【きくこと】第14回 一般社団法人公共とデザイン 石塚理華
石塚 理華
一般社団法人 公共とデザイン 共同代表。
千葉大学工学部デザイン学科・同大学院卒業。在学中にグラスゴー美術大学・ケルン応用科学大学に留学、国内外の大学にてサービスデザインを学ぶ。 大手事業会社、受託開発会社の共同創業者を経て、〈多様なわたしたちによる新しい公共〉を目指し、企業・自治体・住民と共に手を取り合い民主的な環境を耕していくためのソーシャルイノベーション・スタジオ「公共とデザイン」を設立。渋谷区との住民参加型イノベーションラボ伴走支援、〈産む〉にまつわる価値観を問い直すデザインリサーチプロジェクト及び展示『産まみ(む)めも』、都市資源の循環を足立区の住民と共に実験する『あだちシティコンポスト』など。共著に『クリエイティブデモクラシー』(BNN)。
染谷:図書館について語るときに我々の語ること、始めていきましょう。ということで第14回。株式会社ひらくの染谷拓郎です。
廣木:図書館研究所の廣木です。
染谷:そして今日のゲストは石塚さん。
石塚:公共とデザインの石塚と申します。よろしくお願いします。
染谷:このトークセッションは、いろんな分野で活躍される方をお呼びして、いろんな話を聞きながら、こんな風に図書館がなっていったら良いなとか、そういったことを最終的には見つけていきたいという感じでやっています。そして今日は石塚さんに来ていただきました。
廣木:まずは「一般社団法人公共とデザイン」とはなにか、から聞きたいですね。
石塚:公共とデザインの社団法人は2021年に3人で設立して、今も一緒に3人で共同代表をやっています。
今やっていることとしては、社会課題に取り組むとか、どうやって未来を作ってこうかということを考えていく時に、まちづくりだったら、住んでいる人がその当事者であるし、ある意味社会課題と言われているもの、あるいはまだ課題として定義はされていないんだけど、その問題の渦中にいる当事者の人たちと、どのように立ち向かっていくかの方法を一緒に探していく、というようなことをやっていて、
そのためには、企業と住民だったりとか、住民と行政だったりとか、あるいはそれをみんなが繋いでいけるようなものが必要だと思っていて、そういうのをプロジェクトとしてやっています。
実際その中で私たちがもっとあったらいいのにと思っている未来としては、私がいて、私じゃない人がいて、自分が全然見えなかった自分の可能性みたいなものって、自分と異なる他者と関わることで、その違う余白とか、新しい可能性みたいなものが見えてくるなと思っていて。
そういう他者と出会って、時には共にいること自体がすごく痛みを伴ったりとか、疲れちゃったりもすると思うんですけど、でもそうしていかないと、結局自分のもっとこうできたんだとか、こんなやり方もあるんだみたいなものを発見していけないので、
そういうものと出会うような場所だったりとか、あるいは自分がこうしてみたいって思った時に、小さな活動であっても、それを社会に対して表明していくことが民主的な環境を作っていくんじゃないかっていうところで、そういう社会環境だったりとか、社会のインフラストラクチャーみたいなものを私たちが作っていくお手伝いができればいいんじゃないのかなっていうところで活動しているというような感じですね。
染谷:そういう活動していくにあたっては、そうではない状況がすごくあると感じていたから立ち上げたということですか。
石塚:そうですね。行政とか企業もそうだと思うんですけど、基本的には生産する人がいて、ルールを決める人がいて、あなたたちはこのルールに従ってくださいね、あなたたちはこういうことをしてくださいねというのを与える側と、それを受け取って消費する側という構造に分かれてしまっていると思うんですね。
特に今の日本の状況としてはそういう傾向が強いと思っているのですが、そうではなくて、そういう場を企業なり、行政なりが作って、一緒にそのやり方を考えていきましょう、というような場を持たせることもそうですし、実際にそこに関わってくれた住民とかいろんな人が、非対象的に搾取みたいな形になってしまうことがやっぱりあるんですよね。
