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短編1. 『くらやみの蓮』

初旬


 暗い。陽が差すときもあるので完全な真っ暗ではない。だがどれだけ見渡しても遠くの景色はよくわからない。というか変わり映えしない。ここにあるのは生ぬるい水と、泥にまみれた大地だけだ。
 一度でいいから陽の光を全身に浴びたい。
 そう思って上を見上げるがその先は緑色の藻が覆っており、叶わない夢なんだと早々にあきらめる。それでも腹は減るので、食べられそうなものは目につく限りなんでも食べた。きょうだいや仲間がたくさんいたから食べ物はいつも争奪戦。これが日常だから食べても食べても腹ペコなのがつらい。
 もう一つのつらさは、時折降ってくる巨大な2本の柱。これはただの恐怖でしかなく、何度も何度も同じものが降ってくる。降ってきたかと思えばすぐに上昇していき、また2本同じように降ってくる。いつも2本セットなのだが、それがひとつではなく、そこかしこで起こる災害。その2本柱の隙間に挟まってしまった仲間は高く舞い上がり、戻ってこないもののほうが格段に多かった。

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