成木鐔⑧紛れる無銘の成木鐔
以下の話の続きでもあるのですが、恵那秋水会さんより信家写の成木鐔を譲って頂きました。
どうやら成木さんの作業場のあった中津川に在住の方が無銘で成木さんに依頼して制作頂き拵に付けていた物と聞きました。
尚、恵那秋水会さんも成木さんの作業場近くにお店を構える刀剣店で、成木さんの生前は親交が厚かった様子。
それがこちらの鐔です。
本歌は中村覚太夫の信家鐔集に掲載されており、その写しと思われます。
亀甲紋のサイズや外径などがきっちり合っているわけではないのですが、その辺り成木さんは独自のバランスなどを考えながら古作をそのままきっちり写すわけではなく、割と自由に作っている節が見られる気がします。
信家の斧透かし写も私の知る限り2枚程存在していますが、字の大きさバランスを変えた物、透かしのデザインを変えた物など、微妙にデザインが異なる事からも色々試されていた様子が伺えます。
尚、本歌に櫃孔が開いていても、開けずに本来の製作時の鐔の形を想像して作っていると思われます。
話を戻して、今回の鐔を見てみると少しカサつきつつもしっとりと青紫がかった黒錆の光沢が感じられ、実に古さを感じる良い色をしている気がします。
紋の朽ちた感じまで精巧に再現されており、時代感を看破出来る自信がありません。
この作が成木さんの作という事は、この鐔を扱われたお店の方と、この鐔の制作を依頼した地元の方、そして私のみだと聞きました。
販売元や話の流れからも成木さんの作である信憑性が高いのですが、今までの成木さんのトロっとした艶のある作と雰囲気が全く異なりカサついた中にしっとりした雰囲気があり本気で紛れる気が。
偽銘を打つ人の手に渡ってしまっていたらと思うと恐ろしさすら覚えます。
という事でブログに残しておくことにしました。
個人的には平成以降は左のような鉄味の物が多い気がして、昭和は右のような古作に紛れるような鉄味のものが多い気がします。
これは私の推測ですが、古作を色々研究される中で最初は模して作っていたものの、その経験を通して成木さん作風が確立したのが左の鉄味なのかもしれないと思ったりしています。
この作で成木さんの鐔は11枚目になりますが、研究用に手元に置いておこうと思います。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)