ただ参加してくれることにだけ意味があって、参加する側にはあんまり意味がないとか。そうではなくて、そこに関わってくれた人たちにもその人生の中ですごく意味があるような場であったりとか、そのプロジェクトだったり、場を通じて彼らの人生が一緒に豊かになっていったりとか新しい可能性を広げていくような形を見出してけるといいなというのを考えています。
廣木:元々この公共とデザインをやられる前に、こういう活動をしていこうと思ったきっかけはありますか。
石塚:元々分野として興味を持ったのは、私は大学院までデザイン系の学校に通っていたんですけど、4年生の後半と大学院生の前半で半年ずつ2回留学するというプログラムに行っていて、スコットランドの美大とドイツのケルンにあるデザインスクールみたいなところに行っていたんですね。
スコットランドの方はグラスゴーっていうちょっと寒い地域で、音楽が有名なところに美大があって、そこのデザイン学科に行っていました。
私が自分の大学でやっていたデザインの授業ってインハウスのデザイナーになる人が多い学校なので、企業活動としてのデザインみたいなものが結構多かったんですけど、グラスゴーの授業で行政に向けて一緒に提案していくみたいなプロジェクトをやっていたんですね。
1チーム大体5人で4チームぐらいあって、それぞれエネルギーとかパブリックセーフティとかヘルスケアとか、それぞれテーマがいくつかあって、それを本当に市役所に行って市役所の人たちにプレゼンテーションする、たしかプレプレゼンとリアルプレゼンみたいなのがあった気がするんですけど、その仕組みづくりみたいなことを授業の中でやっていたんです。
それが結構自分の中ではこんなことができるんだなっていうのはすごくあって。
そこから、当時はそういう言葉使ってなかったんですけど、社会の中のソフトのインフラを作りたいんだっていうのを私は言っていて。
ただ帰ってきて就活して探してみたんですけど、未経験の大学生から雇ってくれる会社もそんなにないですし、当時そういうことを言っているデザイン界隈の人ってあんまりいなくて。
特に実的なデザインの世界だとウェブデザインとか、特にボタンを改善してクリック率を上げるかとか、ビジネスのためにデザインをいかに寄与できるかというところがすごく議論されていた時代だったので、そもそもそこに公共とデザインみたいな被るテーマで興味を持っている人がいなくて。
ただ、ちょうど同じタイミングで、そういう界隈に興味がある人が、小さなグループとしてはやっぱりいて、そこのスラックチャンネルみたいなものが作られて、たまたま招待してもらって、コロナの前に一度リアルでもつ鍋会みたいなものがあったんです。
その時に同世代でいたのが私と、今一緒にやっている2人。1人はフィンランド留学中だったのでそこのもつ鍋会をリモートで見ていて、鍋は食べられないみたいな感じだったんですけど。
その後1年ぐらい特に何かやっていたわけではなかったんですけど、私としてもやっぱりこういうことに興味がある人はいるんだなっていうのもあったし、実際入った会社ではそういうことをやっていたわけではなかったので、いつか仕事にできたらいいなっていうのを考えていた時に、一緒に共同創業した2人が海外のそういう事例とか、海外のラボとかを調べて、自分たちで調べるだけだと多分やらなくなるから、記事を書いて出していこうと思うんだけど、興味ある人いませんかっていう形でスラックでみんなにお声がけしてくれたんですけど、じゃあやりますっていう形で一緒に始めて。
noteのメディアを1年ぐらい、週1で1週間に1回1人が出す、1人が出して週1でリリースできるような形で、いくつかプロジェクトなどを調べながら雑談するみたいなことをやっていました。
ちょっと長かったですけど、それがプロジェクトになって、仕事になって今の活動に至るという感じなので、結構私たちの活動も自分たちの今の理想と現状のままならなさに対して、なんか小さくてもいいからちょっとやってみようかというところから会社化したっていうようなところが大きいかもしれないです。
染谷:最初はメディアからスタートして、いろんな事例を自分たちなりに解釈して紹介していくところから始まって。そこからこうプロジェクトワークになっていくまではどれぐらいの期間があったんですか
石塚:でも1年ぐらいですね。たまたまお会いした方とちょっとプロジェクトになるっていうタイミングがいくつかあってという感じですね。
