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【きくこと】 第7回 西山芽衣(株式会社マイキー ディレクター HELLO GARDEN・西千葉工作室 代表)

西山芽衣
1989年、群馬県生まれ。千葉大学工学部建築学科を卒業。まちづくりの企画プロデュースを行う(株)北山創造研究所に入社し、西千葉の地域活性化プロジェクトを担当する中で「HELLO GARDEN」「西千葉工作室」の企画・立ち上げを行う。場づくりに継続的に関わりたいと思い、2014年同社を退社し、「HELLO GARDEN」「西千葉工作室」の運営母体であるマイキーに入社。企画・コンテンツ開発・アートディレクション・人材育成など幅広いスキルを活かして、西千葉のみならず日本全国で人の日常の舞台となる場づくりと人々の創造的な活動のサポートに取り組む。

いわゆるファブスペースって本当に活用されるのだろうか?それだけではなくてまちづくりまで?「日常の舞台となる場づくりと人々の創造的な活動のサポート」😊と、言葉で聞くとなんとなく分かるけれど、実際にご本人からお話しを聞くと大変リアリティがあり、めちゃくちゃイメージが湧いてきました。素晴らしい知見を得られました。西山さんの数奇な物語をお楽しみください。2022年7月20日(水)収録。


染谷:「図書館について語るときに我々の語ること」始めていきたいと思います。よろしくお願いします。

廣木:よろしくお願いします。

染谷:第何回ですかね?

廣木:7回目?

染谷:7!すごいですね。去年の11月末にスペシャルイベント的に開催して、そこから半年以上経っていますが、もう7回。

今日のゲストは株式会社マイキーの西山さん。僕が今一緒に動いてるプロジェクトで、千葉県旭市の「おひさまテラス」という多世代交流施設がありまして、僕らは本のセレクトとかプロデュースを担当しています。

  西山さんはクラフトルーム、もの作りスペースのプロデュースと運営の方を担当されていて、そのプロジェクトを進める中でお話をしているんですが、色々と参考になる話が多く、ぜひ廣木さんにも会っていただきたいなと思いお呼びしました。

廣木:ありがとうございます。

 僕は今西山さんのこと西千葉工作室の方っていう情報しかなくて。後でご本人から説明いただいた方がいいと思うんですけど、いわゆるファブスペースというデジタル工作機械とか工房があって、そういう活動をされている方っていう認識です。

 今図書館でファブスペースを入れる施設は多くなってきていて、これは元々北欧のオーディ(Oodi フィンランド ヘルシンキ中央図書館)とかもそうですけど、当たり前のようにそういう創作スペースがあり、それがすごい活用されているという話があります。日本でもいくつか入ってきてるんですけど、正直言ってあんまり活用されてるかどうかっていうと、ちょっと怪しいんですよ。それは文化の違いなのか、何かやり方が悪いのか、そういうことがあると思うんですけど。

以前導入を検討するときに、民間のファブラボとかファブスペースに取材をしたことがあって、そのとき取材した方がおっしゃってたのは、こういった施設は図書館とかにあって、公共の財源とかでやった方が本当はもっと広がるはずだとはおっしゃっていたんですね。

 ニーズというか図書館としてもあった方がいいとされているし、ファブスペース側も図書館にあった方が何か生まれると思ってるんだけど、日本では入れてみたけど、その後どうなの?っていうこともあるので、大変興味深いお話になりそうです。

染谷:では、西山さんどうぞよろしくお願いします。僕と西山さんは「おひさまテラス」のプロジェクトでご一緒してきました。

今の西千葉工作室の活動や「おひさまテラス」の話もそうですけど、もっと手前のところからお話をうかがっていきたいなと思っています。今ベースは、西千葉で活動されてるんですね。

西山:そうですね。基本的に会社の活動としては、自社プロジェクトとクライアントワークの大きく二つ分けることができるんですけど、自社で取り組んでいるプロジェクトは、千葉県千葉市の稲毛区という、西千葉駅という駅がある小さな町を拠点に活動しています。クライアントワークはわりといろんなところへ行きますね。

染谷:元々ご出身は千葉県じゃなくて、大学から千葉に来られたんですか?

西山:そうです。出身は群馬県沼田市っていうすごく山の中です。そこから大学で千葉に出てきて、そこからずっといるので、だいたい人生の半分ちょっとぐらいが地元、それに追いつきそうなくらい西千葉にいるという感じですね。

染谷:大学の専攻はなんだったんですか?

西山:私は工学部の建築学科に進んで、建物の設計を4年間やりました。

染谷:元々中学とか高校のときから、建築の道に行くぞって考えてたんですか?

西山:なんか明確に建築に行くぞと思ったのは高校生のときなんですけど、実家がおじいちゃんの代までは製材所だったのと、父がハウスメーカーで仕事をしていて、子供の頃からそこに材が転がっていて、それが立ち上がっていくとどうなっていくのかっていうのを結構間近で見ていたので、漠然と自分もそういう仕事に就くのかなって、何か言語化がちゃんとできないままこの道なんだろうなって進んだ覚えがあります。

染谷:そうなんですね。家に木材がいっぱいあるなんてそう当たり前ではないですよね。それで大学で設計を学んだんですね。

西山:私は割としっかり設計を学びました。学んだっていっても大学にあまり行ってなくて、学んだって言っていいのかなっていうレベルなんですけど。

染谷:大学のときは設計を学びながら他にはどういうことをやってたんですか?

西山:当時は造形を作るのがすごく楽しくなった時期があって、そういうときは仲間とインスタレーションの作品を作って大学の敷地内にゲリラ的に展示をしたりとか、東京のギャラリーを借りて個展をやったりとか、あとはコンペに出したりとか、そういうことをよくしてました。

 あとは、学外活動だと建築家の事務所にいっぱい行くんです。だからアルバイトにも行ったのと、あと自分が作品を作る側じゃなくて、その作品を発表する場を作るというか。作品展の企画運営みたいなことをする団体に何年もいて、建築だけではなくて、アート系とかデザインとか、大学も日本中、時には韓国とか海外の大学の学生たちも作品を出展するようなイベントを運営するっていうのは、2、3年いっぱいやりましたね。

染谷:「アーティストが発表できる場を作る」側にはなぜ興味があったんですか?

西山:最初は先輩に誘われて始めたんですけど、大学で設計を勉強していたりとか、建築事務所にアルバイトに行ったりしてる中でも、自分自身が造形を作ることにあんまり楽しいと思ってないかもしれないって途中でハッとしたのと、誘われてイベントの運営を始めた時期が結構かぶっていて、私はものを作るよりも、何か場とか事とかを誰かと一緒に作ることが好きで、自分が作った舞台の上で何かをする人がいるっていうのが結構好きなのかもしれないなってだんだん気づいたのを経験してからですね。

染谷:そのときの気づきとかも今の活動に繋がってくる感じがしますね。それで大学を出てからどういうキャリアを歩まれたんですか?

西山:実は大学をでたあと、1回プー太郎をして。大学の在学中はそれでも建築でずっと進んでいくと思っていたので、就活はしなくて大学院を受けるつもりでいたんですよ。大学院の願書も建築学科の願書をもらいに行ったんですけど、なんかその願書をもらった瞬間にテンション上がってない自分がいて、なんでだろう?って思ったときに、さっき話したみたいに造形を作ることとかが、自分がやりたいことじゃないのかもって。

  その頃ずっともやもやしていたので、1回立ち止まって考えて。そのときに初めて自分が興味があるものっていうのを改めて考えて、言語化を時間かけてして、そのときに人の暮らしとか日常に関わることに興味があるのかもって、建築を学んだ理由ってなんだったんだろうとか、もうすごい遡って自分で考えたりしたときに、「人の日常に関わる仕事」がしたいなって思って。

でもその仕事ってなんだろうってわかんないまま卒業が来ちゃったんですよ。あわてて就職もできず、大学院も受けてないのでフリーターになっちゃって、キャリーケースに最低限の荷物を詰めて、家を引き払って友達の家を転々としながら地域のバーでバイトするっていう期間があったんです。

 それが西千葉の街のバーで、そこに結構いろんな人が出入りしていて、そういう方たちと初めて触れて、なんかこういう地域の中に、全然自分が知らない人たちがたくさん暮らしていて、全然違う価値観で生きていて、それは面白いなと思ったし、自分がいかに狭い世界で生きていたかとも思ったし、私はこういう人たちと街とか社会を共有しているんだと思ったときに、結構世界の見え方が変わって。

何かそういうときに、まち作りとかそういう単語を知って、そういう仕事ができたらいいなと思っていたら、ちょうどそういう会社から、「アルバイト募集していて千葉のプロジェクトがあるんだけどアルバイトしない?」と声をかけられて前職に入ることになったんです。

染谷:その出会いはバーだったんですか?

