絶対零度!ブリザード四姉妹!!
「ヘヘッ…ネエちゃんいい身体してんじゃねぇか…。」
迫るドレッド悪漢!
「やっやめて!誰か!だれかー!!」
悲鳴をあげる中年男性!
なんということか。魑魅魍魎の巣食う路地裏では性別など関係ない、誰しもが襲われる魔窟なのだ!その時!
「ゔぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
蛮行を許さぬ咆哮が降り注ぐ!
「なッ!?誰だ!どこにいる!!」
「ゔぅうううぅぅ」
息遣いと共に生暖かい空気が頭を撫でる。ドレッドは恐る恐る顔を上げた。
目に入ったのは白い毛並、毛むくじゃらの手脚、憤怒に燃える表情、ホッキョクグマ…?
否!!
雪男だ!雪男がSASUKEめいて路地裏の壁に張り付いている!!
〈三女、雪男コゴミ〉
「化け物ォッ!」
ドレッドは中年男性を突き飛ばし逃亡!大通りに出て助けを求めなければ!
ドンッ
「てェッ!どこ見てんだ!」
「あらあら…お急ぎのところごめんなさいね。」
「気をつけやがれッ!」
ドレッドはひとしきりFワードを吐くと、立ち上がろうとした……が、足が動かない!ハーフパンツの膝から下は放っておいたバナナを思わせる黒さに変色していた!
「ごめんなさい…凍ってしまったわね…。」
番傘の隙間から見えた女は白かった。肩口まで伸びる髪は新雪のゲレンデを思わせ、睫毛や眉毛まで雪が降り積もるようだった。
〈次女、雪女コゴネ〉
男の体はみるみるうちに変色していく。
「いやだッ!うわぁああぁがッ」
介錯するようにコゴミがドレッドの首を左フックで吹き飛ばす!
「ゔぉおおおおおお!!」
「ひぇえええ!勘弁してくださいぃぃ」
中年男性は土下座!命乞いのポーズだ。彼にとってこの状況は脅威が別の脅威にすり替わっただけだった。頼む、近づかないでくれ……。
しかし、コゴミは着物が汚れるのも構わず、彼の元に屈んだ。
「顔をお上げになって…。それより…蜘蛛の刺青の男をご存知ありません…?」
彼女の思いがけない問いかけに中年男性はあっけに取られた。
「いえ…私は一度も見たことが…。」
一陣の風が吹く。
あたりにはもう雪女も雪男も、あまつさえ死体すら消えていた。
(つづく)