染谷:いわゆるその意匠としてのデザインっていうか、グラフィックデザインとかではなくて、そういうコミュニケーションデザインとかソーシャルデザインみたいなところに、そっちの方がはまるみたいな感じがあって、その2人との出会いがあってみたいな。意匠としてのデザインももちろん、元々はそっちから入っているわけですか。
石塚:そうですね。私も含めて三人ともWebのデザインとか企画みたいなところをやっていたりもしたので、静的なビジュアルデザインとかグラフィックデザインと比較すると、連続的なコミュニケーションみたいな側面があったかもしれません。。
廣木:グラスゴーで、学生の頃に、色々提案していって、実現したものっていうのはその時もあったんですか。
石塚:少なくとも私のグループでは直接はなかったと思います。ただその発表を見た別の学生とかが、なんか面白いねこんなことなら学校で実現できるんじゃないみたいな感じでちょっと話したよみたいなこととかはグループメイトから聞きました。
廣木:例えばどんな提案だったんですか。
石塚:私たちがやっていたのはエネルギーの課題です。燃料貧困っていうテーマで行っていました。日本でいうエンゲル係数が高いと生活水準が低い、みたいなのがあるじゃないですか。
冬寒いところなので、家庭で燃料に使っている割合が高ければ結構ひっ迫しているっていう課題があって、燃料貧困に対してアプローチできないかみたいなプロジェクトをしていました。提案はまあ、学生なので、そこまでめちゃくちゃいいものという感じではなかったんですけど、でもそういう問題を特定していきながら、誰を巻き込んで、どんなことをしていったらいいのかっていうところを色々ストーリー立てて行うっていうところが面白かったですね。
廣木:グラスゴーって寒いんですっけ。
石塚:寒いですね。寒いけど雪降らないんですよ。あまり雪は降らないんですけど、編成風か何かで雨はめっちゃ降るんです。
1日の中で、冬とかだと雨が降って止んで雨降って止んでみたいな感じなんですけど、雪はそんなに多くない。ただめっちゃ寒いっていう感じですね。
廣木:パステルズとか。
石塚:モグワイとか。
廣木:プライマルスクリームはグラスゴ―…じゃない?
染谷:グラスゴー出身バンドっていっぱいいますよね。そういう土地。
石塚:ヨーロッパは多いと思うんですけど、ストリートで音楽をやっている人もすごくいますし、音楽バーみたいなのも結構あって、友達とお酒飲みに行ったりとかしてました。
廣木:楽しそうだな。
染谷:行ってみたいな。公共とデザインっていうなんか割とこう「○○と○○」の時に、一番繋がって欲しいのに、並べてこなかった言葉だなと思ったというか、「公共とデザイン」っていうのを見た時に、うわ、やられた!じゃないですけど、なんかストンってきたっていうか。なんかその字体感がすごくいいなと思ったんですよね。この名前についてすごい色々言われないですか。
石塚:色々言われますね。ちょっと強い名前つけたねみたいな感想が多いですけど、どっちも定義がすごく難しい言葉なので、公共っていう言葉を使っている側からも言われるし、デザインの側からも色々言われるんですけど、一番いい名前かなって。
結構前なのであんまり覚えてないんですけど、いろんな名前を考えていて、一番最初のメディアの名前がこの公共とデザインっていう「パブリックアンドデザイン」という名前でやっていたんですけど、公共とデザインって漢字とカタカナで書くのが一番しっくりくるんじゃないかなっていうところで、最終的にそうなりました。
染谷:活動が始まって今で何年ぐらいになるんですか。
石塚:3年経って、今が4年目とかです。
廣木:年間どれくらいのプロジェクトをやられてるんですか。
石塚:最初の年とかもそんなに多かったわけじゃないので、大きい1つのプロジェクトでずっと続けているものと、細かいもの、例えば3ヶ月とかのものが、去年だと1、2個とか。
私も本当に週5になったのがこの1月末で、並行していくつか仕事をしていたので、2月からフルタイムになったんですけど、それまでも他のメンバーも全部の時間を公共とデザイン使えるわけじゃないので、プロジェクト数もちょっと抑えたりしていて、今もそんなにたくさん受けられるわけじゃないんですが、大体年間3、4個とか大小色々あると思うんですけど、そのくらいのものが多いかもしれないですね。
廣木:クライアント的には何になるんですか。やはり行政側ですか。
石塚:行政、企業が半々くらいです。
