遽ウーバーを予約することに。ちょっとドキドキしたけど、移民っぽいウーバー運転手のおじさんは、翌朝、予約時刻前にホテル前でちゃんと待機していてくれました。

やっぱりね、何ごともやれば何とでもなるんだなあということを、思い出させてくれた旅でした。



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