西山:そのバーの店主が、ただバーをやっているだけではなくて、そこに集まる人と一緒に地域の暮らしを考えようよとか、ちょうど3.11の後だったっていうのもあるんですよね。みんないろんな危機感を感じていて、何かこの街で自分たちができることって何だろうみたいな。人の関係性もそうですし、地域の中にどういう場とか、どういう環境があればいいのかとか、そのバーを拠点に議論をして、ときどき集まって会議みたいなる日とかもあって、そういう中にいたんですよね。

そういうふうにして、何かちょっとずつ街でできることやろうよというふうに、何かイベントにみんなで出ていったり、地域でポスターを作ったり、そんな活動をいろんな人たちとしていたら、千葉でのプロジェクトがあるから、千葉でいろんな活動しているし、ネットワークを持っているし、まち作りとか、何かそういうプロジェクトに興味ありそうな若い子っていうその条件に私が全部ヒットしたみたいで、知人が紹介をしてくれて、前職の北山創作研究所にアルバイトで入ることになって、そのままその千葉の地域活性化プロジェクトのお手伝いをしているのにうちに、「おまえ、うちにきてええで」って言ってくれて、正社員になることになって、ずっとその後もプロジェクトを3年弱担当しました。

染谷:今の経緯だけで相当面白いですね。

廣木:ちなみに大学ってあれじゃないですか、高野さんと一緒だったりするのかな。

西山:千葉大学です。

染谷:以前に登壇いただいた高野洋平さんという建築家のマルアーキテクチャの方も千葉大学ですね。

西山:高野さんも千葉大学なんですね。

染谷:それで、テンションが上がってない自分に気づいて、街の人といろいろ交流を重ねていって。いろんな縁が重なって、そういう会社というかプロジェクトにジョインしていった。

西山:目指してとか計画的にじゃなくて、流れつくままに。

染谷:そこから今の活動の例えばハローガーデンとか西千葉工作室みたいなプロジェクトにはどういうふうに繋がってくるんですか。

西山:私が前職で就職をした北山創造研究所は、いろんなプロジェクトをプロデュースする会社だったんですけど、私がまさにアルバイトとして入ってお手伝いを始めた千葉のプロジェクトというのが、ある個人の方が「僕のポケットマネーで何か自分の地元の千葉に貢献できるプロジェクトをやりたい」と。それを考えてくれっていうプロジェクトだったんですね。

 その中でオーナーのクライアントの方と色々お話をする中で提案させてもらったのが、実は今、私が運営しているハローガーデンと西千葉工作室っていう二つのプロジェクトで、それを提案して。提案して作るはいいけど、誰がやるんだろうって。やっぱりプロジェクトには人が要るので、誰がやるんだろうってなったときに、私がやりたいなと思って転職しました。

だから、一度会社を辞めて、地域の人としてそれに携わろうと思って、普通に北山創造研究所やめて、クライアントに「辞めたので、地域の人として、今度は立場を変えてプロジェクトに関わりたいです」って言ったら「いやいや一緒にやろうよ」って言って会社を作ってくれて、それが株式会社マイキーっていう今所属する会社ですね。

染谷:ここで、ハローガーデンとか西千葉工作室がどういう場所かっていうのを説明していただいてもいいですか。

西山:西千葉工作室は、地域の方がいろんなアイディアと素材を持ち込んで、そこで自由に物を作るシェア工房です。アナログな物からデジタルな物まで、本当に色々物作りに携わる工作機器がたくさん並んでいるのと、やっぱりその機材だけではなくて、今お家で物を作ろうと思ってもそのスペースもないですよね。

汚していいとか、匂いが出るとか、チリが出るとか、色々課題があると思うんですけど、もうそういうのオールOKな環境がそこにあるので、みんながそこにやってきては、そこで自由に物をつくる。木工から電子工作からデジタルファブリケーションとか3Dプリンターとかレーザーとかそういうものを使ったり、ミシンとかそういう洋裁とかをする人もいますし、本当にものづくりの幅っていうのはものすごく広いことを、それぞれが自由にやっているという場所です。

ハローガーデンは、ただの屋外空間なんですけど、イメージとしては民間の公園のようなものであり、時にはカフェのような存在でもあり、屋根のない公民館でもあり、その使う人によってそこが何かっていうのが変わる。

ただの屋外広場ですけど、いろんなその地域の人たちの活動を許容するプラットフォーム。私たちは「暮らしの実験場」って言ってるんですけど、地域の人たちが、こういう場が欲しいとか、こういうアクションをしてみたいっていうことを、いろいろ受け入れられる受け皿としてのプロジェクトを2つやっているのと、あとは子供創造室っていう子供たちの創造性を育むっていう教育事業をやっているプロジェクトの3つが主に西千葉工作室でやっている活動です。

染谷:今の説明だけでも興味津々というかね。すごい。それは元々所属されていたところで提案したときには、そのハローガーデンと西千葉工作室のコンセプトとか、何をやるかっていうのも西山さんのチームが考えてご提案したんですか?

西山:そのときは一緒に会社でやっていた先輩たちのチームで提案したんですけど、すごく大事にしていたのが、出発がそのクライアントの方が「僕のポケットマネーで地域貢献を」だったので、このお金でできることって本当にいろいろあると思ったんですけど、何か楽しませて終わるとか、そういうことは嫌だなっていうお話をして、できればその地域の人たちが自分たちで楽しむし、自分たちでその地域をより豊かにしていく、その活動が自発的なものであって、それを支える環境を作ることにお金を使う方が、同じお金だったとしても生み出す価値が全然違うよねっていうのがあって。

なので、打ち上げ花火的なとか、提供するみたいな形での貢献ではない、本当の意味で何か地域が変わることに寄与するお金の使い方を考えようっていうことで、地域の人たちが自分たちで手とか体を動かしたり、自分で考えてアクションを起こすプラットフォームを作ることにしました。

染谷:そこがすごいですよね。

廣木:ちょっと僕、お金の話好きなんですけど、その資金って継続的にもらうわけじゃないですよね?

西山:継続的に出してくださっています。

廣木:じゃあ今も?

西山:そうです。

廣木:それと利用料みたいな。

西山:そうです。利用料と、後はクライアントワークの収入で会社は回っているという感じですね。

廣木:素晴らしい方がいましたね。

染谷:そうですね。そういったエリアに対して愛着を持っているとか、投資ができるとか、そういうモデルや考え方は、これからもっと広がってもいいような気がしますね。税金で賄う公共施設だけではなくてある程度資本を持っている人が地域のために使うみたいな。

西山:個人の方がそういうふうなお金の使い方をするってまだまだ日本ではないし、何人かいらっしゃいますけど、珍しいことではあるので広がっていけばいいなと思います。

 あと、私たちのスペースに視察にもいらっしゃって、可能性があるなと思うのは、やはりデベロッパーさんとか、そのエリア活用を高めることで自分たちのメリットが返ってくる人たちっていうのもいるので、そういう方たちがすごく短期的な収支で見ると投資しないところを、もう少し長期の目線で価値を見たときに、そういうものに投資するっていう可能性が結構あるんじゃないかなと思っています。

 日本では公共だけが担う役割ではないのを、誰がそういうところに投資していくかっていう可能性としては結構、デベロッパーさんとか建設会社さんは早いのかなと思うんですけどね。

染谷:利用者が受け取り手だけになってしまうんじゃなくて、自分がやる側に回れるっていうのは本当にすばらしいことだと思うんですけど、実際に西千葉工作室を利用される近隣住民の方はいきなり使いこなせるのか、そのあたりはどうでしょうか。

西山:そこはやっぱりすごく時間がかかりました。いまは少し減ってきていると思いますが、ファブ施設が日本でワーってたくさんできた割と最初の方にできてたんですよ。

できたばっかりってやっぱり、ファブ?みたいな、あまり認知が高くない感じなので、そこに最初に入ってきてくれた人たちっていわゆるクリエイターって呼ばれる人とか、もうものづくりをガシガシにやっている人たちが、何なら東京からわざわざ来たみたいな感じだったんですけど、私達が使って欲しい人たちってそういう人たちではなくて、特別な作品を作ったり新しい発明をするみたいなことよりは、「ものづくりの民主化」っていうのが私達のテーマなんですけど、地域の人たちが当たり前に生活の中で物を作るとか、時には直す、作り変えるっていう手段を持っていることで、プラスの選択とか、暮らしていき方が変わっていくかっていうことにチャレンジしたいし、何かそういうものから、できるだけ広くいろんな人に開かれているっていう場所を作りたいと。