廣木:行政側はなんて言うんでしょう、その社会課題に対してのソリューションっていうか、色々考えてくっていうことだと思うのでニーズがあるということなんですか。
石塚:行政側もお声がけしていただく理由が結構まちまちで。今大きい案件としてやっているのが渋谷のプロジェクトなんですけど、社会課題を解決というか、対峙していくためのイノベーションを生み出そうっていうイノベーションラボ。
そこに住民とかがどう関わっていけるかとか、どういう風に人との違いと出会ったり、その違いと混ざり合ったりするような場を作っていけるかっていうものを渋谷でやっているので、割と社会課題みたいなこととかイノベーションみたいなところが中心です。
他の案件とかでご相談いただいているのとかだと、シビックプライドとか、自分の内発性みたいなところからそれを表現していく過程を通して、地元に対する愛着っていうと、ちょっとなんか絡め取る感じがして私はあんまり好きじゃないんですけど、今まで見えてなかったレンズで自分の地域を見ることができるとか、なんかそういうきっかけを作っていくようなプロジェクトだったり。あるいは地域ブランディングみたいな文脈で、子育ての移住施策をやりたいんだけど、実際にこその地域に住んでる子育て世帯がどういう状況なのか分からないから一緒にリサーチしていきながら、実際どうなのかみたいなものを見出していきましょうというところだったりとか。
ワークショップワーク設計みたいなところだったりとか、リサーチで入って一緒にやっていきましょうみたいなものとかが多いかもしれないですね。
廣木:渋谷のイノベーションラボって今話に出ましたが、案件的には割と都市部が多いですか。それとも地方というか。
石塚:やっぱりまだ4年目なのでたくさん案件を持っているわけじゃなくて、今私が関わっているものだとその渋谷の案件と、今年やる予定のものは結構地方の案件です。
ただやっぱり関わり方は結構難しいなって、自分でも渋谷のプロジェクトやって感じていて。
距離的に遠いと、数年間一緒にやりながらインストールしていったりとか、明け渡していったりとか、そういうきっかけはできると思いますが、自分がじゃあ責任を取りますって言えるぐらい背負って長い期間やっていけるのって、そんなにたくさんの地域では難しいかもしれないっていう感じがあって。
私は今東京に住んでいるので、東京近郊が多いんですけど、他のメンバー2人が京都に住んでいるので、案件的にはそっち側の関西の自治体とやったりもしてますね。
染谷:本当に自分がコミットできるのって限界がありますよね。それはすごくわかります。さっきなんか愛着という言葉に、なんか絡め取るみたいな印象があるという話がありましたが、もうちょっと聞いていいですか。
石塚:なんかシビックプライド持たせましょうと、愛着を持たせましょうって結構一方的だなと思っていて。
自分が子供で、親からプライドや自主性を持てとか言われても、知らんがなって思うなっていうのをすごい思っているのと、結構自分自身もすごく考えているところで、私も地方出身なんですけど、そんなに分からない時に愛着持ちなさいって言われたら、なんか逆に嫌いになるんじゃないかなと思って。
しかも囲い込みみたいなのもちょっと嫌なんですよね。じゃあその場所に本当にずっと留まることが、若い子というか、そこに生まれ育った人たちにとって本当にいいことなのかっていうところは、自分が出てきた側なのですごい考えてしまって。
ただもちろん出ていく人もいるし、残っていく人もいる、その中で出ていった人も出ていった人なりの関わり方があったりとか、あるいは関係人口的な意味で全然関わりはなかったんだけど、その街に薄く関わるみたいな方法があったりとか、なんかそういう道を見つけることはできるのかなと思っていて。
なので、その愛着を持ってくださいじゃなくて、その場所を見るための違うレンズを一緒に探すっていうようなニュアンスなのかなと、ちょっとモヤモヤと今考えてます。
廣木:僕の話をしてもしょうがないんですけど、市川力さんっていうフィールドウォークをされている、ジェネレーターと言われてる人がいて。
「なんとなくあるく、なんとなくあらわれる」https://note.com/kataru_lib/n/nb0a4d5f60d86っていうイベントをここでやったんですね。子どもたちが来て。「歩く」って「止まる」と「少ない」って書くじゃないですか。だから止まって少しずつ歩く、少しずつ歩いて止まるみたいな、そういう意味があると。
