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小説 【 あるハワイの芸術家 】 -5-
ジェシーは本当の父親を知らない。名前のレイモンドだけで顔は知らなかった。酔うと暴力を振るう男でケイトは詳しく話したがらず、家には写真もビデオもない。
離婚したのはジェシーが2歳の時。ケイトは常夏のハワイが子供の頃から憧れで、ツテはなかったがインターネットで住まいや働き口やジェシーの預け先の目星をつけるとオレゴン州からジェシーを連れてハワイに来た。
今もオレゴン州にいる両親には最初連絡をせず、トーマスと結婚する時にはじめて報告したがその後も行き来はない。両親とは喧嘩ばかりでいい思い出が1つもないと言った。だからジェシーは祖父母の記憶もない。
トーマスは消防士で数日おきに24時間勤務を繰り返したがジェシーとはよく遊んだ。休みには3人でよく海に行った。ケイトは結婚を機にウェイトレスを辞め、ジェシーは長く一緒にいられるようになって嬉しかった。
クリスとトーマスは顔立ちや背格好が瓜二つだったが二卵性双生児。トーマスの結婚まではずっと一緒に暮らしていたが結婚後は別々になり、クリスはひとり用のアパートに越した。そこはジェシーたちの新居の近くでジェシーはよく遊びに行った。子供のおもちゃがたくさんあってジェシーにとってはいい遊び場だった。おもちゃはクリスが自分用に買ったもので、しかしジェシーが気に入り「欲しい」とねだるとすぐくれた。そしてよく一緒に絵を描いた。
▼収録した短編集は6月20日に発売。ただいまHPで全文公開中です。ぜひ。