 民間でやってるんですけど、少し公共的な気持ちを持ちながらその場所をやっていています。やっぱり使ってほしい人はものづくりをもう知っている人ではなかったので、その人たちに来てもらうだけじゃなくて、一地域の市民の人たちに日常的に使ってもらうというのは、その場を揃えただけでは全然駄目だっていうことを、始めてからすごく気づきました。

 そこからもう丁寧に、こういう場所があると暮らしの中でこんなことができるとか、こんなふうに使ってとか、できなくてもサポートするとか、一緒に考えるからとりあえず駆け込みでも不便だなとかこんなもの欲しいなとかって思ったらとりあえず来て!みたいなメッセージを発信し続けるし、いかにそういう人たちにとって使いやすい仕組みになっているか。

  金額から利用方法、予約の取り方みたいな、あとはそこで誰がどういう指導をするのかとか。そういうのをやっぱり常に常に反応を見ながらアップデートし続けて、ようやくオープンしてから3、4年経って感覚を掴み始めました。

いわゆるクリエイターさんみたいな人はほとんどこなくて、むしろそういう人たちにとっては環境が足りなかったり、いろんな人が出入りすることが、やっぱりちょっとネガティブだったりいろんな要因があると思うんですけど、あんまりそういう方には支持されず、本当にその辺の地域の方がフラッと来て、ちょっと自転車メンテナンスとか、ちょっと椅子の足の長さを変えるとか、ちょっと洋服直しにくるとか、そういう感覚で使うような場所になりました。

なので本当に今会員さんの登録を見ても、住所とかも最初はすごく遠くの方が多かったんですけど、今本当に電車で数駅の方たちがほとんどですね。

廣木:年齢層もバラバラですか?

西山:下は3歳ぐらいから上は80、90くらいまで、本当にいろんな方がいらっしゃいます。

廣木:そういうスペースがあって、でも何ができるかってパッと見てよくわからないじゃないですか。それはやっぱり宣伝というか周知があったと思うんですけど、こういうことができますよとか。それは具体的に何かやり方っていうか、何か変わったことをしたりとかしたんですか?

西山:いろんな手を打ちました。SNSはなるべくいろんな写真を撮って、何か言葉を添えてこまめにアップもしてきたし、見学ツアーという何ができるかを説明する日、みんな興味を持ってくれてるのは感じるんですよね。

だけど入ってくるっていう一歩が重たくて、みんなきっと何ができるのかとか、どうやって使ったらいいのかとか、わからないことが多くて踏み込んでくれないので、その見学ツアーというのを定期的にやっていて、毎月やってるんですね。それも毎回結構参加してくださっていて、参加してくださるとそのまま会員登録して利用者さんになってくださったりとか。

丁寧に新聞とか配布物も作って、こちらが作るっていうことはどういうことかとか、作るっていうのがどういう場面で役に立つのかとかっていうのをちょっと長めのコラムを書いたり、ちょっと道具に親しみを持ってもらえるように道具をキャラクター化して、この子はこういう子なんですと紹介したり、実際中ではどんな物を作ってる人がいるのかみたいな紹介をしたりみたいなのを、結構発行物、制作物で配布をしたりとか、あとはとっつきやすいワークショップをやったり、技術がないと使えないので、技術を身につけるような講習をやったり、何かいろんなアプローチをして、どこから入ってくるかは人それぞれだと思うので、なるべくひっかかりやすいフックの数をどうやって作れるかみたいなことを結構考えたりとか。

廣木:それはそういう周知のときに特に何か公共の力を使ったりとかは?

西山:ないですね。むしろそういう力を借りたかったんですが、やっぱり一民間の事業だっていうのもあって、なかなかそういう力を当時は借りれなくて。なので全部自分たちで手探りで。時にはパンフレットをポストに投函して回ったりとか、そのパンフレットっていうのを見ただけで、何ができて、どう使えばいいかっていうのがわかりやすくなってるかどうかみたいなのも、何度も何度も再考して、みたいなことをずっとやり続けてきて。今もまだそういう試行錯誤の途中っていう感じですね。

染谷:クリエイターにとってのアトリエスペース的な道具が揃っている場所ではなく、日常の人が使えるスペースとして地域の人に向けた施設は当時オープンされたときに全国にはあったんですか。

西山:いや、どちらかという何か「イノベーション!」みたいな感じというか、割とそういう新しい何かが生まれるみたいなことを大事にしているところがすごく多かった気がします。

私達はファブラボとは名乗れないんですけど、やっぱりファブラボと名乗るには、こういう機材を置くとかいろいろあるんですけど、私たちはやっぱり自分たちがやりたいこと、その地域の人たちがこの物作りができるっていうことを通じて、その先にある暮らしがどう変わっていくか、「手段としてのものづくり」をこの西千葉工作室ではやりたかったので。

  工場と一般向けって考えたときに選ぶ機材とか、暮らしの中に取り入れやすい機材とか変わってくるので、そのあたりを独自で設定してたので、そういうファブラボとかファブスペースとか、「イノベーション!」とかってやっている方たちからすると、何かおままごとに見えるというか、本当に工作に毛が生えた感じねみたいな、結構見にいらっしゃる方にもそういう業界の方にはかなり「ふ~ん」みたいな感じがあったんですよね。でも全然目指してるところと違うから、アウトプットが似てるだけで、もう業界も全然違うし、まあいいかと思いながら、自分たちはマイペースにやってきてるんですけど。

染谷:なんか本当に作ることが、当たり前にできなくなっているというか。僕自身、例えばこの間洋服のボタンが取れちゃって。小学校のときに習ったんですけど、全然つけられない。どんどん分業化されてしまっているというか、自分ができることがどんどん細くなってしまうみたいなときにこの場所があって、自分でできるようになるとちょっと嬉しくなります。ものづくりが手段じゃないって言ったら多分そういうところにきっとあるんでしょうね。

廣木:僕も裁縫道具をいつも持っていて、ちょっと破れたりすると自分で直したりするんですけど、最後の結ぶところがすぐできなくて、いつもこう固結びして、よしこれでOKだっつってやってんですけど。こういうとこ行けば、そういうことも教えてもらえるし、なんだったらミシンもちゃんと使わせてくれるんですよね。

西山:はい。そういう以外の使い方とか、こういうふうにできるよとかも、実はそういうのを教える側にも地域の人が携わっていて、スタッフが25人ぐらいいて、それが西千葉工作室の大きな特徴だと思うんですけど、地域の学生だったり、主婦だったり、リタイアされたエンジニアだったり、平日はお務めているんだけれど、実はいろんなものづくりのスキルを持って場に関わるっていうことに興味がある人が週末の時間を少し割いてくれたりしています。

そういうスタッフが毎日日替わりでやってくれていて、私よりもずっとものづくりの知識もスキルもあるので、全部を幅広くよりもそれぞれが「洋裁だったら任せて!」とか、「デジタルだったらわかる!」とかって何かいろいろあるんですよね。そういうのを生かして利用者さんもこの日はこういうスタッフがいるから、これ教えてもらえるという形になっています。

毎日同じサービスではないんですけど、逆にそれが良さでもあり、一緒にその地域でそこを作っていくっていう。でもそのスタッフをやってくれているみんなは誰よりもコアユーザーでもあるみたいな。その場を作る人とそこを使う人っていう境界線をどう曖昧にしていけるかみたいなのも良さというかテーマですね。

廣木:ちょっと行きたくなりましたね。僕なんか自分で服縫ったりして、このズボンの膝の部分も買って3日ぐらいで穴が開いちゃって、悔しいから自分でやろうと思ったんですけど、さすがに無理だなと思ってこれは洋服直し出したんですよね。結構するじゃないですか。

 本当は自分でやった方が愛着もわくし、やりたかったなと思って。靴とかも結構修理しまくってるんですよね。そういうのとかもやれたらいいですよね。こういう場所が自分家の近くとかにあって。

染谷:それをやってるうちに廣木さんが今度逆に先生側に回る。

廣木:それは嫌ですね。

全員:あははは(笑)

廣木:先生はコアユーザーをスカウトするんですか?やってみない?みたいな。

西山:ぜひ仲間になってほしくてスカウトしたスタッフも何人かいますし、やっぱりスタッフ募集しますって言って応募してくれる人もいます。

廣木:ホームページ見ると、大学生とかが多い感じなんですか。

西山:スタッフは今大学生は3分の1もいないかな。意外と多いのが、平日は別の仕事をしている社会人が多いです。あとはその地域でフリーランスでそのデザイナーをやっている方もいるんですけど。

廣木:やっぱ周辺の大学生なんですか?