その辺を歩いてても、子どもって何でも気にするじゃないですか。それを写真に撮って、1時間ぐらいかな、その辺を歩いて帰ってきて、撮ってきたものを絵にしてっていうのをやったんですけど。
なんかそのまちの名物とかいろんなものって結局誰かに、歴史的な経緯もあるけど、決められたものっていうか。普通の街づくりイベントとかやると、ここってこうなんですよ、とかって名物みたいなものを出して、それの再確認で終わっちゃうんですよ。
それが、「なんとなく歩く」をやった時は本当になんとなく歩いて、なんとなく何かそのまちの新しい、子どもたちが見つけてきた、それこそ違うレンズで覗いた名物が現れてきたので、なんかシビックプライドを醸成するとかよく言うけど、それをなんか押し付ける感じじゃない方がいいなっていうのは、お話聞いて思いました。
石塚:本とかでもそういう話をしていて、友達にも言われたんですけど、シビックプライドって多分言葉を自分たちはあんまり使ってないんですよね。
あんまり使ったことがなかったなと思ってちょっと調べたんですけど、代理店が商標を持ってるんですよね。
だから目的としてはその主体性を持つとか、さっきのレンズを探すみたいなところというよりかは、何か伝えていくところの文脈で使われていたというところが大きくて、言葉が先にあるみたいな形になっちゃってるのかなっていうのも考えていました。詳しく調べていないので、本当のところはわかりませんが。
廣木:商標は?
染谷:読売広告社さんですね。
廣木:そうなんですね。じゃあ使っちゃダメなんですかね。
石塚:変な言葉の使われ方をされたりしたら感じですよね。多分よっぽどのことがないと権利行使はされないと思います。
染谷:都市生活研究所みたいな、その街の価値を上げるプロジェクトを代理店さんとしてやられていて、その中で使われているという感じみたいです。
違うレンズでも、自分側の好奇心とか面白がり方がないと、多分できないじゃないですか。
与えられるものを受け手としてやるのは嫌だけど、とはいえ自分でこっちが面白い、こっちいいなって思えるには、こちら側の感性を高める必要があるじゃないですか。そこのアプローチはどうしていますかっていうか。
それって割とその人の今までの積み重ねみたいなところがあったりするじゃないですか。
何に面白さを感じられるかって、教養って一言で言ったらあれなんだけど。なんかレンズのインストールの仕方みたいなところの話だと思うんですけど。
石塚:難しいですけど、なんかそれぞれレンズの欠片みたいなものは別の色で持っている気がしていて、それを最大化するみたいなのももちろんある気がしていますし、分かりやすく言ったら、いろんな分野のいろんな人を呼んでくるとか、なるべく私たちがいろんな人たちを混ぜながら、違いを見出せるような環境を作っていきたいと言ってるところって、そういう自分と違うものを持ってる人ってやっぱり全然違う人だと思ってるんですよね。
そういうところを繋げていくようなこととか、改めてそういう話をするような場や仕立てをすることが多い気がしますね。
染谷:このセッションも多分そういう意図が結構あって、いろんな人に来ていただいて話をすると、そんなレンズがあったんだみたいな、結構やっぱりありますね。
廣木:染谷さん、結構もうすぐ時間が来ちゃうんですよね。だからどうしても聞きたいことを。
染谷:すぐ時間がきてしまいますね。
廣木:じゃああと2問ぐらいしましょうか。僕から、さっきその行政側が多いのかとか質問したのは、なんかその行政ってカチっとした仕組みを作る側っていうか、イメージが割とあるんですよね。
僕らも図書館つくる時とかにワークショップとかやるんですけど、それって住民から意見を聞いているようで、本当に聞いてるのかっていう気がいつもしていて、でもそれってなんか行政側が望むワークショップって本当に結構そういうことなんじゃないのって。これ、こういう風に言っちゃうともう仕事が来なくなっちゃうかもしれない…。
となると、結構そこまで本気の、石塚さんがやられてることとかを行政側が頼むって、結構覚悟がいるんじゃないかなっていうか、どういうモチベーションなんだろうなっていう。
そこまで本気でちゃんとやろうっていう行政自治体が増えてきたっていう、良い事なのかなっていう、全然質問じゃなかったですね。これ感想言っているだけになっちゃう。
