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電楽サロン
2021年7月16日 08:19
フロントガラスは緑一色だった。コナラやヤシの林を、型落ちのフォードが走る。木漏れ日に目を焼かれないよう、ホセはサングラスをかけ直した。 車は西マドレ山脈中腹を過ぎていた。道と呼べるものはもう何キロも手前で途切れている。 ラジオは流行りのラテン・トラップを垂れ流していた。「やっぱり、あんな乳は見たことねぇよ」 助手席のフリホールが笑いまじりに言う。「その話はもういい」「いいや、あれは規