西山:大学生は千葉大学とか、数駅隣にある千葉工業大学とか。

染谷:それってみんな多分お金のためとかってよりも、自分の持ってるスキルとかを通じて、誰かに喜んでもらうみたいなところにやりがいを感じてるっていうか。

西山:そうですね、まさに実は関わってくれているスタッフは、円で報酬を支払う雇用の関係ではなくて、実は何をしているかっていうと、全くの無償のボランティアでもなく、私達が独自に発行している地域通貨をお礼にお渡しさせてもらっています。

  だからベースはあの場所に面白いと思って関わってくれたり、そこで何かをするってことが、自分にとってのメリットがあるとか、楽しみとしてやれるっていう人たちが携わってくれていて、その人たちには、この地域を楽しめるチケットをお礼でお渡しをして、自分が西千葉工作室とか、ハローガーデンを活用するときも、それで利用料を払うし、あとは提携してくれている地域のいくつかのお店があるので、そういうお店を楽しむのにもチケットを使ってくれている。

だから私達のプロジェクトを面白いと思ってくれていたり、地域を楽しむことをいいと思ってくれている人しか仲間にならないので、円っていう通貨で雇用関係を結んで仲間になる人よりも、もっと何かいろんなものを共有できている仲間って感じですね。

染谷:今のお話を聞いて、ただのものづくりスペースではなくて、より広範囲なものづくりプロジェクトになっていくというか。元々そういう考え方で始まってるってことですね。西山さんが最初に学生時代に気づいた自分がアーティストではなくその場を整備したりとか、そこで自分よりやりたい人を見つけるとか、そういうところにまさに繋がってるって感じですね。

西山:そうですね。しかもそれは自分1人で作るんじゃなくて、その場を作ることも仲間とやるとか、だからこそやっぱり、コンパクトな人数で運営する方が楽ですけど、何かそういう場作りそのものも、その地域の皆に関わってもらいながら、こう、幾重にも関係性が重なっているみたいなことが、すごく今興味の対象というか。

染谷:そのコミュニティの中でどういう役割をすることが多いんですか?割と議論を引っ張っていく感じなのか、発言を回していくというか。

西山:そうですね、私の役割は目的地をちょっと決めるというか、旗を振って、みんなこっちに行くのどう?とか、楽しそうじゃない?とか、こんなことしようよ!みたいな旗振り役のことが多いです。ワンピースで例えるとルフィの役目かなと思っていて、そこにもっといろんな特殊能力を持っている人たちが一緒に船に乗ってくれて、みんなでそのプロジェクトが進んでいく、目的に向かっていくみたいな、ちょっとそういう感覚な気がしてます。

染谷:自分が旗振りをしていて、こっちだよって指し示すのは何によって決めてますか?つまり日々のいろんなインプットとか活動を見てとかあると思うんですけど、その活動の中でこっちだって、どうやって判断してるんですか?

西山:プロジェクトの現場の中から見えてくるものもありますし、なんか普通に一生活者として、この社会の中で生きている中で感じる感覚もありますし、ちょっと俯瞰してみて社会として課題があるよねとか、地域にこういう課題があってアプローチできたらいいよねみたいなことを、色々編集をして、今の状況を色々こう含めるとこっちに行くのが良さそうみたいな。これはずっと結構再定義し続ける。

染谷:最初に廣木さんがその西山さんをお呼びする前に、図書館の中にそういったスペースが増えているっていう話がありましたけど、それについてはどんな印象を受けましたか?

西山:流れとしてはすごくいいなと思っていて、私自身も自分たちがやっている場所を民間で運営しているけれども、これがやっぱり民間で運営しているからこそ、入ってくる人を狭めてしまっているところはどうしてもあるなと思って。

例えば、利用料とかの問題だったり、出てしまうカラーとか価値観の問題だったり、何かそういう課題があるなと思っていて、できれば西千葉工作室みたいな場所が全ての人に、ある意味開かれている状態でその作るとか、作り変えるとか、そういう創造的な行為というのが、誰しもがアクセスできるものである状態であるのはすごくいいなと思っていて。

 そこにはいろんな格差を消してくれる良さもある。生み出すっていうことには、経済的な格差とか環境の格差とか、そういうものを乗り越えて、人々がいろんな物を自分の手にしていくっていうようなときにすごく役に立つツールになるなと思っていて、開かれていてほしいと思うので、何か公共図書館の中にあるってすごくいいなあと思う反面、やっぱりそれを人々が使うようになるためには、ものすごく教えていく必要があります。

 料理とかってみんなお家で日常的にすることなので道具がそこに揃っていれば、最低限作ることができますよね。でも、ものづくりの道具たちってそもそもそれを使うリテラシーが今ないので、環境があって道具があるだけでは、何かはいどうぞって物を貸すっていう感覚ではやっぱり使えないものなので、せっかく図書館っていう開かれて場所に置かれているのに、やっぱりあまり活用されていない場所も結構見ていてそれがもったいないなと。

 それを活用できるようにするためには、そこに道具とかハードとしての空間があるだけではなくて、使いやすくする仕組みだったり、教えていく人的リソースだったりそういうものが必要になると思います。

それが実現したときにそういう場所が地域の人たちにとってすごく意味のある場所になるなと思うし、個人の民間で小さくやっていると、やっぱりコスト的にも導入できない機材っていっぱいあるんですけど、今、染谷さんとやってるおひさまテラスは、西千葉工作室よりはちょっとご立派な機材をいくつか増やしてるんですけど、やっぱりもっとたくさんの人で共有をするっていうことを考えたときに、導入していける機材ってやっぱりあるなと思って。

資本のスケールがちょっと違うじゃないですか。そう思うともっともっとものづくりの可能性っていうのがそこに開かれていくので、図書館とかある程度のスケールの公共施設が、ものづくりの環境っていうのを整えていくってすごく何か意味があると思います。

 私は図書館とセットっていうのがすごくいいなと思っていて。物を作るって結構アウトプットな行為で、本を読んだりするってインプットな機能じゃないですか。

インプットはインプット、アウトプットはアウトプットじゃなくて、インプットとアウトプットがすぐそばにある。何かをインプットしながらアウトプットするし、アウトプットしながら「あれれ?」って思うことはたくさんあって、アウトプットしたから「あれれ?」って思うことって結構あって、そのアウトプットして「あれれ?」って思ったものをまたすぐ手に取ってインプットできるっていう、インプットとアウトプットのサイクルが同じ場所で行えるってすごくいいなって思うんですよね。

そのアウトプットっていうのが必ずしも物を作るっていうことじゃなくて、ことを作るとか関係を作るとか、もうちょっと違うものもそこにあるといいなと思うんですけど。

廣木:素晴らしい話ですね。ファブスペースを図書館に入れるっていう、これは良いことだってわかってるんですけど、でも使われてないし、本当にいいことなんだろうかっていう少し疑問っていうかもあったりしたんですけど、やっぱりいいことだったと思うんですよ。

インプットアウトプットの関係もそうだし、ただやっぱ人が重要っていうのもあると思ってるんですけど、ただ人がいればいいのかっていうのも一方今話を聞いたりしてると、例えば西山さんの千葉の西千葉のバーから生まれ始まったそういう人との繋がりとかっていうのが今の西千葉工作室の成功にも繋がってるわけで、そのぐらいでなんかこうでっかいコミュニティっていうか、そういうものも一緒に持ち込まないと成立しないのかなっていう気も一方しちゃってるんですけど、そんなことはないですね。

西山:どうですかね、でもすごく大事なのは、ものづくりの可能性を信じている人がそこにいて、何かそれを提案し続けるっていうことが大事で、そこに立っている人にスキルがあればいいということではなくて、みんなにとってこれがこんなふうに使えるっていう、感覚で言うとニーズがあるものに応えていく機能ではなくて、これからニーズを生み出していく、何かそういうものだと思うんですよね、

  公共空間にファブスペースをつける。で、その場所があればもうみんなが使うような状況ではないけど、これがあることの豊かさとか可能性っていうものを知ってもらって、使う人を増やしていかなければいけないので、何かそこを語れる人がいかにそこにいるか、そういうことがすごく重要で、それこそスキルだったら後から身につけられるし、私達がスタッフに助けてもらっているように、プラス、スキルを持っている人をチームの中から入れていくっていうことができるので。

染谷:技術的なスキルを持っているインストラクターではなくて、そのマインドを伝え続けられる人。それってでもどうやって、見つけるしかないっていうか、最初にそのプロジェクトの初期にそういう人を巻き込む必要があるんですねきっと。

西山:私達はそういう人を増やすっていうことを、何かこれから自分たちのミッションだなと思っています。

染谷:そうですね。

廣木:確かに、なんかそういう人を増やして派遣してもらったりとかも将来的にはできるんですか?