石塚:私は前後の比較はできないんですけどでも、どうにかしたくてとか、もっとこうしたらできそうなのにと思って強くコミットとしてくれる人、一緒に今仕事してる人たちは、すごく多いなと思っていて。
とはいえやっぱりなんかやったことないことに対して、こうやったらもっといいんじゃないかとか、こうしたら面白いんじゃないかって言える人ってすごく多いわけじゃないと思うので、時間を使えるプロジェクトなのであれば、少しずつそういうことをカルチャーとして耕していけるかみたいなことが結構肝になってくるんじゃないのかなとは思ってますね。
成功体験というと過ぎる言葉かなと思うんですけど、失敗してもいいよね、失敗してもこういう学習があって次のサイクルを回していけるよねみたいな体験ができているかとかって、結構行政においては重要な気はするんですよね。
特に守りとしての機能や役割も多いため、失敗できない文化の影響がすごく大きいっていう意味で。だからそこを、失敗しても大丈夫なところからやれるとか、そういうなんか安全地帯みたいなところを作っていくみたいなことが本質的には重要だと思っています。
染谷:行政として発注すると、どうしてもちゃんとアウトプットの形になってるかみたいな。
ワークショップで集めた声もすごく均されて、最終的にはなんかうまくまとまった感じで報告書を提出してみたいになるじゃないですか。
どこを失敗とみなすかみたいなのはありますけど、発注の方法から変えないといけないとか、そういう感じになりますね。
石塚:これは企業側でもあんまり変わらないと思うんですけど、やっぱり発注者シリテラシーみたいなものが大事な気がしますけどね。
染谷:僕はそれクライアントシップと呼んでいて、クライアント側のリテラシーはやっぱ必要じゃないですか。それは本当にありますね。
じゃあもう1問、僕からもいいですか。図書館メインで聞くわけじゃないんですけど、今までの話だと割とそのソフトのインフラの話っていうか、アプローチの仕方みたいな話じゃないですか。
実際に場が整備されて、例えば公民館なり図書館なり文化複合施設なり、場があって、そういうところに行く人たちが、ここは自分の場所だと思えるみたいなことって、何によって起因すると思いますか。
その場の要素と、そこを運営する人の要素と、その街の中の役割とか色々あるじゃないですか。搾取されない形で自分が参画していると思えるって結構難しいバランスだなと思っていて。
僕も今やっているいろんな案件があるんですけど、そういうことができたらいいなと思いつつも、なんか全然設計できないなと思って、いつもどうすりゃいいんだろうなっていう、なんかいつもそこに迷ってるっていうか。
廣木:質問じゃなくて悩み相談。
染谷:悩み相談ですね。この場所は自分が使えるんだとか、この場所を自分が育てていけるんだと思える公共施設って、何がこうタグとしてあるんだろうみたいな。
石塚:でもなんかそこで自分がどういう関わり合いをしてきたかの積み重ねでしかないのかなっていう気もしていて、ちょっとうまく言葉がまとまらないんですけど。
染谷:ここは便利だからとか、ここは行くとすごく自分にとってメリットがあるからってい形で多用する施設ではなく、ここが自分にとって育てていきたい場所なんだみたいなのって全然別の話じゃないですか。
でも本当はそっちを狙いたいのに、タダで使えてめっちゃ便利だみたいなことで結局流されちゃうっていうか。
設備としてすごく揃えれば人はたくさん来てくれるみたいな方にしか流れないような気がしていて、そうじゃないように持ってくにはどうしたらいいんだろうって。
石塚:直接的な回答になるかは分からないんですけど、今思っているのは、結構役割を降りたりつけたりできるフレキシビリティみたいなものは、一つヒントになるかもと思っていて、もちろんその便利だからとか、時間を潰せるからみたいなところで集客できるというのも1つ関わる始めのきっかけになると思うんですけど、そうなった時に、こういうことができるんだったらやってみようみたいな形で、まずはプロジェクトに参加するみたいな。
