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鑑刀日々抄から見る「行光」の極めの差について

鑑刀日々抄(著:本間薫山)という本があります。
これは刀剣界の第一人者であった本間薫山氏が今まで見てきた鑑刀の記録です。見た刀の特徴や、無銘であればなぜその刀工に極めたか、と言う事が記されている本になります。

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この本を読んでいると、例えば行光と極めている刀であっても、「行光は首肯される」と強く言い切っているものと、「研究を要する」など鑑定を断定していないものが見られます。

特に相州行光は昔から作域が豊富とされ、相州伝の上工作と思われるもので他の相伝刀工とも言えない場合は、鑑定の避難港になっていたようです。
また、作風が似ているとして、大和伝の当麻が行光の裏鑑定とも言われています。
今回は鑑刀日々抄にて行光と言い切っているものと、要研究を要するとされる行光についての表現の違いを調べました。
(全部を抜粋しているわけではありません)

本当は実物を多く見て自分なりの解釈を追加出来れば良いのですが、なかなか拝見出来る機会がなく現状は難しい状況です。


①行光と言い切る鑑定刀

・無銘 行光

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・細身、内反り、三つ棟
・小板目つまり、地景細かに良くはいり地沸もよく付く
・浅いのたれと小互の目ごころの乱れ交じる
・小足入る、匂い深く小沸つく
・帽子表沸強く、くずれごころ
・表裏によい金筋かかる
・慶長14年の光徳の極めと思われ首肯される



・無銘 行光

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・板目に地景著しく入る
・地沸よくつき、湯走りある
・のたれ刃に沸つよく、沸足入り金筋よくかかる
・細川正宗と号して松平家に伝来したものだが、家康から秀吉に献上された時の極めは行光。
・刃文が穏やかであることから行光
・正宗であればいっそう覇気があるはず
・則重説もあるが、それであればフクラがいっそう枯れ、則重肌がほしい


・無銘 行光

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・流れ肌、流れ柾ごころ交じり地景著しい
・地沸よくつく
・小乱れ、ほつれ、食い違い刃
・よく沸づいて金筋かかる
・上記から正宗や行光に見られる
・豊前正宗と鞘書きがあるが、あえて行光説を強調する


・無銘 行光

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・やや細身、切っ先尋常、平肉つく
・板目に地景よくはいる
・表腰元に大肌と地景うずまくこころあり
・地沸厚くつき、かがやく粗めの沸を見る
・棟から鎬地の角にかけて湯走りあり
・浅いのたれ、匂を敷いてよく沸づき金筋かかる
・姿から大和物と思われるが、地刃の様子、砂流しが目立たない点から相州上工に見える
・細身であり、正宗と比べておとなしいことから行光に極めたい



②要研究対象の行光(鑑定の言葉尻が強く言い切られていない物)

因みに「伝行光」のように「伝」が付いていると鑑定として少し弱い意味になるそうです。

・無銘 伝行光

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・板目大肌交じり、流れ柾あり
・地景良く入り、地沸よくつく
・ほつれ、砂流し、二重刃、喰い違い刃がある
・行光の古伝に一理あるが、それよりも大和物の特色が強い
・理論的には大和志津


・無銘行光

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・長さの割に幅広、重ねがやや薄く、三つ棟、浅く反る
・板目良くつまり、地景入り、地沸厚く付く
・やや粗めに輝く沸散る
・金筋、砂流しはいる
・帽子は地蔵ごころで一段と沸が強く、先が火焔ごころ
・地刃の良さから廣光、秋広までは下らない相州上工の作と鑑せられる
・正宗よりは穏やかで貞宗にはこの手の細身は常にない
・一応首肯されるが、在銘の行光にはこの手の刃文はない


・無銘 伝行光

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・数の子沸が目障りにならずかえって力強さを感じる。相州上工の妙味
・金筋、稲妻しきりにかかる
・帽子は2重刃
・最初は貞宗と見たが、その後熟鑑するに小乱が古調で行光の方が妥当
・いずれにせよ相州上工作に間違いがない


・無銘 行光

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・細身、三つ棟、内反り
・板目に地景良くはいり、地沸つよく随所に輝く沸
・沸足よくはいり、葉も交じる
・刀身姿と地刃の出来から則重のよう
・帽子の形から大左のようにも見えるがこれほど沸が強いのはない
・茎の形から行光と鑑定したが、再見しても良い鑑定だと自負している


・無銘 伝行光

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・板目に流れ柾ごころ
・地沸よくつき地景良くはいる
・ほつれ、砂流し、沸足入り、金筋しきりにかかる
・上記から大和物にも紛れるが伝統的な極めの仕方からは一応行光
大切先、丸棟、先下り両チリの樋などは研究の余地あり


・無銘 伝行光

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・やや細身、切っ先尋常、元来腰反り高い太刀
・小板目、柾けまじり、大肌、流れ肌ある
・地景よくはいり、地沸つよく荒めの沸あり
・匂を敷いた沸出来の小乱に、足入り、砂流しかかり金筋交じる
・地刃並びに深い樋に大和伝があり、当麻か行光か迷わされる作



③終わりに

行光の極めの特徴となるものは以下が共通して挙げられます。
・小板目に流れ柾がかり、地景が良く入る
・地沸がよくつき、沸が強い、沸足が入る
・荒いかがやく沸が交じる
・刃文は浅いのたれで刃中には金筋や砂流し、喰い違い刃が見られる

研究対象になっている行光も上記に該当はしているものの、大切先や丸棟など姿が異風であったり、二重刃がかかるもの、樋が深いもの(後彫りもあるかもしれませんが)は熟考すべきなのかもしれません。

以下の記事は今回の内容を基に実際の刀を見てみるというものです。
ぜひ合わせてお読みください。

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