西山:将来そうできたらいいですね。

廣木:だから、西千葉だからできたっていうわけじゃなくて、もっといろんな町とかでも当然同じことは、できるという感じですよね。

西山:できるなと思っているし、できる仕組みを見つけたいなと思っています。ものづくりに気軽にアクセスできる環境っていうのが西千葉特有のものではなくて、もっといろんな広い社会の人たちにこれから起こっていくことになったらいいなという思いがあるので。西千葉の人だから特別あれが必要だったとも思わないですし。

廣木:そうすると、もう全国にこのメソッドを広げていきたいとかそういう野望も。

西山:そうですね、そういうふうにできたら。でもそれが西千葉工作室みたいなものづくりの環境だけではなくて、ハローガーデンも同じなんですけど、どちらかというと自分で何か考えて、何かを生み出す。困っていて誰かが与えられるのを待っていたり、作ってもらったものをお金で買ってみたいなことではなく、どんどん社会とか自分の暮らしに対しても、自分で問いを投げたり、可能性を見つけたり、そこに対して能動的に動く人を増やしたいっていうのが私達は根底にあります。

  その手段の一つとして工作室をやっているし、みんながそれぞれ表現活動をしたり、イベントを作ったり、時には商いを始めたりっていうことができるようなプラットフォームとしてのハローガーデンっていうのを作っていて、意外とそこの形はもうちょっと柔軟に変えても良いような気がしていて、とにかくその「考えてアウトプットする」っていう行為をもっと人々が当たり前のように、もっともっとやっていくし、それがこの街とか社会に何か結果として出てきて、それがまた関係し合っていろんなものが変わっていくみたいな。そういう事象を起こしたいっていうか。

染谷:すごいわかるっていうか、共感します。自分で考えてアクションできるようになってくというか、僕はよく「面白がり力」みたいな言い方するんですけど、やっぱ自分でそういうのが発見できるようになって、行動できるようになっていくと、どんどん面白くなってくるじゃないですか。

そうすると何であっても面白がれるじゃないですか、だからそこのやっぱり、何を、じゃなくて、どう、みたいなところだと思うので、今の物作りが手段なわけじゃなくて、自分で頭で考えたりしてみたいところを、仕組みと人的リソースでうまく作ってくというのはすごい共感すると言うか、今の話はすごいいろんなところのヒントになりそうな話だなと思いながら聞いてました。

西山:今染谷さんがおっしゃった「面白がり力」を私達はクリエイティブの「創造力」と置き換えています。創造的っていうのは、形を作れるってことではなくて、いろんなところに目を向けて、気づいたり、その情報から自分がどう思うかということだったり、人はどう思うかって想像を膨らませたり、何かそういうことを全部いろいろ編集して、何かひとつこういうことがあったらいいんじゃないかみたいな仮説を立てて、それが実際に状況とか物を作ってみて、それって本当にそれでいいのかなみたいなこともまた考えて、その全体のそのサイクルみたいなものを楽しくやる面白がって楽しくやるみたいなことが何か私達は「創造力」なんじゃないかって思っていて。

子どもの教育事業を手がけていますが、子どもたちにそういうことを教えています。物の見方とか、何かそういう考え方を教える教育事業をやっているんですけど、そういう人がすごいいっぱい増えたら、社会のいろんな課題とかが、なんかみんなで楽しみながら次に行けるような気がして。プラットフォームを作っているだけではちょっと足りないなと思って、実際に場を持ってやってみて、何かそこのマインドを育てるってこと大切さをすぐ気づいて、後から教育事業を始めたんですけど。

染谷:最終的には学校を作りたいみたいなアウトプットにいかないんですか?

西山:今のところいわゆる学校教育みたいなものを否定する気持ちがあって始めてるわけではないので、それを補完するというか、何かそことはまた違うものを学ぶ機能として、今、放課後の習い事のように通ってもらっているので、学校教育と一緒に子どもの教育っていうことに携わっていけたらいいなと思っているんですけど、やっぱりそういう考え方とかマインドとかっていうのを子供たちの中に育てるのはすごく時間がかかることだなと思っていて、週に1回のその放課後の時間だけではちょっととても時間が足りなくて、これをもっともっと子供たちと一緒に深めていきたいなって思うと、やっぱり学校かなみたいなみたいなのはチラつきます。

廣木:子どもの教育事業っていう具体的にどういう教育というか、授業っていうんでしょうか。

西山:いろんなミッションを子どもたちに出すんですよ。そのミッションの中には、かなり課題解決型のものもあれば、自分の考えをきちんと定めて、それを他者に伝えるために表現することに軸を置いているものとか色々あるんですけど。

例えば課題解決型だと、めちゃくちゃまずい青汁がありますと。これを美味しく飲めるし、買いたいと思うミックスジュースのレシピを考えて、さらにパッケージまで付けてデザインしようとか。

でもこれを感覚的にじゃなくて青汁の味ってどういう味で成り立ってるんだろうみたいなことを言語化したりとか、それにブレンドしていく候補のドリンク、例えばリンゴジュースとかオレンジジュースはこれって実は甘いの?酸っぱいの?とか、それがどのくらいの割合なのみたいな情報をしっかり捉えて再編集する。

でもその美味しい感覚は個人的な感覚なので、それは自分が美味しいと思うのは、こういう味みたいな、美味しいと思うその味の比率のグラフみたいなのを自分の感覚を可視化した上で、最後は自分の思いも込めて、これをこんな人に飲んでほしいみたいな思いを込めて、商品名やパッケージをつけてプレゼンテーションしたりするとか。

誰かのためにプレゼントを考えるとか、何か地域の人たちを楽しませるための縁日のコンテンツを考えるとか、結構そのお題は変わるんですけど、課題は解決しつつ、でも自分はどう思うんだろうみたいなことも考えつつ、こういうものがあったらいいなとか、こんなことが起こったらいいなっていう個人的な思いと、その課題とっていうのをうまく融合しながら、それをいろんな手法、ときには食、ときには物作り、ときには写真とか映像を撮り、いろんな表現を使ってアウトプットしていく。

廣木:それ週1とかで?

西山:週1でやってます。

染谷:そのメソッドというか、プログラムは皆さんで作っているんですか?

西山:そうですね。私たち誰も、その教育事業ってやったことがなくって。唯一、感覚として近いのは、私が建築学科で学んだ時の設計課題にちょっと近いです。

お題があって、自分はそれに対してどう思うのかっていうのが問われていて、何かそこに対したアプローチをして、その途中途中でもフィードバックを行ったり、また他者とともに作るとか、課題によってはグループワークとかで何か自分の思いを伝えるにはどういう言葉を選んだらいいかということ。

  自分はAって言ってる、この人はB、でもAとBを戦わせてどっちが勝つかっていうだけじゃなくて、一緒にC、Dの案を考えるにはどうしたらいいかとか。何かそういう対話のメソッドみたいなのを子どもたちと一緒に考えて実践したりとか、色々やっぱり社会で生きてる中で、ぶち当たるいろんな壁ってあるじゃないですか。

そういうものを楽しく乗り越えていくスキルを身につけたり、どう捉える視点を持っておくかみたいなことを子供たちとやってる感じです。

廣木:凄すぎます。

染谷:すごい。西山さんがいろんなところで交流会をされてたり、行政の方が視察に行くっていうのは拝見してたんですけど、西千葉工作室の外側だけじゃなくて、こういうメソッドを聞くとみんなが話を聞きたくなる理由が、今わかった気がします。

今までのその建築のその課題のアプローチとかが結果的に生きてるみたいなのは、後から気づいたものですか。それともやっててるうちに?