参加者としてもうちょっと深く関わっていくとか。その関わった中で、実はその先生って同じようにここに来てた人が教えてるんだってなったら、じゃあ自分もこういうことを教えてみたいなとか、これだったら自分が得意だから何か一緒にできるかもしれないっていう形で、役割を変えて関わることができるみたいなものは、ある意味、使う側から作る側に行ったり来たりできるような制度設計みたいなものはもしかしたら面白いかもしれないですね。
実際に多分運用するのはとても大変なんですよ。これは理想の話ではあるんですけど、結構マンパワーかかりそうだなっていう感じはしてますね。
染谷:確かに役割を変えてとか、行ったり来たりできる感じはすごくいいですね。
廣木:僕も悩み相談してもいいですか。本当にこれ最後にします。
図書館で置き換えると、例えば今の染谷さんの話で関連すると、超研にある絵本って子どもたちが自分で作った絵本なんですよ。結構ちゃんと製本して印刷してあって。
自分たちでそのコンテンツである本も作って、それを図書館に収めます。書架と棚とか、椅子とかも全部自分たちで作るみたいな、それでどんどん成長させていくみたいな、文字通り「みんなでつくる図書館」みたいのを作りたいなと思っているんですけど、それもでもやっぱり、どうしても限定的な人しか関わってくれないっていうか。
本当は元々図書館って市民、地域の記録を収集してくべきなので、一部の人の関わりだけじゃないはずなんですけど、どうしてもそういう風になっちゃうと思うんですよね。それってそういうものでいいのか、別の何か方法があるのか。でもそれは周知の問題なのか。
石塚:全然あの明確な答えじゃないんですけど、ちょっと話がもしかしたらずれるかもなと思いつつ、こないだ全然同じような仕事をしてない友達と話していて、「なんか私が住んでいるところの図書館、全部コミュニティ施設みたいになっちゃって静かに本読めるとこ1個もないんだよね」って言われたんですよ。
「あれ流行ってるの?」のみたいな言われたんですけど、多分流行ってるよって言って話してて。
確かに区の中とか、特定地域の中でいろんな役割の図書館がポートフォリオ的にあるとか、選んでいけるとか、選んで使い方を変えられるとか、なんかそういうのは必要な気がしていて、さっきの集客の話に近いのかな。
生産したいから来るっていう人もしかしたらいるかもしれないし、本を読みたいから来るっていう人もいるかもしれないし、子どもをワークショップに参加させたいから来るっていう親もいるかもしれないし。
いろんな可能性を多層的に残しておけると、共存できるのかなと思ったりしました。でもやっぱり1つの場所で全部まかなうのは結構厳しいんじゃないかなと思いますね。
廣木:いいお話を聞きました。本当に今ワイワイガヤガヤする図書館が流行っているので。僕はこの業界に入ろうと思ったきっかけは、ザ・スミスのモリッシーの自伝なんですけど、彼が図書館員っていいなって言ってるんですよ。静かで、孤独で、じめじめしててっていう話があって。だけど最近のトレンドの図書館は面白くなくなったみたいな話をしてて、そこが多分僕としては原点で。
でもやっぱりそういう人っていると思うんですよ。今開かれた図書館っていうのがあるけど、そうじゃなくて、じめっとした今までのところに行きたい人っていうのもいるだろうから。
石塚:あと、実際私は行ったことないのでわかんないんですけど、すごくいいと言われている図書館ってあるじゃないですか。なんかそこの地域に自分が住んでいて、結構私は陰キャラなので、多分あんな楽しいところにはみんな行くから、なんか明るい人たちが集まってると行きにくいなとか、ちょっと思ったりのかもしれない。
廣木:一緒ですね。
石塚:そうすると、やっぱりあのじめっとした図書館に行きたいなとか思うじゃないですか。だからやっぱりいくつか役割が別の場所が色々あるんじゃないのかなとはちょっと感じてますね。
廣木:良かった。いい話が聞けました。
石塚:図書館にすべてを集積する必要もないことはないですしね。
染谷:なんか複合とはいえ、ミックスドじゃなくてセパレーテッドなんだけど、同じ器みたいな。
石塚:行き来できるし、なんか滲み合ったりすることもあり得るし、可能性は残せるとすごくいろんな組み合わせ方ができたりとかするんじゃないかなと思いますね。完全に分断してしまうともったいない気はしますが。
染谷:すごく良いお話が聞けました。
廣木:ちゃんと図書館の話もしちゃったし。
染谷:はい、ということで、今日のゲストは石塚さんでした。ありがとうございました。
2024年4月12日(金)収録