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ブラッディ・アロハ(2)

┃前回のお話┃

┃今回のお話┃

「なってねぇんだよォ!!」

「スミマセンッ!」

午前8時、4階。営業課の卑口課長補佐は部下の背中を蹴り飛ばした。理由は単純、営業成績が最低だからだ。

「俺ッがッ悪辣堂にッ入ったときゃッこんな低脳ッいなかったんだよォ!!」

「ズッミ”マゼッン」

卑口は倒れた部下を蹴り続ける。足は背を外れ後頭部に当たってごきり。と鳴ったが卑口は止めない。

悪辣堂において、成績最下位は死んで当たり前だ。そのため卑口の私刑はもはや日常の風景と化していた。

「ハァーッ!まだ千獄は来てねぇのかァ!!」

「千獄さんなら早退しましたよ。」

「早退ィ?この繁忙期に弛んでんだよ豚がァ!!」

振り返った先には千獄の顔。反省の色は無い。俺を苛つかせやがって、また腹を蹴り飛ばし…待て。

「早退したはず──!」

言い終える前に卑口の喉は裂かれていた。彼の喉は言葉を紡ぐ代わりにごぶごぶと血を噴き出すだけだった。

「ゼェ…グェ…」

彼の知る千獄は生首に成り果て、千獄を鷲掴みにしている男は……アロハだった。

男は卑口にアロアロを咥えさせる。

「A hui hou〈さようなら〉」

牛刀が卑口の眉間を貫く。

午前8時30分。営業課には何年振りかの静寂が訪れていた。アロアロが一面に咲き乱れ、早朝の穏やかな風が吹き込むオフィス。ただ一つ違うのは床、天井を染める血痕か。

男は振り返ることなくエレベーターに乗り込む。

「次は……技術開発課か。」

(続く)

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