西山:後から気づきました。自分が今何かプロジェクトを作っていくときの、頭の思考というか、物事の考え方も結構建築を学んだことに影響受けているっていうのは結構後から気づいて。

ただその表現するものが建築っていうもので、そのプロセスが線を引いたり、絵をかいて設計して模型を作ったりして、それを誰かにわかってもらって、作っていく。そこのプロセスが違うものにこっそり変わっていただけで、結構やっていることは同じことをしているかもしれないなと。それは後から気づきました。

染谷:アプローチは共通なんだけどアウトプットが全然違うものになっているっていうのは、なんか今話を聞いて僕ももしかしたらそういうことができるのかもって希望があるというか、今なんかいろんなプロジェクトをやっているんですけど、もしかしたらそういうふうに何か子供と一緒に楽しめるコンテンツに変えるとか、そういうこともできるのかなと思って。

西山:できるかもしれないですね。

染谷:今の西山さんの活動は、先ほど冒頭も話されてましたけど、その自社プレイスというか、自分の場所2拠点の話と子供の創造事業と、いわゆるクライアントワークが半分半分って感じですか?

西山:クライアントワークがまだちょっと少ないんですけど、これが増えてきたらいいなと思っていて、クライアントワークと自分たちの自社プロジェクトは、完全に自社プロジェクトが見つけたメソッドを輸出するというか、インストールする先だけなので、クライアントワークの中って、やっぱりいろんな制限があるから、いろんな問いが生まれても、全部をここで試せなかったりチャレンジングなことができなかったりするじゃないですか。

先が見えないと、なんかこうやろうってなれなかったりとか、そういう問いを自分たちのところに持ち帰って、またここで実験をして、シンクタンク的な。

ここは本当に実験の場みたいな感覚でまたここで見えてきたものを持っていってみたいな、だからこそクライアントワークとは、何かを作ったらさようならではなくて、できれば継続している関係性であるといいなと思っていたり、クライアントワークの拠点が増えれば増えるほど、問いもいろんな所からたくさん来て、それをまた別のプロジェクトに持っていってみたいな、そういうみんなで良くなっていくというか、何かそういうネットワークみたいなものをだんだん作っていけるといいなっていうのをイメージしながら、今、プロジェクトをやっている感じですね。

廣木:いやちょっとヤバすぎる、凄すぎますね。そういう感じで図書館総合研究所はまちをつくるとか書いてある。全然。違いますね。こういう考え方でちゃんとやっていかないとダメですね。

染谷:なんか自社事業というか自分の場所とクライアントワークをそういうふうに相互作用的に高めていくみたいなのはまさにそうだなと。僕らは文喫って場所もあったりしつつ、いろんなクライアントワークをしているんですが、やっぱりおっしゃる通りで、その場所その場所の特性とか制限がある中で、こっちでやったことはこっちで提案できることじゃないものもあるし。

でも自分の場所までやってみようみたいなのもあるから、なんかそういうふうにやっていけるといいと思ったし、最終的に何かそれが切り離されてるんじゃなくて、緩やかなアライアンス関係みたいのがあるといいってことですね。

西山:そうですね。何かちょっと仲間を増やす感覚に近くて、最終的にその自分が作りたいものというか見たい景色っていうのは、自分の目の前で起こっていることがどうなるかだけじゃなくて、やっぱり社会がどう変わっていくかっていうところに、自分もどう関与できるかっていうことをすごくイメージしていて、でもそれはとてつもなく大きいものじゃないですか。

だから、私達が西千葉というちっちゃい街でちっちゃい活動をジタバタしても、とてもたどり着けるところではないけれど、一緒に同じようなところに向かってこうやっている場所、やっている人たちが増えれば増えるほど、その社会に近づく近道になる気がして、自分は大きなことはできないんだけれども、ちっちゃいけど、そこに対して挑む仲間たちがいっぱい増えるといいなと思っていて。

なので、ネットワーク作りというかクライアントワークと自分たちの関係性とそれが増えていく。いろんな関係性っていうのは、大きい社会をいい方向に変え、もっと良い方向に変えていくための大きな仲間ですね。

染谷:種火をね、少しずつそうやってね。それって何ていうんだろう、民間と公共を分けるのはあれですけど、ある程度共同意識を持って進められるパートナーがいれば。

なかなかどうしても縦割りになっちゃうみたいなところがあって、多分本当は公共図書館とそれぞれ(民間)がそういうふうに共伴関係を結べていくと、マインドセットとスキルをつければ同時に上がってくみたいな状況でできるわけですけども、それがなかなか、わかれてしまうみたいなところは今後どんなふうなアプローチができるでしょう?

西山:どうしてそうわかれてしまうんですかね。でも共に何か議論する場があったり、関係性だったり、そもそも、何かみんながその持ち場で色々やってるけど、目指してるところってこっちだよねみたいな大きな話をできる場があるとまたちょっと変わりそうですよね。そこの認識合わせをすることってなかなかできないじゃないじゃないですか。

染谷:廣木さん、その辺りはTRCさんとしてはいろんな図書館を運営されてる中で、そういう事例の紹介とか、対応例をいっぱい共通化できるものがあるんですか。そういう何かマインドセット的な部分とかっていうのはどんなふうに進めるとか。

廣木:マインドセット。

染谷:マインドセットというか何かの種火を渡していくみたいなところって?

廣木:難しいですね。

染谷:難しいですよね。なんかそういうのってどうやっていくといいんでしょうね。

廣木:でもなんかちょっと話変わっちゃうかもしれないですけど、役所というか行政ってやっぱり何か場だけを作れば何とかなると思ってるんですよね。あと縦割りで、自分の部署のことだけ考えるっていうこの二つがあるので、なかなか全体が繋がったりとか、あるいはその場だけセッティングしたけど、あとは、使う人どうぞみたいな感じになっちゃって、うまくいかないことがあると思って。

今日のお話って本当だからそういうのを打ち破るヒントっていうのがたくさんあって、それはもうまさにその種火をつけてくることの源流っていうか、そういうマインドを持って公共サービスもやっていかないと駄目なんだろうなと。

染谷:前に僕が言葉だけ思いついてまだ全然ふわふわしてるんすけど、「モチベーションインフラ」という言葉があって、それって何か面白がり力とか創造力みたいなものがいろんなところで何かこう、なんて言うのかな。インストールされてる状態ってまさに、西山さんがやられたようなことがいろんな場面で、種火がいろんなとこにセットされてる状況で、それがインフラ的に整うといいなと思っていて、何か電気ガス水道の次ぐらいに大事になるんじゃないかってぐらいに。

言葉だけでフワフワしてたんですけど、今の話を聞くと、実際にやってみたいことっていうのが何かそこにすごく繋がっていくなという感じがしていて、すごくヒントをいただきました。やっぱ仕組みと人をどうするのかっていうところなんですね。

西山:やっぱりあとはそれを支えていく、お金とかをどうするのか。やっぱり行政の方とかと、例えば私たちがやっているようなことを作りたい、公共でも作りたいから何か一緒にできないか、みたいなふうに相談を受けても、やっぱり人にお金がつけられないっていう。

イニシャルコストは用意できるけどランニングコストは用意できないみたいな。だから結構ご立派な場はできちゃうけど、そこを運営していくのにずっとかかっていく本来は大事なコストっていうのがもうすでに削られていて、なんか年度予算で、ここまではもうこの予算を使い切っているから。もうあれもこれもとりあえず入れてもいいよみたいな、だけどこっからは細々したやつでやってねみたいな話が多くて。

最初のイニシャルがあるってことも大事なんですけど、そこをちょっと削ってもいいから、何か色々出ていっている予算をもう1回見直して、もうちょっとでいいから何かランニングに予算がつかないのかなみたいな所は、やっぱりすごく課題だなと思っていて。

廣木:うん。おっしゃる通りですね。耳が痛い。

 西山:すごくやっぱり縦割りなことが課題じゃないですか、いろんな縦に割られているところにそれぞれ予算がついていて、でも図書館もそうかもしれないですけど、私達みたいなこうやっている場でもこれが何に寄与するのかっていうのは、すごく当然多面的で、教育にも寄与するけど、福祉にも寄与するし、またコミュニティみたいなものにも寄与すれば、下手したら環境問題ということにも繋げられるところもあるし、なんか本当にいろんな行政が縦割りで挑んでいるプロジェクトのどこにでも接続可能なものだからこそ、いろんな部署の人とたちが一緒に育てるようなプロジェクトであったらいいなと思うし、その費用対効果というか、小さなものでも、何かいろんな効果を発揮できるからこそ、ちゃんとそれを良い形で維持していく予算がもっとついてもいいと思うのに、縦割りの中で、「これはどこの分野のものですか?」とか聞かれるんですよね、でも全部、可能性ありますみたいな。

染谷:それどうやったら突破できるんですかね。

廣木:だから今役所側も縦割りをやめようって言って、今複合施設とかが増えていて、そうすると図書館もあって何とかもあってとかっていうと、昔だと全部所管が違っちゃって、同じ部屋というか建物の中に同居してるだけ、居候してるだけというのがよくあったんですよね。

それは全部所管から普通にやっちゃうと違うんだけど、まとめて一つの部署を作って、それで横ぐしにしてとかっていうのが割と今増えてきてはいるんですけど。でもそれも、なんていうんすかね。それでも施設の中だけの話で、もっと広い意味での街とかそういうことを考えたときって、またちょっと難しいんだろうなという感じもするので、まだまだいろいろ進化していかなきゃいけないんでしょうね。

染谷:全部盛り複合施設ができても結局縦割りのまま変わらず。それはなんかまち作り公社とか三セク的なものをかませることによって解決できたりするんですか?

廣木:かませたとしても、結局管轄している部署があるはずなので、そこがどういうふうな権限を持ってるかですね。

染谷:でもそこを超えないときっと多分進められない部分が出てきて公共の領域が出てくるってことですよね。

西山:そうですね。今おっしゃってた通り、箱の中だけじゃなくてやっぱりこの機能があることで、もっと街全体とかそこにあるいろんな側面に寄与できることっていっぱいあると思うんですけど、この中だけって考えた瞬間…。

廣木:そうですね。

西山:課題ですね。

染谷:このトークシリーズは、これからの図書館を作っていくプロジェクトでもあるんですけど、図書館をつくることがゴールではなくて、その手前とかその先みたいなのを作ることが目的だったというか、目指していく中で、今日の西山さんの話はもうなんか、ズバッとくる。

廣木:そのまま何か仕事の話したくなる。

染谷:ここでまずこのプロジェクトを一旦切ってそのまま企画会議になるくらい。ただ、時間的にもそろそろですね。こちらにいらっしゃるのでもし質問があれば、どうでしょうか?

ゲスト➀:西千葉工作室ってできてどのくらいなんですか?

西山:西千葉工作室はできて8年です。

ゲスト➀:思ってもみなかった地元の方々のこんなことが生まれたってびっくりしたことがあったら教えてもらいたいです。

西山:もう日々そんなことばっかりで、私達の想像を超えてくるんですよね。何かこう、私たちはものづくりが手段だと言いながら、やっぱりその物を作るっていうことをゴールにしている人がどうしても来ちゃうんじゃないかと思っていたし、と言っておきながらものづくりが手段ってどういうことなんだろうって自分たちもまだ始めた頃、ふわふわしていたところはあるんですけど、そういう使い方の人が出てきて。

 例えばなんですけど、近所の中学生の男の子が卓球部なんだけど、自主練をしたいと。でも卓球は1人じゃ練習なかなかできないんじゃないですか。玉が出てくるマシンが欲しいと。でもそれがお小遣いで買おうと思ったら高くて買えなかったとそこで諦めるんですよね。

だから工作室に行ったら、それが作れるかもと思って来ましたって言って、何かそのマシーンを作って帰って、練習をして、大会に勝てて、勝てたよって報告に来てくれるみたいな。スポーツとものづくりか!とか、何か部活動と物作りって考えもしなかったなとか。

焼き菓子を焼かれて、ハローガーデンで時々マルシェみたいなのもやっていて、そこに出店している主婦の方が焼き菓子を焼くのに、自分のお店のロゴも自分で作って、そのロゴの形のクッキーを焼きたいから、3D_CAD教えてくださいって。

その方その3D_CADを自分で使えるようになって、オリジナルのクッキー型を3Dプリンターで出して、それでクッキーを焼いているとか、すごく些細なことではあるんですけど、こんな風にものづくりを自分の商いだったり、やっている趣味だったりに、取り入れていくというマインドをこんなにも、今お話した一例で。そういう人たちが日々来るんですね。

結構利用者さんに驚かされるとかこちらが可能性を広げてもらっているなって思うシチュエーションってたくさんあって、みんな発想力とか、こんなことできたらいいみたいなマインドは持ってる人は本当にたくさんいて、それやっぱり形にする環境とかそれを支える人がいれば起こっていくことももっとあるんだなっていうのと、なんかそういう人がいるからこそ、そういう方たちの姿勢をもっと発信していく、こんな人がいるんだよ、こんなふうに使った人がいるんだよって発信することで、全然物を作るっていうこととか、ピンとこなかった人も、なるほどそういうことかって誰かの姿を見て引っ張られていく人もいるかとすごく思っていて。なので日々、自分たちがまだ可能性を計り知れてないなと思ってます。

廣木:だからあれですよね。西千葉の人が特殊なわけじゃないそうですよね。もっとそういう場もあって、これがだから可能性をどんどん誘発してってていう。

ゲスト②:子供創造室って、お子さんたちが与えられたいろんな課題に対していろんな行為をもって解決する。週1回とお聞きしましたが、一つの話題に対して皆さんどれくらいのスパンで取り組んでらっしゃるんですか?

西山:コースによって違うんですけど、ベーシッククラスとアドバンスクラスっていうのがあって、割と難易度が低い1年生から入れるクラスと、それを経てちょっとバージョンアップした3年生からしか入れないアドバンスクラスがあって。

ベーシッククラスは2週間でキット課題に取り組むことが多くて、ベーシッククラスだと2週目でちょっと練習というか、ものを見る視点をインプットしたり、それにまつわる表現っていうのを練習してみて、それを使って、その本番のミッションに挑むのが次の週みたいな感じで進んでいくんですけど、アドバンスクラスはもう、1ヶ月とかものによっては1ヶ月半とか、そういう時間をかけて考えるってこととアウトプットするってことと、それをさらに改良するってことだったり、何か人に伝えるって時間、プレゼンテーションする時間を持ったり、そういうものを結構たくさん作るようにしているので、どうしてもワークを終わりきるのが長くなっちゃって、結構長期戦だったりします。1年でおしまいで、一応卒業します。

習い続けるのではなく、卒業制で、最後は卒業制作と展示発表会までして終わりです。

染谷:すごいなあ。何名ぐらいの方が参加されるんですか。

西山:ベーシッククラスは10人の子どもをみていて、アドバンスクラスは8人。

染谷:いや、すごい英才教育ですよね。

西山:でもアプローチできる子供たちがやっぱり限られているので、何かそれとは別にやっぱりもうちょっと間口が広いものも、単発とかでやっていけるといいなあと思うし、そういうことはできれば公共事業とかと一緒にコラボレーションして、何かやれる環境をもらえるといいなと思ってるんですけど。

廣木:それも8年前から?

西山:それは4年ですね。西千葉工作室とかハローガーデンとかをやっていて、何かそういうところから、子供たちとやらないと、わかっても使えない子がたくさんいたりとか、ちょっと教育に危機感を感じて。

正解をすごく求めてくる子どもたちがあまりに多い。教えてほしいし、間違いがないようにみたいな。でもその正しいなんてないし、正解なんてないし、みんながやっぱりどうしたいって思うかがすごく大事だっていうのと、自分だけが正しいわけではなくて、他者と対話の中で、違う可能性を見つけていく大事さと、何かそういうことをやっぱり一緒にやりたいなあって子どもたちを見ていて思うので、途中から始めました。

廣木:卒業生が4期生ぐらいいるってことですよね。

西山:いますね。

廣木:その子たちはその後どうなったとかは?

西山:地域にいるので、様子を見られる子もいるんですけど、今まで1年じゃなくて半年だったりとか短かったりもして。あとそういう活動がどのくらいその子たちに直接影響を与えられたのかっていうのを測る手段がまだ私達もなくて、様子を見ている感じではあります。

染谷:でも確実に何かが溜まってるんですねきっとね。それが最終的に花開く場面が何年後、何十年後かとかになるんでしょうけど。

ゲスト③:廣木さんに質問なんですけど、さっき西千葉工作室のキーワードで「ものづくりの民主化」というのがあったと思うんですけど、クラフトの手段を持っていると、どういうふうに暮らしが変わるのかっていうのをビジョンとして持っていると思うんですけど、今図書館でファブラボ的なものが導入ときにはどういうビジョンで導入しているとお考えですか?

廣木:それが元々何でこんなに入ってきてるっていうか、そんな数はないんですけど、それが不明なところがあるんですよまず。僕なんかは入れるんだったら意味がないと駄目ですよねっていうとこから始まって、その意味をずっと探したりしてたんですけど、一方源流となってる北欧とかの図書館っていうのは、意味なんかほとんどなかったりするんですよ。

当たり前に生活の中で、そのものづくりできますよみたいな。それももう当たり前って言ってしまっているけども、本当はこういう活動っていうか、そういうものがあって、元々そういうコミュニティみたいのがあって成立してたのかもしれない。ていうことんなるんですよね。

  だから、今僕は物真似をしてるだけになっちゃってるところがあると思っていて、逆に言うと、僕自身に今答えはそれまでなかったけども、今答えがありますっていう、今日の話で。

インプットアウトプットの話は本当にそれは僕は図書館に置く理由の一つだとずっと思ってて、そこにあるとインプットがあって、ものづくりっていうアウトプットがあると、この循環は絶対に正しいっていうか、必要なものなんですよね。それをする場としてあるっていうだけでも意味はあると思ってるんですけど。だけど、それをそれ以上…みたいなとこが今までずっとあったっていう、そういう感じですね。

ゲスト③:さっきの卓球少年の話があったじゃないですか、あれ結構僕はレファレンスとも似ているなと思って。こういうインプットの仕方がある。こういうアウトプットの仕方があるよっていうなんかレファレンスのオルタナティブとしてそういうファブラボがあったりとか、工作室みたいな形は、一つあると思いました。

廣木:そうですね。だから図書館って課題解決をテーマとしてるんですよね。まさにだから、ファブラボがちゃんと使われるのであれば、その人の課題解決をする一つの方法なんですよ。だから、本で解決することもあるし、こういう物作りっていうもので解決する。

だから多分クリエイターとかっていうよりも、本当にさっき椅子がちょっと欠けちゃってお気に入りの椅子なんだけど、高さが足りなくなっちゃったのをファブラボでその分作ってやるとか、それって市民の課題解決だと思うんで、本当はそういう意味っていくらでもあると思うんですよね。まさにおっしゃる通り、レファレンスの新しい形っていうか、一つの形というふうに言うことはできると思います。すいません、質問受けちゃって。

染谷:インとアウトのサイクルを回すして摩擦を小さくするが図書館と一緒にやる意味とかってなってくるし、図書館で普通にやれてることが、そっちのスペースに転用できるみたいなことがあるということですよね。

西山:何かそう思うとアウトプットの形も暮らしの中にあったらいいなと思いますね、いろいろあると思うので、何かそういうシチュエーションがどれだけインプットの場と隣接して、環境として持てているかは何かすごく大事な気がしますね。

染谷:そうですね。何か課題解決だけの場所じゃなくて何か予感とか兆しみたいなのを求めていくみたいなことも同時にできるといいなって感じはありますよね。

西山:時にはそこでいろんな起きていることの中から、次の何か問いが生まれたり。

染谷:そうそう、さっき海外の話が廣木さんがされてましたけど、西山さん海外の事例とかそういうのって何かご存知だったりしますか。

西山:ヘルシンキのオーディとかは3Dプリンターとか新しい機器を導入して、やっぱすごく話題になってたじゃないですか。私は実際に見には行けてないんですけど、それが使われている様子をどういう状況かなって聞いたり、リサーチとかすると、やっぱりミシンだったりオーバープリンターがあったりするんですけど、やっぱそれを教える人がそこについている様子が見られますよね。

でも日常的に何か特別なことをせずに使ってる様子が見えたりとか、結構海外とかに旅行に行ったり視察に行ったりすると、図書館って必ずそういう機能があったり。

  日常的に人が使ってる公共サービスって何があるんだろうと見るようにしてるんですけど、日本よりもかなり公共サービスを自分には使う権利があるし、使い倒すべきものだと思っていっぱい活用をしているような気がして。

意外と日本人って、私も含めてなんですけど、公共サービスとか公共空間ってどのくらい良い意味で活用しきれているんだろうかっていう感じもするんですよね。

せっかくみんなが払った税金とかで運営されているものが、もっと自分たちがここを日常的に使うんだっていう、空気というか、やっぱそういうものも、どうやって作っていけるのかなって。自分も使い手側にちゃんとなるし、何かそういう状況を作っていくのに何ができるかなってちょっと思うこともあったりして。

廣木:あれなんですかね。日本人は使いたがらないっていうか、どうなんですかね。なんかこれって西千葉工作室を作ってその後使ってもらうように周知していった活動と同じっていうか。

もうただ公共施設の場合は「作りました、終了」みたいなとこあるじゃないすか。宣伝はすると思うんですけど、何かそういうのが足りないのか、それとも日本人が奥ゆかしくて使わないのか。

西山:両方なのか。

染谷:ここは自分の場所だ、ここはいいぞって思ったら多分ね、使ってくれるはずなので、そこまでのアプローチをどうするのか。特に公共施設だと足りなくなる傾向があるってことだと思うので。そこは何かやり方を考えたいですね。

西山:そうですね。そういうことを考えてるときに私がいつもセットで出てくるワードが「寛容性」。みんなの場所って何かみんなをうまく管理しようと思うと、何か個別解が出てきたときにコントロールしづらかったりするから、均していきたい。

そうすると誰にとって居心地がいいのだろうかとか、どこまではやって良くてどこまでやってはいけないのかとか、そのルールをどこに引いていくかみたいなので、本当はなるべくいろんな人を許容できる空間の方がたくさんの人が使えるはずだけど、いろんな人がいるっていう状況を、みんなが心地よくない可能性もありますし。その公共の場を考えたときに、やっぱりその寛容性みたいなところをみんなどう捉えるかみたいのをセットで課題だなってよく感じるんですよね。

染谷:なんか全員に対して開いてなきゃいけないのかっていうかね、パブリックってどこまで開く必要があるのか。つまりその偏った公共というか、何か一部の公共みたいな使い方ができないですしね。その辺は難しいテーマですよね。

西山:そう思います。自分たちの場を運営していても、何か起こってくる課題を駄目とするか、よしとするか。例えばそのタバコを吸いたい人がいたときに、私たちの施設ではそれをよしとするか駄目とするのか。

暑いって思ったときに、上半身のTシャツを脱ぐような子供たちをよしとするか駄目するかとか。他者にもいろいろ影響を与えてしまうものだったりするじゃないですか。

あとはどこまで怪我とかをしない安全性を担保するのかというときに、どこの誰の感覚を標準するのか問題みたいなのがでてきて、それをもう問題が絶対起きないようにって均していくと、何かこう、そこに訪れる理由とか魅力とかが誰にとってもなくなっていくという課題もあって。それはなんか、公共ではどう議論してるのかなってすごい聞きたい。

廣木:議論っていうか、かなり明確な感覚があって、問題になったらその瞬間になくなっちゃうわけですよ。その繰り返しで、どんどんどんどん平準化じゃないですけど、シュリンクしてっちゃうっていう。

染谷:何かルールとして明文化して均していけばいくほど平易化したり面白くなくなったりするわけですよね。でもそれが、みんながこの場所を良くしようとする、なんていうのかな、お作法とかムードとか行動みたいなものが醸成されていれば、そんなことが起きずとも、難しいことを言わなくても面白くなるみたいな。そういうグルーヴみたいなのが生まれるかもしれないですよね。

廣木:クレームとかあります?

西山:めちゃくちゃあります。

廣木:それは、聞き入れるものもあるし、突っぱねるのもあるわけですよね。

西山:そうですね。それはやっぱり私達が作りたい場に対して、そのクレームが盲点だと思うものとかは改善するし、いやそのクレームはやっぱり、あなたの感覚であって、私達が作りたい場の方向性と向かうベクトルが違うわと思ったら、ちょっとツーっといなすみたいな。でもそういうことができるのもなんかやっぱ民間の強さでもあるのかなと思ったりもして。

廣木:だから公共だと、今の理論でいくと、いや税金払ってんだからっていう理論になっちゃうんですよ。

染谷:だから私立の公共は作れるけど、公共施設は公共の公共になっちゃうから。全てを、そのレイヤーが違っても同じように受け取らなきゃいけないって話になってしまうと。なるほど。めちゃくちゃ考えがいがあるテーマですね。

廣木:今日が最終回でもいいぐらいです。

染谷:色々ヒントをいただきましたけど。ぜひちょっと僕も実はまだ西千葉工作室におじゃまできてなくて、おひさまテラスでやり取りしてるんですけど、西千葉に今度行って。

廣木:ぜひぜひ。直したいものとか持って。

染谷:それではマイキーのディレクター西山さんでした。ありがとうございました。

西山:ありがとうございます。